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「クレメント様、実は父から一つ提案がございまして」
「なんだい?」
「持参金なら、2000エラン。ですが、私名義の支度金ということであれば、5000エランとする、ということだったのですが、どちらがよろしいでしょうか」
持参金は婚家のものであり、支度金は嫁ぐ本人のもの、というのが、この国の常識だ。
アリアナを溺愛している父親は、持参金2000エランと支度金5000エランの両方をアリアナに用意していた。だが、アリアナはクレメントがどちらを選ぶかを試してみたのだ。
少し考えてから、困ったように笑いながらクレメントは答えた。
「支度金の方がいいんじゃないかな。君の自由にできるお金があった方が、君も何かと都合がいいだろうし」
アリアナのためを思って、と言わんばかりのクレメントの様子に、思わず冷笑を浮かべそうになったアリアナだが、意志の力で抑え込み、クレメントに問いかけた。
「ですが、支度金として用意してしまいますと、クレメント様が自由に使うことができなくなってしまいます。」
多くの国を併合してできたこの国では、無用な争いをさけるため、個人の財産という考え方が広く定着しており、夫婦間であってもそれは同様であった。そのため、個人名義の資産は、相手の了承を得ない限り、勝手に使用することはできない。
「もちろん承知しているよ。でもあなたとは、お金のために結婚するわけじゃない。」
「まあ。そのお言葉とても嬉しいですわ。正直私などお金がなければ、なんの価値もないと思っておりました。ですがクレメント様は私自身との結婚望んでくださった。本当に夢のようです。
それでは、支度金で用意するように父には話しておきますわね」
にこり、嬉しそうに微笑んだアリアナの様子を見て、クレメントも優しく微笑み返した。
それでは本日は失礼致します、という言葉と共にアリアナが去ったのを見届けて、クレメントは独りごちた。
「金以外でお前と結婚する奴なんかいるかよ、赤毛」
ガチャ、と扉が開く音がしてクレメントはギョッとした。
「なんだい?」
「持参金なら、2000エラン。ですが、私名義の支度金ということであれば、5000エランとする、ということだったのですが、どちらがよろしいでしょうか」
持参金は婚家のものであり、支度金は嫁ぐ本人のもの、というのが、この国の常識だ。
アリアナを溺愛している父親は、持参金2000エランと支度金5000エランの両方をアリアナに用意していた。だが、アリアナはクレメントがどちらを選ぶかを試してみたのだ。
少し考えてから、困ったように笑いながらクレメントは答えた。
「支度金の方がいいんじゃないかな。君の自由にできるお金があった方が、君も何かと都合がいいだろうし」
アリアナのためを思って、と言わんばかりのクレメントの様子に、思わず冷笑を浮かべそうになったアリアナだが、意志の力で抑え込み、クレメントに問いかけた。
「ですが、支度金として用意してしまいますと、クレメント様が自由に使うことができなくなってしまいます。」
多くの国を併合してできたこの国では、無用な争いをさけるため、個人の財産という考え方が広く定着しており、夫婦間であってもそれは同様であった。そのため、個人名義の資産は、相手の了承を得ない限り、勝手に使用することはできない。
「もちろん承知しているよ。でもあなたとは、お金のために結婚するわけじゃない。」
「まあ。そのお言葉とても嬉しいですわ。正直私などお金がなければ、なんの価値もないと思っておりました。ですがクレメント様は私自身との結婚望んでくださった。本当に夢のようです。
それでは、支度金で用意するように父には話しておきますわね」
にこり、嬉しそうに微笑んだアリアナの様子を見て、クレメントも優しく微笑み返した。
それでは本日は失礼致します、という言葉と共にアリアナが去ったのを見届けて、クレメントは独りごちた。
「金以外でお前と結婚する奴なんかいるかよ、赤毛」
ガチャ、と扉が開く音がしてクレメントはギョッとした。
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