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31話
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降りるときは降りる少し前で椅子に付いたベルを鳴らせばいい。
ガランガランと大きな音をたてて御者に知らせるのだ。
そうすると、御者は馬を停めてくれる。
バス停みたいなものがある訳では無いようで、それも凄く便利だし通り過ぎてしまっても乗り続けるよりは止めてもらって歩いて戻ればいい。
「ミナミは中央の広場でいいのか?」
「うん、欲しい物はあるけど、ぶらぶら歩いてお店を見て回るのも良いかなって」
「脇道にはあまり入るなよ?誰か非番の奴がいればいいか、アタシが交換できれば一緒に見て回っても良いんだ……あっ、シオン!」
フレイアが馬車の上から叫び、ガランガランとベルを鳴らした。
馬車はゆっくり動きを止める。
「シオン、これから市街地か?」
馬車に乗り込んで来たのは、明るい菫色のストレートヘアを前下りにカットした美人。
「えぇ、特に用は無いですが」
心地好いアルトの声。
「悪い、巡回を変わってくれよ、ミナミが一人で買い物に行くんだと」
「構いませんが、それなら着替えてきますから、集合場所で」
シオンと呼ばれた女性は、馬車には乗らず御者にコインを渡すと騎士団の方に踵を返した。
「んじゃ、ミナミ。今日はアタシとデートだよ」
パチンとウィンクをして見せたフレイアは、御者にコインを追加で支払うと、ガタンと再び馬車は動き出すのだった。
そして、到着したのは騎士団が詰所として使っている建物だった。
噴水の近くで馬車を止めると、フレイアに連れてこられたのは、商業施設の端の方にある三階建ての建物で、建物自体が騎士団の持ち物らしい。
「悪いな、シオンが来るまでちょっと待ってくれ。っと、今日の巡回はシオンに頼んだからさよろしくな」
フレイアが扉を開くと、そこには何人もの騎士がいる。
本を読んだり、お茶をしたりしていて、まちまちに時間を過ごしている。
「何があった?」
「アタシがミナミとデートなんだ」
声を掛けてきたのは波打つモスグリーンの髪をひとつに纏めた美丈夫。
「へぇ、貴方がミナミ?初めまして俺はフォリア」
「ミナミです。よろしくお願いします」
フォリアが差し出してきた手に手を重ねると、そのまま引かれチュッと手の甲にキスをされた。
忘れていた、これ挨拶だ!
ひゃっと声を上げそうになるのを何とか堪えて何とか引き攣った笑みを浮かべる。
喪女にはこんな挨拶が慣れるわけない。
「ひとりで買い物だって言うから、アタシがデートに誘ったんだよ」
「団長良く許したな」
「え、あの……ベルゴッド団長の許可が必要なんですか?」
「え。団長に言ってないのか?」
「はい」
言うも何も、休みを揃えたのだから知らない訳はない。外出するまでは言わなかったが夜に帰ってこなかったのはベルゴッドなのだ。
「誰か、騎士団長に早馬!」
「団長も本日お休みなので……昨夜は帰って来なかっ……」
「アンの馬鹿ッ!!シルヴィア様でいいから伝令頼む!」
焦って叫ぶフレイアに、ガタガタと休憩中だった騎士の一人が部屋を飛び出していくと、直ぐに馬の嘶きが聞こえた。
「……ミナミは気にしなくていいからな?シオンが来たらデートに行くが、アタシも着替えたいな……少しだけ待っててくれ、流石に隊服じゃ目立つからな。ミナミにお茶を頼む」
フレイアはそう言うとひらひらと手を振り奥の階段から二階に上がっていくと、違う騎士が椅子をすすめてくれ、紅茶とお菓子を用意してくれたのだった。
ガランガランと大きな音をたてて御者に知らせるのだ。
そうすると、御者は馬を停めてくれる。
バス停みたいなものがある訳では無いようで、それも凄く便利だし通り過ぎてしまっても乗り続けるよりは止めてもらって歩いて戻ればいい。
「ミナミは中央の広場でいいのか?」
「うん、欲しい物はあるけど、ぶらぶら歩いてお店を見て回るのも良いかなって」
「脇道にはあまり入るなよ?誰か非番の奴がいればいいか、アタシが交換できれば一緒に見て回っても良いんだ……あっ、シオン!」
フレイアが馬車の上から叫び、ガランガランとベルを鳴らした。
馬車はゆっくり動きを止める。
「シオン、これから市街地か?」
馬車に乗り込んで来たのは、明るい菫色のストレートヘアを前下りにカットした美人。
「えぇ、特に用は無いですが」
心地好いアルトの声。
「悪い、巡回を変わってくれよ、ミナミが一人で買い物に行くんだと」
「構いませんが、それなら着替えてきますから、集合場所で」
シオンと呼ばれた女性は、馬車には乗らず御者にコインを渡すと騎士団の方に踵を返した。
「んじゃ、ミナミ。今日はアタシとデートだよ」
パチンとウィンクをして見せたフレイアは、御者にコインを追加で支払うと、ガタンと再び馬車は動き出すのだった。
そして、到着したのは騎士団が詰所として使っている建物だった。
噴水の近くで馬車を止めると、フレイアに連れてこられたのは、商業施設の端の方にある三階建ての建物で、建物自体が騎士団の持ち物らしい。
「悪いな、シオンが来るまでちょっと待ってくれ。っと、今日の巡回はシオンに頼んだからさよろしくな」
フレイアが扉を開くと、そこには何人もの騎士がいる。
本を読んだり、お茶をしたりしていて、まちまちに時間を過ごしている。
「何があった?」
「アタシがミナミとデートなんだ」
声を掛けてきたのは波打つモスグリーンの髪をひとつに纏めた美丈夫。
「へぇ、貴方がミナミ?初めまして俺はフォリア」
「ミナミです。よろしくお願いします」
フォリアが差し出してきた手に手を重ねると、そのまま引かれチュッと手の甲にキスをされた。
忘れていた、これ挨拶だ!
ひゃっと声を上げそうになるのを何とか堪えて何とか引き攣った笑みを浮かべる。
喪女にはこんな挨拶が慣れるわけない。
「ひとりで買い物だって言うから、アタシがデートに誘ったんだよ」
「団長良く許したな」
「え、あの……ベルゴッド団長の許可が必要なんですか?」
「え。団長に言ってないのか?」
「はい」
言うも何も、休みを揃えたのだから知らない訳はない。外出するまでは言わなかったが夜に帰ってこなかったのはベルゴッドなのだ。
「誰か、騎士団長に早馬!」
「団長も本日お休みなので……昨夜は帰って来なかっ……」
「アンの馬鹿ッ!!シルヴィア様でいいから伝令頼む!」
焦って叫ぶフレイアに、ガタガタと休憩中だった騎士の一人が部屋を飛び出していくと、直ぐに馬の嘶きが聞こえた。
「……ミナミは気にしなくていいからな?シオンが来たらデートに行くが、アタシも着替えたいな……少しだけ待っててくれ、流石に隊服じゃ目立つからな。ミナミにお茶を頼む」
フレイアはそう言うとひらひらと手を振り奥の階段から二階に上がっていくと、違う騎士が椅子をすすめてくれ、紅茶とお菓子を用意してくれたのだった。
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