あなたのおかげで吹っ切れました〜私のお金目当てならお望み通りに。ただし利子付きです

じじ

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「私の友人がすまなかったね。あなたに嫌な思いをさせていないと良いのだけれど」
「素敵なご友人でいらっしゃいますね。私にも、クレメント様とジッド様の間柄のような友人がいるといいのですけれど」

悲しげな顔をしたアリアナに対してクレメントは、労るように声をかけた。

「生涯の友に出会えるかどうかはタイミングの問題だからね。気に病むことはない。」

本人は隠し通せていると思っているのだろうが、その声の響きには微かにアリアナを侮辱する色が含まれるいる。赤毛に心を許すものがいるはずない、と。

そもそも、このフォレスティア王国で赤毛が忌避されるのは、王国の成り立ちに関係がある。
初代フォレスティア王は、その叡智と勇猛さでもって、周辺諸国を破竹の勢いで呑み込み、わずか10年余りで北大陸を統一した。
その際、最後まで抵抗しフォレスティア軍に甚大な被害を与えたのが、クルーゼ王国だった。クルーゼ人は燃えるような赤毛が特徴的で、その中でもクルーゼの女王は一際目立つ目の覚めるような真紅の髪をしていた。
その姿に心を奪われたフォレスティア王はクルーゼ城陥落の折に、女王に対して剣を突きつけながら自身の妻となるように求めた。
しかし女王は不敵な笑みを浮かべたまま自らその剣先に胸を突き刺した。
かくして、フォレスティアに従わない異端とクルーゼ人はみなされた。
しかし王国統一から300年。当初は差別されていたクルーゼ人だが、時代とともに血は混じり、フォレスティア人やクルーゼ人と言った区別はなくなった。
だが、一つだけ残り続けたものがあった。それは赤毛に対する差別だ。赤毛の子どもが生まれると、出自に関わらずその子は「信用の置けないクルーゼ人」と忌避される風習が貴族から平民に至るまで残ってしまったのだ。

つまるところクレメントのアリアナへの評価はごく一般的なフォレスティア人のものだった。
しかし、アリアナを前にして赤毛を差別する様子を見せたことがなかったクレメントに、不覚にもアリアナは恋してしまったのだ。
しかし、それももう終わり、そう思いながらアリアナはさらっとクレメントに礼を述べた。

「お気遣い感謝いたします。そろそろ本題に入ってよろしいでしょうか」
「もちろんだよ。お父上はなんと」
「持参金は2000エランでどうか、と」
「すごいな。君を妻に迎えられるだけで充分幸せなのに。」
「まあ、嬉しいお言葉でございます」

1エランで平民の家族5人が1月は楽に暮らせる。贅沢三昧で家計が火の車という噂の公爵家にとっては、喉から手が出るほど欲しい金額に違いない。
それを知りつつ、アリアナはいよいよ反撃を開始した。







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