あなたのおかげで吹っ切れました〜私のお金目当てならお望み通りに。ただし利子付きです

じじ

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ドアを開けて入ってきたケイビスは俯き加減にアリアナの側へとやってきた。いつも背筋の伸びたケイビスのいつにない様子に違和感を覚えたアリアナは、気遣わしげに声をかけた。

「ケイビス様。なにかございましたか?」
「支度中にすまない。いま、少し人払いを…」

神妙な声で告げられアリアナは応じた。ベスに耳打ちして周りの者たちを下がらせる。
その様子を気にとめることもなくケイビスは、俯いたまま告げた。

「アリアナ様には申し訳ないのですが、この結婚、無かったことにしていただけませんか」
「え?」
「あなたへのプロポーズは兄への意趣返しにすぎませんでした。あなたがあまりにも喜ぶから言い出せなかっただけで…兄弟揃ってあなたに恥をかかせたことはお詫びします。慰謝料も言い値でお支払いしましょう。だから式が始まる前に屋敷から出て行ってくださいませんか」

つらつらと捲し立てられ、アリアナはいっそ笑いが込み上げてきた。それを悟られないように精一杯傷ついたふりをしながら答える。

「そんな…ケイビス様まで…信じておりましたのに」
「申し訳ございません。」

その言葉を俯いたまま耐えるように聞くケイビスにアリアナはそっと近づく。ドアの前から人の声が聞こえてくる。そろそろ頃合いだと感じたアリアナがケイビスを思いっきりひっぱたくのと、ドアが開けられるのはほとんど同時だった。

「…っ」

アリアナにひっぱたかれた衝撃でケイビスの髪がずれ、下から金髪が表れた。それを驚いた様子もなく見つめて、アリアナは叩いた方の手をひらひらさせながらため息混じりに呟く。

「どこまで愚かなのですか、クレメント様」

静かに侮蔑の言葉をアリアナが告げた瞬間、ベスが連れてきた本物のケイビスが血相を変えてクレメントの胸ぐらを掴んだ。唸るような低い声でクレメントを問い詰める。

「二度と彼女に近づくなと告げたはずだ。お前のような人間が気安く言葉をかわして良い方ではない」

クレメントは皮肉っぽく唇を歪めて答えた。

「そうか?あの女、俺をお前だと思って部屋に招き入れたぞ?まあ俺たちはよく似てるからな。案外どっちでも良いんじゃないのか」

アリアナをこれ以上ないほど見下した言葉に、ケイビスの瞳に殺意が宿る。

口の端で小さく、殺してやる、とケイビスが呟くのを聞いて、アリアナはクレメントの首を締め上げかけているケイビスの手を柔らかく握った。

「ケイビス様、手をお離しになって」
「だが、こいつはあなたを侮辱した…」
「これ以上続けると本当に死んでしまいます」

焦った様子もなく落ち着いた声でアリアナは続けた。

「どうしても、そのまま続けると仰るなら私が代わりますから」

その言葉に驚いたケイビスが思わず手を緩めた。


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