あなたのおかげで吹っ切れました〜私のお金目当てならお望み通りに。ただし利子付きです

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「兄があなたに何かお伝えしたのでしょうか」
「いいえ。書類上は1,000エランの収入と200エランのケイビス様からの仕送りでした。帳簿上はそこからすべて支出を賄っていることになっています。ですが不足分があるのではないかと。」
「なぜ」
「まず税金に関する記載がございません。それに使用人たちの給金にしても安すぎましたので。どなたかが補填してくださっていると考えるべきかと」
「なるほど」

そしてさわやかにケイビスは答えた。

「確かに。アリアナ殿がおっしゃる通り不足分は私のポケットマネーから支出しておりました。もちろん本来は帳簿に記入して計上すべき案件なのですが…」
「なぜなさらなかったのでしょう」
「簡単なことです。兄は私に頼るのが嫌だったのですよ。」
「しかし仕送りは受けておられますよね」
「兄の奥方であるアリアナ殿にいうべき言葉ではございませんが…兄はダブルスタンダードでして。私から助けられるのを嫌う一方で、公爵家の一員として勤めも果たせ、と申しましてね。」
「それで実際はどれくらい補填していただいているのでしょうか」

矢継ぎ早のアリアナの質問にそれまでは滞りなく答えていたケイビスが、初めて少し困ったように微笑んだ。

「どうかされましたか」

不思議に思い尋ねたアリアナにケイビスは苦笑してようやく答えた。

「私が年間に公爵家に入れているお金は仕送りで記載されている200エランを抜いても1,200エラン程度なんです。」

アリアナは絶句した。

「つまり半分以上をまかなっておられると。」
「ええ」
「なるほど記載できないはずですわね」
「正しい収支が必要な時に困るので記載するように一度は告げたのですが…」
「兄の私を立てられないのか、と仰ったとか」
「ご明察です。ついでに言うと、追加の給金は不要なのにお前が勝手に払ったものだろうなどとも。」
「まあ」
「ですが、これで何とか回っている状態にもかかわらず、兄にはいまいちピンと来ていないようです。」

困ったように眉尻を下げるケイビスにアリアナは答えた。

「ケイビス様。この件について改めて書類と照らし合わせて収入と支出の費目についてご相談したいのですが、可能でしょうか」
「お役に立てるのであれば幸いですが。結局兄の同意が必要になるでしょう」

そこでアリアナはにっこり笑った。

「実はクレメント様から私が公爵家の財産管理権を一任されましたの。」

ケイビスは驚いた顔をした後、豪快に笑った。

「なるほど、アリアナ殿は兄より一枚も二枚も上手のようですね。分かりました。お手伝いいたします。」