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七本槍
山崎城普請
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「甚内、これから忙しくなるぞ。覚悟しておけ。手始めに湯浅甚介ともに長浜に向かい、城の引継ぎをしてまいれ。」
清州での会談を終えた筑前守が安治を呼び、下知した。安治は、直ちに湯浅とともに長浜城に向かった。
長浜城の受け渡しは、滞りなく進んだ。もっとも、柴田側は、伊賀守の代官が応対し、伊賀守自身は、未だ居城の丸岡にいるという。代官によると、伊賀守にとって長浜への転封は、晴天の霹靂だったようだ。丸岡城は、伊賀守自身が普請した城だ。伊賀守も骨を埋める覚悟であったから、転封の準備などしていようはずもない。とはいえ、修理亮の命には逆らえない。取り急ぎ、代官を派遣して長浜城の接収を済ませ、妻子はさておき、自身と近習の準備が整い次第、長浜城に向かうことになったようだ。
安治は一人長浜城を後にして、筑前守に受け渡しの顛末を報告した。
「伊賀守は、未だ丸岡から離れられぬとな、さもありなん。」
筑前守は、このことを予見していたかのように頷いた。
「畏れながら、長浜城の受け渡しについて、敢えて伊賀守様をご指名遊ばしたのには、深いわけがおありで…。」
事態があまりにも目まぐるしく変わるため、正直なところ、安治も筑前守の下知に右往左往する始末であった。もちろん、筑前守とて、さすがにこのような展開になるとは、予想していなかったはずだ。にもかかわらず、筑前守は、あたかもこれまでの事態が定まっているかのように振舞ってきた。安治としては、何とかして筑前守の狙いを聞いておきたかった。
「先の会談で、若君の名代はおかず、我ら重臣の合議による諸事捌いていくこととなったのは知っておるな。修理の専横を止めるにはこれしかない。じゃが、何かしら見返りが無ければ修理も納得するまいて。言うなれば、その代償じゃな。もっとも、わしとてただで渡すほどお人好しでもない。甚内、じきに分かるであろう。それより、甚内、お主に頼みたいことがある。」
筑前守に上手くはぐらかされてしまった。もはや、この話題を続けることはできない。今の安治にとって、筑前守の期待に応え続けるしか道はない。一旦、筑前守の狙いを探ることは諦めた。
「は、何なりと。」
「うむ。長浜を渡した代わりに、河内と山城を得たが、生憎、この両国には長浜ほどの城がない。そこでじゃ、山崎の地に城を築こうと思う。ついては、普請奉行として山崎の築城にあたってくれ。」
「かしこまりました。」
神妙に平伏した安治であったが、謎は深まるばかりであった。
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