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6話
しおりを挟むジュリアーノの次はヘレナーの番。
陛下はヘレナーを断罪しようとしたのだけど・・・やはり真剣に愛していたからなのでしょうね。
涙を流しているヘレナーを前にした陛下には戸惑いと躊躇いがあったわ。
でもヘレナーは王妃でありながら不義密通を犯した女という事を思い出したのか、陛下はヘレナーにある刑罰を言い渡したの。
コンフィテュール王国の法律では伴侶以外と密通したら男は斬首、女は国外追放。
「な、何で?何で私が?えっ?国外追放って・・・何でよ!?あたしはコンフィテュール王国の王妃なのよ!?」
自分は何もしていない。
陛下を喜ばせる為に着飾っていた自分が国外追放だなんておかしい!
ヘレナーは陛下にそう主張していたけど、昔の自分が情を交わしていたヨハンとジュリアーノを取り上げた産婆と再会した事で全てを悟ったのかな?
ヘレナーは陛下が下した刑罰を受け入れて王宮を出て行ったわ。
恐らくヘレナーは自分の事を知らない国で生きて行くしかないでしょうね・・・。
ジュリアーノとヘレナーの断罪を終えた陛下は私にこう切り出したの。
「ベルフィーネよ。我が息子ユーリアの妃となり、共に国を支えて欲しい」
───と。
「えっ?嫌です」
「「・・・・・・・・・・・・」」
陛下の言葉に思わず即答しちゃったわよ!
だって・・・ユーリアって顔は絶世の美女な王子だけど、取り柄ってそれだけしかないのよ。
学問・言語・法律・兵法・剣術・弓術・馬術等───王子に必須な教養と武芸を何一つ身に付けていない男の嫁になんてなりたくないわ!!!
王妃として果たさなければならない義務から逃げていたヘレナーと、幼い頃からジュリアーノに甘やかされ、可愛がられて育ち、王子としての義務から逃げていたユーリア。
この二人は血が繋がっていないのに、己の義務から逃げているところだけはそっくりだわ。
あれ?
今気が付いたのだけど・・・ユーリアって王家にとって役立たずの足手纏い以外の何者でもなくね?
「恐れながら陛下、私の意見を述べさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
「よかろう・・・」
「王妃・・・いえ、罪人のヘレナーが不義密通を交わし畜生をこの世に産み出した遠因は陛下にあると私は愚考いたします」
二十年前に陛下が、先王が決めたビターレーズン将軍家のご息女であるヴィーノ姫を正妃として迎えていたらこんな事にならなかったし、ヴィーノ姫に話を通しさえすればヘレナーを愛妾として後宮に入れる事が出来たのよ。
えっ?
側室ではなく愛妾として後宮に入れるのはどういう事かって?
側室は陛下、ひいては国を支える為に働かないといけないけど、愛妾は何もしなくていいからね~。
それこそヘレナーが夢見ていた、自分は働かず、それこそ着飾っているだけでいい日々を送れていたのよ。
現代風に言えば、住んでいる家はタワマンで洗濯はクリーニング、掃除は家政婦さんがやってくれて、料理はウーバーイーツ。
年収数千万の男と結婚して玉の輿に乗った専業主婦って感じ?
まぁ、愛妾は容姿が衰えたら・・・それこそ陛下の気分次第で何時後宮から追い出されるか分からないから、ヘレナーが愛妾として後宮に入っていたら戦々恐々の日々を送る破目になっていたかも知れないけどね。
ヴィーノ姫だったら間違いなく手綱を上手く握って陛下を操っただろうし、後宮を纏める事も出来たはず。
それにヴィーノ姫であれば、陛下が酔った勢いで手を出した侍女との間に出来たユーリアを王子として育て上げたかも知れないわね。
要するに
『此度の出来事は陛下の昔の行動が原因』
という私の言葉にコンフィテュール王国の国王は怒り心頭だったけど、思い当たる節があるのか黙り込んでしまったわ・・・。
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