あなたのおかげで吹っ切れました〜私のお金目当てならお望み通りに。ただし利子付きです

じじ

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クレメントの部屋から出たアリアナは、絡みつくような嫌な視線を感じた。人から嘲けりを向けられた時の視線。街を歩くたびに頻繁に感じる視線だ。
視線の主は、おそらく先ほどクレメントに追い出されたジッドだろう。おおよそ会話の内容を面白がって聞いていたに違いない、そう思いながらアリアナは独りごちた。

「バカはバカを呼ぶのね」

その呟きはもちろん誰の耳にも入ることなく宙に消えていった。


自宅に着いたアリアナは、両親にことの顛末を話すため、二人のいる居間に向かった。

居間にいた両親は、アリアナの帰りを待っていたようで、にこにこしながら出迎えた。

「お帰り、アリアナ。クレメント様はお元気だったか」

娘の幸せを願って優しく微笑む父に、先ほどのクレメントの真意を告げなければ、と思うと心臓がギュッと痛くなる。

「何色のドレスが似合うかしら。クレメント様と並んだら美男美女ね。楽しみだわ」

結婚式の準備をウキウキと進める母の顔が自分のこれからの話で、曇ってしまうだろうと思うと、アリアナはやりきれなく感じた。

「お父様、お母様、クレメント様なのですが、実は」

そう言いかけるのと、母が嬉しそうに父に話し出すのが同時だった。

「ビンセント、アリアナは利発でとても美しい子に育ったわ。私には赤い髪もとても美しい色に思えます。でも、この国ではその美しさに気づける人間がとても少ない。だからアリアナの美しさに気づける男性と結婚できてとても嬉しいの」
「そうだね、ローズ。僕たちのかわいいお姫様が選んだ相手だ、祝福しよう。」

そして、アリアナの方に向き直るとビンセントは目にうっすら涙を溜めて言った。

「アリアナ、僕たちはその髪色で君を産んだことを謝りはしないよ。なぜなら、赤い髪も含めて君の全てが僕たちの誇りだからだ。でも君自身は髪の色で、きっと苦労をしたこともあっただろう。でも、君が僕たちと同じ考えの方のもとへ嫁げると聞いて、本当に嬉しく思うよ」

そう言われたアリアナは、困ったように微笑
んだ。





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