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第四章
4-18.成長
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「あ。ご、ごめん!」
つい無我夢中になっていた仁は、玲奈の手を握ってしまっている状況に驚いて手を離した。
「う、うん。それはいいんだけど、さっきのは何だったの? 仁くんがやったの?」
仁は何事かと寄ってきたミルとロゼッタを手招きし、4人は小さな円を組んだ。
「今から話すことは“戦乙女の翼”だけの秘密ね」
仁が3人の顔を順に見回すと、それぞれが頷きを返した。
「雷撃!」
仁と対峙した毒大蛇が、背後からの雷撃に貫かれて地に伏した。
「火壁!」
仁の横に立つ玲奈を目指してくねくねと這い寄る、もう1匹の目の前の床から炎の壁が噴きあがる。毒大蛇は頭から火壁に突っ込み、全身を焼かれてのた打ち回った。
「雷槍・トリプル!」
その弱った毒大蛇を取り囲むように、中空に雷の槍が3本現れる。バチバチと弾ける3本の雷槍は一気に加速して蛇の胴体を三方から突き破った。仁は小さく息を吐いた。
「やったね、仁くん。遠隔魔法、やっぱりすごいね」
「ありがとう」
仁は3人に説明した後、しばらく練習の時間を貰い、実戦で使えるくらいに修得しようと何度も繰り返していた。すると、あるときから発動までのプロセスを一気に省略することができ、通常の魔法発動と遜色ないレベルで使いこなせるようになっていた。不思議に思った仁が自身のステータスを確認すると、特殊技能の欄に遠隔魔法という技能名が表示されていた。不慮の事故がないよう玲奈に側に控えてもらい、実戦で試したところ、予想以上の成果を得られた。仁は研究次第でいろいろと使い道が増えそうだとほくそ笑んだ。
「私も負けないように頑張らないと」
玲奈は盾を付けた左腕を持ち上げ、握り拳を作った。
その後、仁はこれまでのようにサポートに回り、玲奈が先頭に立って戦闘を繰り返した。実戦を経て遠隔魔法の有用性を理解した仁は、ここぞというとき以外は人前での使用を控え、黒炎と同じく切り札的に用いることにした。
玲奈は魔法を牽制のみに使用し、あえて接近戦を挑んでいた。毒の滴る牙を立てて襲い掛かってくる毒大蛇を毒蛇王の小盾で防ぐ。事前に魔力を通して小盾の機能を有効化しているため、盾に触れた相手は即死とまでは行かないまでも、目に見えて衰弱していた。動きの鈍った毒大蛇を玲奈のミスリルソードが切り裂いていく。
「ジンお兄ちゃん。ミルも戦いたいの」
いつものように魔物の死骸の解体を行っていたミルが、形見の短剣を握りしめて立ち上がった。魔物の血を吸収したばかりの血喰らいの魔剣が赤黒い幾何学模様を浮かび上がらせていた。
「ジン殿。ようやく自分もこの通り槍を突けるまでになりました。そろそろ戦闘の許可をいただけないでしょうか」
ミルの傍らで周囲の警戒をしていたロゼッタが亜竜の槍を中腰に構えて、宙に向かって突き出す。仁や玲奈が新しい戦い方を身に付けている状況に触発されたのか、2人ともやる気に満ち溢れた表情を浮かべていた。
「2人の気持ちもわかるけど、焦らないでね。それならもっと上の階層に戻ろう。玲奈ちゃんもそれでいいかな?」
隠し部屋の主との再戦が叶わないのが残念ではあるが、それはまたの機会にと仁は割り切り、ミルとロゼッタの意志を尊重しようと提案した。
「ねえ、仁くん。上の階層の魔物より、私の盾で弱らせた蛇の方が弱くない?」
「そう言われてみればそうだね。戦いに慣れてもらうにはそっちの方がいいかも。玲奈ちゃんに負担をかけちゃうけど、大丈夫?」
「私も盾に慣れたいし、ちょうどいいよ」
玲奈の疲れを感じさせない笑顔を受け、仁は決断を下した。
「レナお姉ちゃん、ありがとう」
「レナ様、ありがとうございます。御恩に応えられるよう精進する所存です」
玲奈に笑顔を向ける2人の様子に、玲奈は笑みを深めた。
「前衛は玲奈ちゃん。ロゼは中衛としてその後ろに控えて、弱った毒大蛇を後ろから突いてね。ミルは俺と一緒に遊撃ね。俺が指示を出したら魔物に接近して止めを刺してね」
「了解しました」
「わかったの」
仁は真剣な表情で頷くロゼッタとミルの肩と頭をそれぞれ軽く叩いた。
「フォローはするから心配しないで。焦らず、着実にね」
仁は玲奈に先導される2人を後ろから眺めながら、心の中でエールを送った。
「仁くん。来たよ」
通路の先から現れた2匹の毒大蛇を前に、玲奈が臨戦態勢をとった。
「じゃあ皆。さっきの通りにね」
仁の言葉に、ミルとロゼッタがそれぞれ武器を構えた。仁が見守る中、氷弾を頭の横に撃ち込まれた1匹がうねうねと玲奈に迫り、上半身を持ち上げて牙を立てた。玲奈は落ち着いた動きで一歩横にずれ、盾で横薙ぎに叩きつけた。ダンジョンの横の岩壁に激突して床に落ちた毒大蛇は、衝突の衝撃と盾の毒の影響でふら付いていた。
「ロゼ!」
「了解!」
仁の呼びかけに応じたロゼッタが数歩前に出て、腰を落として槍を引いた。
「はっ!」
裂帛の気合と共に、ロゼッタは床でのたうつ毒大蛇の脳天に槍を突き刺した。その間、玲奈は盾の毒を与えて動きを悪くしたもう1匹と対峙していた。
「ミル。玲奈ちゃんが注意を引いてる間に横から回り込んで斬りつけて」
「わかったの」
玲奈と毒大蛇がじりじりと距離を詰める中、静かに壁際まで迂回したミルが横から一気に跳び出した。衰弱して反応の遅れた蛇の胴体をミルの短剣が切り裂いた。2匹の毒大蛇はどちらも動きを止め、一瞬の静寂が辺りを支配した。
「ミルちゃん! ロゼ! やったね!」
「うん。ミルもロゼもいい動きだったよ」
仁と玲奈の賛辞を受けて初めて魔物と戦って倒した実感が湧いてきたのか、ミルとロゼッタの強張った表情が解け、徐々に喜色が浮かんできた。
「ミル、できたの!」
「自分が魔物を倒せる日が来るなんて……!」
笑顔を浮かべるミルとロゼッタの頬を、両目から溢れた涙が濡らしていた。2人の姿を、仁と玲奈は微笑ましい思いで見つめた。
つい無我夢中になっていた仁は、玲奈の手を握ってしまっている状況に驚いて手を離した。
「う、うん。それはいいんだけど、さっきのは何だったの? 仁くんがやったの?」
仁は何事かと寄ってきたミルとロゼッタを手招きし、4人は小さな円を組んだ。
「今から話すことは“戦乙女の翼”だけの秘密ね」
仁が3人の顔を順に見回すと、それぞれが頷きを返した。
「雷撃!」
仁と対峙した毒大蛇が、背後からの雷撃に貫かれて地に伏した。
「火壁!」
仁の横に立つ玲奈を目指してくねくねと這い寄る、もう1匹の目の前の床から炎の壁が噴きあがる。毒大蛇は頭から火壁に突っ込み、全身を焼かれてのた打ち回った。
「雷槍・トリプル!」
その弱った毒大蛇を取り囲むように、中空に雷の槍が3本現れる。バチバチと弾ける3本の雷槍は一気に加速して蛇の胴体を三方から突き破った。仁は小さく息を吐いた。
「やったね、仁くん。遠隔魔法、やっぱりすごいね」
「ありがとう」
仁は3人に説明した後、しばらく練習の時間を貰い、実戦で使えるくらいに修得しようと何度も繰り返していた。すると、あるときから発動までのプロセスを一気に省略することができ、通常の魔法発動と遜色ないレベルで使いこなせるようになっていた。不思議に思った仁が自身のステータスを確認すると、特殊技能の欄に遠隔魔法という技能名が表示されていた。不慮の事故がないよう玲奈に側に控えてもらい、実戦で試したところ、予想以上の成果を得られた。仁は研究次第でいろいろと使い道が増えそうだとほくそ笑んだ。
「私も負けないように頑張らないと」
玲奈は盾を付けた左腕を持ち上げ、握り拳を作った。
その後、仁はこれまでのようにサポートに回り、玲奈が先頭に立って戦闘を繰り返した。実戦を経て遠隔魔法の有用性を理解した仁は、ここぞというとき以外は人前での使用を控え、黒炎と同じく切り札的に用いることにした。
玲奈は魔法を牽制のみに使用し、あえて接近戦を挑んでいた。毒の滴る牙を立てて襲い掛かってくる毒大蛇を毒蛇王の小盾で防ぐ。事前に魔力を通して小盾の機能を有効化しているため、盾に触れた相手は即死とまでは行かないまでも、目に見えて衰弱していた。動きの鈍った毒大蛇を玲奈のミスリルソードが切り裂いていく。
「ジンお兄ちゃん。ミルも戦いたいの」
いつものように魔物の死骸の解体を行っていたミルが、形見の短剣を握りしめて立ち上がった。魔物の血を吸収したばかりの血喰らいの魔剣が赤黒い幾何学模様を浮かび上がらせていた。
「ジン殿。ようやく自分もこの通り槍を突けるまでになりました。そろそろ戦闘の許可をいただけないでしょうか」
ミルの傍らで周囲の警戒をしていたロゼッタが亜竜の槍を中腰に構えて、宙に向かって突き出す。仁や玲奈が新しい戦い方を身に付けている状況に触発されたのか、2人ともやる気に満ち溢れた表情を浮かべていた。
「2人の気持ちもわかるけど、焦らないでね。それならもっと上の階層に戻ろう。玲奈ちゃんもそれでいいかな?」
隠し部屋の主との再戦が叶わないのが残念ではあるが、それはまたの機会にと仁は割り切り、ミルとロゼッタの意志を尊重しようと提案した。
「ねえ、仁くん。上の階層の魔物より、私の盾で弱らせた蛇の方が弱くない?」
「そう言われてみればそうだね。戦いに慣れてもらうにはそっちの方がいいかも。玲奈ちゃんに負担をかけちゃうけど、大丈夫?」
「私も盾に慣れたいし、ちょうどいいよ」
玲奈の疲れを感じさせない笑顔を受け、仁は決断を下した。
「レナお姉ちゃん、ありがとう」
「レナ様、ありがとうございます。御恩に応えられるよう精進する所存です」
玲奈に笑顔を向ける2人の様子に、玲奈は笑みを深めた。
「前衛は玲奈ちゃん。ロゼは中衛としてその後ろに控えて、弱った毒大蛇を後ろから突いてね。ミルは俺と一緒に遊撃ね。俺が指示を出したら魔物に接近して止めを刺してね」
「了解しました」
「わかったの」
仁は真剣な表情で頷くロゼッタとミルの肩と頭をそれぞれ軽く叩いた。
「フォローはするから心配しないで。焦らず、着実にね」
仁は玲奈に先導される2人を後ろから眺めながら、心の中でエールを送った。
「仁くん。来たよ」
通路の先から現れた2匹の毒大蛇を前に、玲奈が臨戦態勢をとった。
「じゃあ皆。さっきの通りにね」
仁の言葉に、ミルとロゼッタがそれぞれ武器を構えた。仁が見守る中、氷弾を頭の横に撃ち込まれた1匹がうねうねと玲奈に迫り、上半身を持ち上げて牙を立てた。玲奈は落ち着いた動きで一歩横にずれ、盾で横薙ぎに叩きつけた。ダンジョンの横の岩壁に激突して床に落ちた毒大蛇は、衝突の衝撃と盾の毒の影響でふら付いていた。
「ロゼ!」
「了解!」
仁の呼びかけに応じたロゼッタが数歩前に出て、腰を落として槍を引いた。
「はっ!」
裂帛の気合と共に、ロゼッタは床でのたうつ毒大蛇の脳天に槍を突き刺した。その間、玲奈は盾の毒を与えて動きを悪くしたもう1匹と対峙していた。
「ミル。玲奈ちゃんが注意を引いてる間に横から回り込んで斬りつけて」
「わかったの」
玲奈と毒大蛇がじりじりと距離を詰める中、静かに壁際まで迂回したミルが横から一気に跳び出した。衰弱して反応の遅れた蛇の胴体をミルの短剣が切り裂いた。2匹の毒大蛇はどちらも動きを止め、一瞬の静寂が辺りを支配した。
「ミルちゃん! ロゼ! やったね!」
「うん。ミルもロゼもいい動きだったよ」
仁と玲奈の賛辞を受けて初めて魔物と戦って倒した実感が湧いてきたのか、ミルとロゼッタの強張った表情が解け、徐々に喜色が浮かんできた。
「ミル、できたの!」
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