あなたのおかげで吹っ切れました〜私のお金目当てならお望み通りに。ただし利子付きです

じじ

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コンコン。

翌日の昼下がり、遠慮がちにアリアナの部屋がノックされる。

「どうぞ」

アリアナが答えると、ケイビスが困惑したような表情と共に現れた。

「失礼します、義姉上。」
「あら、姉上だなんて。年も私の方が下ですし名前で構いませんわ。」

形式ばった呼び名を面映く感じ、アリアナがそう告げた瞬間、ケイビスの顔色がさっと変わる。

「義姉上まさか…」
「あら、お一人でいらしたのですか?」

しかし、続くアリアナの質問に今度は困惑した表情を見せる。

「兄から義姉上に挨拶に行けと言われたのですが、その際は一人で行くようにと。おそらく義姉上もそれを望まれているはずだ、と伝えられまして。」
「まあ。どうしましょう。私も今、侍女が使いに出ておりまして…てっきり、ケイビス様がどなたかとご一緒に来られると思っておりましたの。」

驚いて困ったような顔をしたアリアナにケイビスは慌てて謝罪した。

「申し訳ございません、義姉上。挨拶は日を改めて伺わせて頂きます。妙な誤解を周りからされる前に、本日は失礼したいと思います。」

生真面目に告げたケイビスにアリアナは微笑んで答えた。

「挨拶はこれで充分でございます。むしろ本来なら嫁いできた私からすべきことでしたのに、申し訳ございませんでした。」

優雅に一礼をしながらアリアナはケイビスにそのまま続けた。

「ですが、ケイビス様には内密にご相談したい件がございます。」

驚いた様子でケイビスがこちらを見てくる。ほんの少しその瞳に警戒の色が浮かんだのを見てアリアナは簡潔に内容を告げた。

「公爵家の収支についてです。もちろん内密とはいえ、2人きりという意味ではございません。信のおける方も同席していただいて構いませんので。」

そう伝えた途端、訝しがる色が消えたのが見て取れた。あまりに素直な反応に思わず微笑みながら揶揄ってしまう。

「ハンゼ公爵家のご兄弟は揃って女性から好かれるようですね」

バツの悪そうな顔をしたままケイビスは謝った。

「申し訳ございません、アリアナ殿。自意識過剰にもほどがございました」

どうやら名前呼びを提案したことについても、同じ誤解を受けていたようだ、とアリアナは苦笑する。名前で呼ばれたのは誤解が解けたことの意思表示なのだろう。

「それで我が家の収支についてでしたか」
「はい。」
「なぜ、わたしに?」
「ケイビス様がご負担してくださってる部分も多いでしょう?」

さらりと答えたアリアナにケイビスは瞠目した。

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