あなたのおかげで吹っ切れました〜私のお金目当てならお望み通りに。ただし利子付きです

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「あら、簡単なことよ。宝石はうまくいけば莫大な利益がだせるわよね。」
「ええ、ですが、仕入れ値が張りますよね。公爵家にそれをできる資金があるでしょうか」
「そうよね、だから私が資金を提供するの。」
「提供、ですか」
「まあ、厳密にいうと貸し付けるのだけれど。」
「それでも、お優しい気がしますが…」

ベスは不満そうな表情でアリアナを見る。アリアナはそれに気づくとにっこり笑って言った。

「どうかしら。彼は多分後悔することになると思うのよ」
「なぜでしょうか。」
「理由は二つ。一つ目はね、まず彼の事業は成功しない。」
「宝石は仕入れが一番の難関といわれてますよね。その部分をクリアできるのであれば、成功するのでは？」
「ええ、そうね。ただ、その部分が一番難関と言われるのはね、前提として良質の宝石を見抜く能力があった上で、ということなの」
「それは、つまり…」
「ええ。そもそも宝石を商いたいと思う人間で、素人なんて土俵に立てないのよ。」
「でも、全てをクレメント様が手がけるわけではないですよね。宝石の仕入れなどはプロの方を雇ってもいいわけですし。」
「ええ、普通はそう思うわよね。でもおそらく彼はそこを一番やりたがると思うわ」
「どうしてですか」
「ふふ。彼の口癖知ってるかしら。聞いたら笑うわよ。」
「なにでしょう？」
「俺は本物を見抜けるんだ。だから身につけるものは一流なんだ。よ」
「…」
「ね。すごいでしょう？彼は落ちぶれてても公爵家よ。黙っていても回りのものは一流の物に決まってるじゃない。それを自分が選んだと思ってるんだから、おめでたいわよね。そういうプライドだけは異常に高いから、仕入れは絶対自分がやると思うわ。」
「…すごいですね」

呆れて驚くベスの様子を見て、アリアナはふっと笑った。

「ええ。だからどうせまともに良い宝石なんて仕入れられないわ。でもね、直接売るにしても卸すにしても買い手は一流の目を持ってるわ。まず、利益が出るほど売るのは無理でしょうね」
「でも、失敗したら不利益を被るのはお嬢様も一緒では？」
「それが二つ目の理由なんだけれどね。先ほど貸すと言ったでしょう？お金を貸すには何が必要かしら」
「普通はそれまでの実績ですが…それがない場合は利益をあげるという信頼でしょうか。」
「ええ、でも彼にそれはない。だからね、通常より高い利子を設定するの」
「え。でも、最終的に回収できないのではどれほど利子を設定しようが無駄なのでは？」

焦ったように言うベスににっこり微笑んでアリアナは告げた。

「あら、クレメント様は絶対払えるわよ。だって広大な公爵領があるじゃない？」