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「クレメント様、アリアナでございます。」
二人の笑いがおさまったタイミングを見計らい、声をかける。
「ああ、アリアナ嬢。どうぞ入って。」
「失礼いたします、クレメント様。まぁ、先客がいらっしゃったのですね。それでしたら私の訪問はお断り頂いてもよろしかったですのに。」
「いや、全てにおいて君が優先さ。大体こいつは、今日も急に押しかけてきたんだ。」
「初めまして、アリアナ嬢。ユーズル侯爵家の第一子ジッドです。クレメントとは腐れ縁の悪友なんだ。」
女性の容姿を馬鹿にして盛り上がれるくらいだ、本当に馬鹿な悪友としか言いようがないな、とアリアナは思いつつも、にこりと微笑んで答えた。
「まぁ、ジッド様。お会いできて光栄ですわ。」
「こちらこそ。クレメントはこれでなかなか、女性からの人気が高くてね。どんな女性が彼の心を射止めるか、と友人達と話していたんだ。まさか、これほどの美人だとは思いもしなかったけれど」
「いえ、私などとても。赤毛を厭われる方が多い中で、結婚にご承諾くださったクレメント様には感謝しかございません」
値踏みするようなジッドの視線を受け流しながら、さらりとアリアナは答えた。
実際、赤毛という点を除けばアリアナの容姿は群を抜いて美しかった。青い瞳は明るい日の海を思わせ、薔薇色の頬に赤い唇。これでブロンドであれば、引くて数多だっただろう。
しおらしいアリアナの様子を満足気に見ながらクレメントはわざとらしく言った。
「アリアナ嬢は、従順で優しい女性なんだ。ジッドもあまりからかうなよ」
喉の奥でクッと笑いそうになるのを堪えてアリアナは頭を下げてクレメントに訪問の用件を伝えた。
「クレメント様、本日お伺いした理由でございますが」
「ああ、持参金の額の確認だったかな。おい、ジッド、いつまでいるんだ。そろそろ帰れよ」
「へいへい。クレメント嬢、ではまた。」
「はい、失礼いたします」
アリアナの用事が持参金の件だったのを思い出したクレメントは躊躇なくジッドを追い出した。しかし、すれ違いざま、ジッドとクレメントがアリアナを馬鹿にする視線を交わしたことを、アリアナは見逃さなかった。
きっと今までも、こんな瞬間は何度もあったのだろう。しかし、クレメントへの恋心で全てが見えていなかったのだ。
—さあ、対価を払ってもらいますか—
二人の笑いがおさまったタイミングを見計らい、声をかける。
「ああ、アリアナ嬢。どうぞ入って。」
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「いや、全てにおいて君が優先さ。大体こいつは、今日も急に押しかけてきたんだ。」
「初めまして、アリアナ嬢。ユーズル侯爵家の第一子ジッドです。クレメントとは腐れ縁の悪友なんだ。」
女性の容姿を馬鹿にして盛り上がれるくらいだ、本当に馬鹿な悪友としか言いようがないな、とアリアナは思いつつも、にこりと微笑んで答えた。
「まぁ、ジッド様。お会いできて光栄ですわ。」
「こちらこそ。クレメントはこれでなかなか、女性からの人気が高くてね。どんな女性が彼の心を射止めるか、と友人達と話していたんだ。まさか、これほどの美人だとは思いもしなかったけれど」
「いえ、私などとても。赤毛を厭われる方が多い中で、結婚にご承諾くださったクレメント様には感謝しかございません」
値踏みするようなジッドの視線を受け流しながら、さらりとアリアナは答えた。
実際、赤毛という点を除けばアリアナの容姿は群を抜いて美しかった。青い瞳は明るい日の海を思わせ、薔薇色の頬に赤い唇。これでブロンドであれば、引くて数多だっただろう。
しおらしいアリアナの様子を満足気に見ながらクレメントはわざとらしく言った。
「アリアナ嬢は、従順で優しい女性なんだ。ジッドもあまりからかうなよ」
喉の奥でクッと笑いそうになるのを堪えてアリアナは頭を下げてクレメントに訪問の用件を伝えた。
「クレメント様、本日お伺いした理由でございますが」
「ああ、持参金の額の確認だったかな。おい、ジッド、いつまでいるんだ。そろそろ帰れよ」
「へいへい。クレメント嬢、ではまた。」
「はい、失礼いたします」
アリアナの用事が持参金の件だったのを思い出したクレメントは躊躇なくジッドを追い出した。しかし、すれ違いざま、ジッドとクレメントがアリアナを馬鹿にする視線を交わしたことを、アリアナは見逃さなかった。
きっと今までも、こんな瞬間は何度もあったのだろう。しかし、クレメントへの恋心で全てが見えていなかったのだ。
—さあ、対価を払ってもらいますか—
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