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「こりゃあきまへんわ。現実みよ」
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しおりを挟むさて。
跡取りがあのような問題をおこしてしまい。
スピカが王太子の友人だとしても、マーロウ家にお咎めが無い――というわけにはいかない。
例え盗んだのは妹から……家族からだとしても、そこには王太子殿下も関わっていれば――そのデザインの「A」以外も、今や国のものにもなりつつある。
そして舞踏会での不敬の数々。
兄があのように捻くれたのは、やはり家庭環境のせいだろう。
けれども、兄は貴族として――人間として駄目だったと、スピカは知った。
家を維持する。血を繋ぐ。そして領地を、民を守る。
それが貴族の一番の役目なところとてあるのだから。
母は後妻としてマーロウ家に入ったこともあり。その役目をきちんと果たした。
すぐに身籠ったらしい。
スピカの弟か妹を。
それが確かになり、父母がふくふくと幸せいっぱいな、時に。
母は誰かに突き飛ばされて転び――流れた。
誰か。
ファビアンだ。
それが兄であったことを今回のことがあって、スピカはようやく教えられた。スピカは幼かったこともあり、母が身籠ったことすらまだ伝えられる前で。妊娠が安定期に入ったら教えてもらえることになっていたらしいが……。
庭園会の日。
父親だけがスピカと兄の手を引いて登城していたのはそうした理由だ。母も貴族に戻っていたから、登城できたはずなのに。
母は、その頃体調を崩していた。
体調を崩していたのは、そんな酷く、哀しい理由だった。
ファビアンは母が家を出ていく原因であった継母が気に入らなくて、むしゃくしゃして突き飛ばしただけであったらしいが――彼も継母が身籠っているとは思って……いや、もしかしたら。
さすがな事に、スピカはぞっとした。
階段や段差などの命に関わるところでなく、むしゃくしゃして彼の通り道の先に母がいたから、押し退けるようで衝動的であったというが、それはそれでも、だ。もしも母の命に危険もあればさすがに祖父母も考えたろう。
本音ではその時に教えておいて欲しいと思った。大人びてはいるが子供であると、思いやってくれたのは気持ちはわかるしありがたいが、知っていたらスピカとて、もう少し兄に対して……いや、それは今更言ってもどうにもならない。思いやってくれた親の気持ちだけは、しっかり受け止めることにした。
どうりで、兄の婚約者がなかなか決まらなかったわけだと、改めて納得も。そうしたことは、やはりどこからから漏れるもの。隠せないことだ。
どうりで、同じような問題児――跡取りであるのに家から出されるようなレティシアしか娶れなかったはずだ。それは薄っすらと、世間から兄への罰のようなものだったのだ。
顔も良いし成績も中の上程度はある。
悪いのは――性格。
それはとても致命的。
貴族としても、人間としても。
父母は兄を、かばう祖父母のこともあり許した。そのことがあって精神的にまいってしまい子が成せなくなった母は――それでも兄が跡取りである以上、兄を許すしかなく。家のために。
それが母も、貴族として生まれたからだ。跡取りの大切さを理解していたからだ。
兄に対しては申し訳ない気持ちもあったのだろう。そして、子供のしたことだから、と……悩んだ末、許した。自分たちが彼をそうさせた理由でもあったから。
だから今回のことで、父母は、祖父母は――兄を手放した。
子供だからと許したことも後悔し、兄を教育し直せなかった己たちの罰も受けて。
――マーロウ家は取り潰しになった。
「主人公のお家が無くなるて、あるんやな……」
これはやはり、とっくにゲームではないと、スピカは受け入れて。もしや自分がシナリオ通りに動かない――主人公らしくないせいではと、ちょっとだけゾワッっとしつつ。
けれども。
新たに興る家があった――いや、復活というべきか。
レトラン家。
それは、スピカの母の、元の家名。
マーロウ家は取り潰しになり、かつて隣接していて今は王家預かりとなっていたレトラン家がかわりに興ることとなった。
まぁ、管理する人間がいなければ住んでいる領民たちが迷惑するわけで。
そしてバーディ家もお取り潰しになった。
レティシアもまだバーディ家の家の者だったからだ。
同じくレティシアをあのように育てた父と祖父母は、責任を取らねばならない。
そうしてバーディ家の領地は――なんとレトラン家にまとめられた。
マーロウ家とバーディ家の領地をも合わせたことで、レトラン家は男爵家ではなく、伯爵家として興ることとなった。
そしてその領主は。
「僕、巻き込まれてないですか?」
「バーディ家に縁あった時点で既に巻き込まれ済だったじゃない?」
「棚ぼたとも思えないんですが……」
「あはは、逃がすもんかい」
セオドアだ。
バーディ家の本家の侯爵家。そしてフランター伯爵家がレトラン家の後見人となった。
王太子殿下に肩を叩かれるセオドアは、実は以前から側近としてスカウトされていた。学年首席は伊達ではなく。
だからこそ、子爵家当主という肩書きをセオドアにと――裏で王家と侯爵家、まぁアルフレッドが動いていたのだが。次期当主候補に問題があって、一石二鳥。
無事に事がなったならば、バーディ家のレティシアや父たちにも何らかの便宜を図るはずが……。
「僕、何もしてないのに勝手にバーディ家が終わった……」
さすがのアルフレッド王太子も、レティシアがバーディ家の令嬢だと聞いて、あの後数秒間思考停止したという。「は? マジで? 彼女がバーディ家の令嬢だったの?」と。
本当にレティシアとは言葉も交わしたことがなかったから。存じ上げなく。
ただ、それから「ついでに子爵から伯爵にあげちゃえ。ちょうどマーロウ家のも空いたし。隣接の元レトラン家と合わせたら、ちょうど良くない? あ、レトラン家で名前もいいよね? 規模的に落ち着いたころに、うん、数年後にはセオドアを侯爵にする予定ですし。今のうちに上げといた方がほどよい規模、うん」、としたのは「何してますのん!?」とセオドアと、そしてスピカが突っ込むことになるのだが。
王太子殿下は、権力の使い方をよくご存知だ。
セオドアはなんとも言えない顔で、スピカに握手を。
「スピカ嬢、そういうことだから……今後ともよろしく」
「……是非もなく」
スピカも、同じ顔で。
レトラン家を、バーディ家に縁があるとはいえセオドアが何故継げるかというと。
スピカだ。
スピカは母方により、レトラン家が続いていたら、正統な跡取りであった。
そしてマーロウ家の血も引き。
――スピカは、セオドアの婚約者となった。
王太子殿下から――いや、王命で。
「いや、本当に、何でですのん!?」
罰回でした。
お兄さんは過去にもとんでもないことをやらかしていました。親御さんたちも悪いとは、思いますけれども。でも跡取りいないとお家お取り潰しな世界。いろんなツケが回って、けっきょく…そこまでして残したかったお家は、けっきょくお兄さんのせいで無くなりました。因果応報。
読み進めてくださりありがとうございました。
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