鷹鷲高校執事科

三石成

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一二月の章

聖夜の星 -1-

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 シャンデリア輝く大広間。中央はダンスができるように広く空間がとられているが、その周囲にいくつも出されたテーブルには、目にも鮮やかなご馳走の数々が並んでいる。

 天井や壁を彩るのはクリスマスらしい装飾。それらはすべてが金と白を基調に作られており、格調高い。高級感と華やかさのある、クリスマスらしい空間が演出されていた。

 大広間の壁面複数箇所には、その装飾に隠すようにカメラが設置されている。このクリスマスパーティーの様子は、学校外の者も視聴できるようにネットで配信されるのだ。

 配信は主に、クリスマスの子供の様子をみたい保護者のためのものである。それに加え、鷹鷲高校の華やかなパーティの様子は、平民にとっても関心が高く評判が良い。また、次期日本を背負って立つ若き貴族たちのお披露目の場、社交界デビューとしての役割もあった。

 集う生徒たちは皆楽しそうで、男子は燕尾服、女子はドレスで着飾っている。彼らの話し声が満ちる中、澄んだ鐘の音が鳴り響く。時刻が六時になったことと、パーティの開始を知らせる鐘だ。

 マスターの半数がそれぞれパートナーの手をとり、大広間の中央へと進み出る。

 鐘の音が静まると同時、大広間の隅に控えたプロの楽団が『My Favorite Things』を奏でた。曲に合わせ、中央へ出た生徒たちが優雅に踊り始める。

 東條は大広間の壁を背に立ちながら、彼らの様子を眺めていた。

 明彦にホールドされステップを踏む雅は、目の醒めるような深い青のドレスを着ていた。一際背が高い明彦と組むことになった雅もまた、女子部の中では一番背の高い女子生徒だ。彼女自身の身長は一七四センチある。

 しかしヒールを履いた彼女よりさらに高い上背の明彦が、見事なリードを披露する。パーティが始まる直前まで不安がっていたのが嘘だったのではないかと思う程の、堂々とした踊りようだ。手足の長い二人のダンスは、同じく輝きを放つ生徒たちの中でも一際目立っていた。

 そして、彼らの輝きに負けない存在感を放つ者が、また一人。

 長いブロンドの髪をゆるく首の辺りで結っているアルバートは、まるで絵本から抜け出してきた王子様だ。彼のパートナーである女子部の生徒は目をハートにしてリードされるまま踊りを続けている。

 東條の隣では、白石がそんな彼らを目を細めて見つめている。

 いっぽうで、ダンスがあまり上手くいっていない方向で目立っているのは、ケビンと茉莉花。淡いピンクのドレスを着た茉莉花が極力ケビンから体を離そうとするため、ホールドが乱れがちになっている。

 それでも茉莉花がケビンの手を振り払わずに済んでいるのは、ケビンが彼女を気遣い、曲に紛れながらも優しく宥める声かけをできているからだ。

 彼らを見守る鈴木は胸の前で祈るように手を組み、田中はいっさいの表情を変えていない。

 ケビンと茉莉花もなんとか最後まで踊り切り、曲が終わると、大広間に盛大な拍手が満ちた。中央で踊っていた生徒たちが周囲へとはけていく。

「お疲れ様でした。お二人ともこれ以上ない程に素晴らしかったです」

 そばへと戻ってきた明彦と雅に、東條は拍手を送りながら賛辞を述べた。

「ありがとう、本当にホッとした……」

 額に汗の粒を浮かせながら、明彦は眉を下げて笑う。

「ああ、よかったぞ。今度は俺らだな。ちゃんと見てろよ」

 東條と共に明彦を迎えた宗一郎は自信満々に言い置くと、パートナーである館本たてもとアルマの手を取り、大広間の中央へと進んだ。他の残り半数の生徒たちも宗一郎と同様、入れ替わりに中央へ。 

 次に演奏される曲は『The Christmas Waltz」だ。彼らは曲に合わせ一斉に踊り出す。

 この組で抜きん出て目立っているのは、当然のように宗一郎だった。

 アルマが纏うドレスの真紅によって宗一郎の燕尾服の黒が引き締まり、存在感が際立っている。

 幼いころから社交ダンスを嗜む宗一郎の踊りには溢れ出る余裕があり、それが振りの一つ一つに色香のようなものを醸していた。さらに館本家は常陸院家と親しく、アルマはもとより宗一郎の幼馴染である。彼らの信頼関係もまたダンスに良い影響を与えている。

 自然と他の生徒たちを従えているかの様な存在感は、宗一郎の、生まれながらのものであり、生まれ育った環境にも起因していた。そんな彼らに、水島をはじめ多くのバトラーが熱い眼差しを向けている。

 いっぽう、「その他大勢」になってしまっている生徒の中には、尚敬もいる。

 真面目な尚敬の踊りは、お手本通りで乱れたり崩されたりしているところがなく、パートナーの扱いも礼儀正しい。クリスマスパーティーに社交ダンスでワルツと、実に西洋的な行いであるにもかかわらず、なぜだか武士のような燻銀の気配を感じさせた。

 山下はそんな尚敬らしい尚敬の踊りを、心の底から楽しそうに見守る。彼の足先は、曲に合わせてワルツの拍子を刻み上下に小さく動いていた。
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