あなたのおかげで吹っ切れました〜私のお金目当てならお望み通りに。ただし利子付きです

プロローグ

「あんな女、金だけのために結婚するようなもんだ。じゃなきゃ、なんで成金貴族の赤毛娘となんか暮らせる？」
「おまえ、ひどいな！赤毛ちゃんはお前にゾッゴンみたいじゃないか」
「だからいいんだ。欲しいといえばなんでも用立ててくれるし、結婚が決まれば莫大な金も入ってくる」
「お前、知られたら刺されるんじゃないか」

アリアナが婚約者を呼びに、扉をノックしようとした、まさにその瞬間、その会話はされていた。声をかけるタイミングを失ったアリアナはその場に立ち尽くす。

「はっ。知られたところでかまうもんか」
「自信満々だな、俺が赤毛ちゃんに言っちゃおうかなー、君の婚約者のクレメント＝ハンゼ公爵はこんな酷い男だよーって。」
「はは、ふざけんなよ」

アリアナの容姿を揶揄しながら、下品な会話で盛り上がる男二人の声を聞いて、それまで婚約者に抱いていた盲目的とも言える恋心が木っ端微塵に砕け散るのを、アリアナは自覚した。
そして、アリアナは一つの決断をした。クレメントへは、恋心を踏み躙った対価をしっかり払ってもらう、と。
なぜなら、アリアナはクレメントが成金貴族と馬鹿にした通り、商人から貴族に取り立てられた家の娘だから。

商人はただ働きはしない。