リトライさせていただきます!〜死に戻り令嬢はイケメン神様とタッグを組んで人生をやり直す事にした。今度こそ幸せになります!!〜

ゆずき

文字の大きさ
17 / 294

16話 本当の言葉

しおりを挟む
 コンコン……コンコン……

 バルコニーの方から聞こえてくる窓ガラスを小突く音。ここふた月のうちに、すっかり耳に馴染んでしまった。私は掛けていた椅子から立ち上がると、バルコニーへ向かった。可愛い郵便屋さんを出迎えるためだ。

「クーッ! クーッ!」

「エリス、いらっしゃい! ご苦労様」

 窓を開けてやると、エリスは私の肩に飛び乗った。羽でフワフワした体をすり寄せてくる。

「ふふっ、くすぐったいよ」

 喉元を軽く撫でてやりながら、窓の下に落ちている金属製の筒を拾い上げた。エリスは手紙を持って来ると、私が返事を書いている間は部屋で休憩をする。そんなエリスのために専用のとまり木と水入れを用意してみた。エリスもそれが気に入ってくれたようで、そこで羽繕いをしながらリラックスしている。
 私は書き物机に向かった。先ほど手にした筒の蓋を開けて、中身を確認する。

「綺麗……今日は藤色の封筒だ」

 ローレンスさんから届く手紙は、毎回封筒の種類が違う。前回は緑でその前は黄色……どれもとても美しく、手紙を受け取る時の楽しみのひとつになっている。私は封筒から便箋を取り出し、そこに書かれた文章に目を通した。

「へぇ……『とまり木』に新メニューが出るんだ……冷たいデザート!! アイスクリームかな……それともゼリーとか? よし! 絶対食べに行かなくちゃ」

 店のオーナーであるローレンスさんから、耳寄り情報をいただいてしまった。『とまり木』のお菓子は全部美味しいからなぁ。新作が今から楽しみでしょうがない。


『贈ったピアスは身に付けてくれていますか? あれは御守りです。どうか、あなたのそばから離すことがないようお願いします』


 そっと自分の耳に触れる。このピアスの石……ルーイ様の話だと、コンティドロップスだそうだが。確か以前、石はコンティレクト様の体の一部だと聞いた。そんなに簡単に手に入る物ではないと思うのだけど。
 瑠璃色の美しいそれは魔力の輝き……コンティレクト様のものとも違う。前に見せて頂いたコンティレクト様の力は、燃えるような鮮やかな真紅色だった。つまり、1度コンティレクト様の魔力を抜き取り、新たに別の力を吸わせた事になる。
 ローレンスさんは魔法使いなんだろうか……いや、石の正体を知らずに偶然手に入れただけの可能性だってある。ルーイ様が言うように、見た目はただの美しい宝石にしか見えないのだから。
 どっちにしても、どうしてこんな貴重な物を私にくださったのだろう……。それに、ローレンスさんはなぜ、私がピアスを開けていると知っていたのかな。てっきりセドリックさんに聞いたのだと思っていたけど、彼は私の贈り物選びには関わっていないと言っていた……


『もうすぐ私の周りの状況も落ち着いて、自由に動けるようになりそうです』

『クレハ……早く君に会いたい』



「えっ!!?」

 今までの形式ばった丁寧な口調とは明らかに違う、最後の一文に鼓動が跳ねる。

 びっくり……した……

 何だか顔が熱くなっていく気がする。私は深く息を吐くと、とまり木に止まってこちらを眺めているエリスに語りかけた。

「エリス……あなたの飼い主さんは、一体どんな方なの?」

 見た目はもちろん、性別も年齢も私は知らない。私が知っているのは、セドリックさんがお仕えしているご主人で『とまり木』の責任者という肩書きだけだ。何回かの手紙のやり取りで、少しずつお互いの好み趣向などは知ることができたけれど、確信部分には触れられずにいた。
 机の引き出しの中から真新しい便箋を取り出し、私は手紙の返事を書き出した。『とまり木』の新メニュー楽しみにしているということ……ピアスはとても気に入っていて、肌身離さず身に付けているということ。そして最後に……

『私もあなたにお会いしたいです』……そう綴った。

 書き終えた手紙に封をして、筒に入れる。エリスが出番だとばかりに、大きく翼を広げて羽ばたいた。

「よろしくね」
 
 筒をエリスの前に差し出す。エリスは器用に足でそれを掴み、私の手から受け取った。窓を開けるとエリスは勢いよくそこから外へ飛び立っていく。手紙を自身の主に届けるために……。私はそれをバルコニーから眺める。エリスが向かって行くのが毎回『とまり木』のある所とは反対方向なので、ローレンスさんはどこか別の場所で仕事をしているのだろう。しかしエリスがこうして頻繁に訪れる事ができるのだから、うちの屋敷からそこまで離れてはいなそうだ。
 エリスの姿が見えなくなるまでぼんやりと空を眺めていると、部屋の扉をノックする音が聞こえた。

「はーい」

「失礼致します」

 部屋に入って来たのはモニカだった。

「クレハお嬢様、カミル様がお見えになられました」

「カミルが? 今日は遊ぶ約束はしていなかったと思うけど……どうしたんだろう」

 突然の幼なじみの来訪に首を傾げる。しかし、カミルはその時の気分でふらっと訪問してくる事は今までも何回かあった。特段気にする必要は無いのかもしれない……

「分かりました。モニカ、カミルを部屋までお通しして下さい」

 私はモニカに指示を出すと、軽く部屋を片付けて幼なじみを迎える準備をした。

 









「カミル、いらっしゃい! 急にどうしたの?」

「うん、ちょっとクレハの顔が見たくなってね。最近はどう? 変わった事はない?」

 やはりカミルはただ遊びに来ただけで、特に何かあったという事ではないようだ。
 変わったことかぁ。1番に思いつくのはルーイ様関連なんだけど、これを言うわけにはいかないしなぁ。

「変わった事じゃないけど素敵なカフェを見つけたの。『とまり木』って名前で、そこのケーキがとっても美味しくて……」 

「カフェ……?」

「そう! 中でもフルーツタルトが絶品で……」

「あー……そう、そういうのか。何だ、やっぱり僕の考え過ぎか」

「うん?」

「いや、何でもないよ。へー、そんなに美味しいなら食べてみたいな」

「じゃあ、今から行こう!!」

「えっ……今から?」

「うちからそんなに離れていないの。西オルカ通りだから歩いて5分くらい。ね? 一緒に行こう」

 私はカミルの両手を握って促した。彼も甘い物が好きだし、きっと気に入ってくれるはずだ。

「う、うん……」

 カミルの了解を得ると、善は急げとばかりに彼を引っ張って自室を後にした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

皇帝陛下の愛娘は今日も無邪気に笑う

下菊みこと
恋愛
愛娘にしか興味ない冷血の皇帝のお話。 小説家になろう様でも掲載しております。

転生皇女セラフィナ

秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。 目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。 赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。 皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。 前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。 しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。 一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。 「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」 そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。 言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。 それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。 転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

男として育てられた公爵家の令嬢は聖女の侍女として第2の人生を歩み始めましたー友人経由で何故か帝国の王子にアプローチされておりますー

高井繭来
恋愛
ルーシュ・サウザント・ドラゴニアは公爵家の第8子だった。 武で名をはせたドラゴニア家には上に7人の姉。 待望の男児が生まれなかったドラゴニア公爵はルーシュを男児として育てる。 男として育てられたルーシュは剣と魔法の才能を発揮し12歳にして国家聖騎士団の一員となり功績を積むが、父より届いた手紙で全てを失う。 『待望の男児が生まれたから明日から女として生きろ』 こうしてルーシュは神殿仕えの身となって聖女の侍女となった。 ウザい聖女に絡まれながらもルーシュは今日も侍女としても務めを果たす。 侍女として働く一方で魔獣の王都侵入を防いだり、曲者の親友が家出してきたせいで何故か大帝国の王子に見初められたりと第2の人生は波乱万丈だった。 ※聖女の力を姉に譲渡し国を出て行った元聖女は実は賢者でした~隣国の後宮で自重せずに生きていこうと思います~とリンクしています。 ※ちょっぴり題名変えました。  カテゴリ【恋愛】に変えました。  ファンタジーだけど恋愛が中心になってきてしまったので(;^ω^)

《完結》《異世界アイオグリーンライト・ストーリー》でブスですって!女の子は変われますか?変われました!!

皇子(みこ)
恋愛
辺境の地でのんびり?過ごして居たのに、王都の舞踏会に参加なんて!あんな奴等のいる所なんて、ぜーたいに行きません!でブスなんて言われた幼少時の記憶は忘れないー!

お飾り王妃のはずなのに、黒い魔法を使ったら溺愛されてます

りんりん
恋愛
特産物のないポプリ国で、唯一有名なのは魔法だ。  初代女王は、歴史に名を残すほどの魔法使い。 それから数千年、高い魔力を引き継いだ女王の子孫達がこの国をおさめてきた。 時はアンバー女王の時代。 アンバー女王の夫シュリ王婿は、他国の第八王子であった。 どこか影の薄い王婿は、三女ローズウッドを不義の子ではと疑っている。 なぜなら、ローズウッドだけが 自分と同じ金髪碧眼でなかったからだ。 ローズウッドの薄いピンク色の髪と瞳は宰相ククスにそっくりなのも、気にいらない。 アンバー女王の子供は四人で、すべて女の子だった。 なかでもローズウッドは、女王の悩みの種だ。 ローズウッドは、現在14才。 誰に似たのか、呑気で魔力も乏しい。 ある日ストーン国のレオ王から、ローズウッド王女を妻にしたいとうい申し出が届いた。 ポプリ国は、ストーン国から魔法石の原料になる石を輸入している。 その石はストーン国からしか採れない。 そんな関係にある国の申し出を、断ることはできなかった。 しかし、レオ王に愛人がいるという噂を気にしたアンバー女王は悩む。 しかし、ローズウッド王女は嫁ぐことにする。 そして。 異国で使い魔のブーニャンや、チューちゃんと暮らしているうちに、ローズウッドはレオ王にひかれていってしまう。 ある日、偶然ローズウッドは、レオ王に呪いがかけられていることを知る。 ローズウッドは、王にかけられた呪いをとこうと行動をおこすのだった。  

【完結】断頭台で処刑された悪役王妃の生き直し

有栖多于佳
恋愛
近代ヨーロッパの、ようなある大陸のある帝国王女の物語。 30才で断頭台にかけられた王妃が、次の瞬間3才の自分に戻った。 1度目の世界では盲目的に母を立派な女帝だと思っていたが、よくよく思い起こせば、兄妹間で格差をつけて、お気に入りの子だけ依怙贔屓する毒親だと気づいた。 だいたい帝国は男子継承と決まっていたのをねじ曲げて強欲にも女帝になり、初恋の父との恋も成就させた結果、継承戦争起こし帝国は二つに割ってしまう。王配になった父は人の良いだけで頼りなく、全く人を見る目のないので軍の幹部に登用した者は役に立たない。 そんな両親と早い段階で決別し今度こそ幸せな人生を過ごすのだと、決意を胸に生き直すマリアンナ。 史実に良く似た出来事もあるかもしれませんが、この物語はフィクションです。 世界史の人物と同名が出てきますが、別人です。 全くのフィクションですので、歴史考察はありません。 *あくまでも異世界ヒューマンドラマであり、恋愛あり、残業ありの娯楽小説です。

処理中です...