悪役令嬢は所詮悪役令嬢

白雪の雫

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③悪役令嬢の末路-1-

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 「あたしはただ、オデッセイアに金を貢がせて本命のサタナス様に恋人として大切にされながら、月に一度はメフィスト達とも楽しむつもりだった・・・」

 ヒロインの逆ハーレムルートではそれが出来たのよ?!

 それなのに、シュナイダー家がヴァンパイアハンターの一族って何なの!?

 ゲームでは、王家よりも財力が豊かな豪商という設定だったのよ!!

 悪役令嬢のあたしが逆ハーレムを作ってしまったから、ヒロイン補正やゲーム補正が働いてしまった訳!?

 「リリス様。いえ、私達のみならずベリアル達の元婚約者達に相場の倍以上の慰謝料を支払う為に娼婦になるのですからリリスと呼んだ方が正しいですね」

 「粗チン達の元婚約者への慰謝料!?何それ!えっ?娼婦?どこをどうすれば、未来の王太子妃であるあたしが娼婦になるという結論になるのよ!?」

 そんなリリスがいる地下牢にやって来たのは、アネットとオデッセイアだった。

 二人から今回の件で慰謝料を払う為に自分が娼婦に、メフィスト達は勘当した上で片腕と片足を切り落として国外追放された事を聞かされたリリスは掴みかかる勢いでアネットを問い詰める。

 「いいですか?リリス、貴女は元宰相子息であるバルバトス達を寝取っただけではなく婚約破棄へと至らせました。それだけでしたら当事者達を交えての謝罪と慰謝料を払えば済む問題でした」

 「だが、露出狂の痴女・・・貴様はやり過ぎた」

 アネットの台詞をオデッセイアが補足する。

 ヴァンパイアハンターのシュナイダー家と、戦える聖魔法の使い手であるアンダーソン家が国から出て行くのは、王国にとって大きな損失である。

 ましてや、アネットは世界を救った英雄の一人となった女だ。

 そんな彼女を冤罪で追放したとなれば王家は恩知らずとして民にそっぽを向かれるだけではなく、近隣諸国からもその点を責められるだろう。

 リリスの自白(?)によりアネットに罪を被せようとしただけではなく、何の非もない元婚約者達にベリアル達は婚約破棄を言い渡して一方的に傷物令嬢にしたのだ。

 どのような理由であれ、婚約破棄を言い渡された令嬢は【傷物令嬢】と見られてしまう。

 そんな彼女達の行く末はというと、死ぬまで独身を貫く事を強要される。

 傷物令嬢を妻に迎えたという話がない訳でもないが、縁談の相手は貴族という肩書が欲しい成り上がりか、とんでもない性癖を持つ男か、祖父と呼んでも差し支えがない老人というのが殆どだ。

 元婚約者達の家は婚約者を寝取った令嬢が王国でも有力な公爵家という事で、慰謝料はおろか謝罪の一つも要求出来ず、本来であれば泣き寝入りするしかなかった。

 しかし、今回は話が別である。

 王家と教会という後ろ盾を得た彼等は娘が傷物令嬢の原因となったリリスに謝罪と相場の倍以上の慰謝料を要求し、王家と教会はそれを認めたのだ。





 メフィストの婚約者でありながら婚約者が居る男を寝取った事

 世界を救ったアネットを冤罪で国外追放しようとした事





 娘の所業を初めて耳にした公爵は王家と教会に逆らえないのか、後からリリスに請求するという形で慰謝料を公爵家が立て替えた。

 つまり、莫大な借金を背負ってしまったリリスは、親に娼婦として売られたという訳だ。

 「アネット!オデッセイア!あんた等がサタナス様を倒したせいで、あたしの人生が狂ってしまったじゃないの!!」

 国王直々の尋問を受けた後、地下牢に閉じ込められオデッセイアの話を聞いたリリスは、これも全部アネットが悪いのだと、自分が取った行動を後悔するのではなくヒロインに恨みをぶつける。

 「リリス。貴女は自分の人生が狂ってしまったのは私達のせいだと責めていますが、それは違います」

 貴女はこの世界を、ご自分にとって都合の良い物語か遊戯の世界だと捉えているからです

 「どういう意味よ?!」

 アネットの言っている事が理解出来ないリリスは、憤怒の形相で彼女とオデッセイアに問い詰める。

 「いいか?貴様のお花畑な頭でも分かるように言ってやる。貴様は自分を駒を動かす神、この世界をチェスの盤上、我等をチェスの駒としか思っていないという事だ」

 「オデッセイア。そのような言い方では、頭がお花畑のリリスには理解出来ないのではないかしら?」

 「そうか?俺にしてみれば分かりやすい表現を選んだつもりなのだが。要するに俺が言いたいのは、俺も、アネットも、露出狂の痴女である貴様も、貴様の両親である公爵夫妻も、貴様が寝取った男達の婚約者だった令嬢達も・・・チェスの駒ではなく、この世界で生きている一人の人間という事だ!!」

 自分達が生きている人間である事を示す為、オデッセイアは自分の手刀で手首を切る。

 「俺達が貴様の思い通りに動く駒であれば、このように傷ついたり、血が出ると思うか?」

 「!!」

 オデッセイアの手首から滴り落ちていく鮮血を目の当たりにした事で、ようやくリリスは今の自分が生きている世界は現実で、モブと見下していた両親や侍女達、攻略対象者達、そしてヒロインが自分の考えを持つ生きた人間なのだと思い知った。

 「あたし・・・もしかして、とんでもない事を、しちゃった?」

 「そうですね。貴女が寝取った男の婚約者の人生を潰してしまいましたし、私を追放する事で王国に大きな損害を与えようとしていましたもの」

 あれだけの大事を起こしておきながら娼婦で済むなんて、ゲームと違ったエンディングで良かったではありませんか

 元ソープ嬢であったのなら、一日も休まずに働けば日本円にして何百億もの借金を十年で返済出来るかも知れませんよ

 「リリス。貴女とは二度と会う事はないでしょうが、お元気で」

 リリスに顔を近づけたアネットが彼女にだけ聞こえるように耳打ちする。

 「アネット!あんた、もしかして・・・」

 あたしと同じ転生者なの?!

 オデッセイアと共に地下牢を出て行こうとするアネットに尋ねようとしたのだが、リリスのその言葉は発せられる事はなかった。





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