197 / 294
196話 魔法の石(3)
しおりを挟む
「もしかしてお気に召しませんでしたか? 魔法使いによって実害を被ったあなた方には需要があると思っておりましたのに。うーん、困りましたね。今から別の物を用意するとなると……ちなみにルーイ様へのお詫びは、料理店の招待券です。王子達にもこういった物の方がよろしかったのでしょうか」
単純に驚いただけなのだけど……コンティレクト様は私達の反応を否定的に捉えてしまったようだ。刃物を突き付けられた時でさえ、眉ひとつ動かさなかったのに。贈り物が不評かもしれないと想像しただけでここまで困惑なさるのか。
「いっ、いえ。少し驚いてしまって……。気に入らないだなんてとんでもありません」
「そうですか? それなら良いのですが……」
レオンはすかさず否定をした。大衆の中に紛れた魔法使いを見つけだすには、レオンの魔力感知に頼らざるをえなかった。それが一番正確だからだ。しかし、常に魔法を発動させているわけにもいかない。レオンの体への負担が大き過ぎる。代わりとなる手段を与えて貰えるのは願ったり叶ったりで、不服などありはしない。コンティレクト様が選んだであろう、料理店の招待券は気になるけど……
石が無駄にならなくて良かったと、コンティレクト様は胸を撫で下ろしている。レオンの言葉を聞いて安心されたようだ。
「石は10個ほど用意致しました。使用するのに特別な力は必要ありません。側近の方々も安心してご利用下さい」
「コンティレクト神の仰る通り、魔力感知に頼ることなく魔法使いの情報が得られるというのは我々にとってとても有益です。このような貴重な石を頂けることを感謝致します」
1番のメリットは誰でも使えるという所だろう。本来の魔力感知ほどでないとは言え、レオンに任せきりにならなくなる利点はかなりのものだ。
コンティレクト様が直々に改良したという特別なコンティドロップス……。ローシュの神の来訪に私達は右往左往だったけれど、まさかこのような物が頂けるとはレオンも想像していなかっただろう。石はこれから行う事件の調査にも役立ちそうだ。
「石の使い方は……と言っても難しいことはないのですが、先ほど見て貰いましたように、この石は魔力を吸い込み色を変える性質がある。石の色が変化したら、近くに魔力を持った者がいるということの証明になるのです。この石の変化を参考にし、魔法使いの探索なりに役立てて頂けたらと思います」
通常のコンティドロップスとの違い、そして使用の際の注意点などもコンティレクト様は丁寧に説明して下さった。レオンに対するお詫びとはいえ、至れり尽せりだ。コンティレクト様はメーアレクト様と仲が良さそうなので、レオンにも好意的なのかもしれない。
「おや、つい話し込んでしまいましたね。伝えるべきことは伝えましたし、そろそろお暇させて頂きましょうか」
自前の懐中時計で時刻を確認すると、コンティレクト様は帰宅の準備を始めた。来るのも突然だったけど、帰るのも突然なんだな。
「レオン王子、本日はこれで失礼致します。次にお会いするのはリオラドでの会合になるかと思いますが、もし石について尋ねたいことがありましたらメーア殿に託けて下さいませ」
「分かりました」
「それと、こちらをルーイ様に渡して頂けますかな」
コンティレクト様は懐から白い封筒を取り出し、レオンに手渡した。これがルーイ様へのお詫びだという招待券かな……
「姫君もお元気で。いつかローシュに遊びに来てくださいね。歓迎致しますよ」
「はいっ、ありがとうございます」
「それでは、また……」
私達への挨拶を済ませた直後、コンティレクト様の姿が煙のように消えてしまった。今更ではあるけど、ルーイ様が行っていた空間を移動する魔法をコンティレクト様も使えるんだな。
ようやく緊張状態から解放された。ガチガチだった体から一気に力が抜けたのを感じる。レオンはソファの背もたれに全身を預けながら大きく息を吐いていた。部屋のあちこちからも同じように呼吸を整える音が聞こえる。何も心構えが出来ていない状態で、他国の神様と相まみえることになったのだ。みんな神経を擦り減らしていたのだろうな。
「はぁ……緊張した。こんなにドキドキしたの久しぶりだよ」
「ルイスにしては珍しく空気読んでたな。いつお前がローシュの神に失言するんじゃないかと、こっちは気が気じゃなかったよ」
「失礼だな、クライヴ。俺だってそのくらいできるわ。まぁ、レナードが最初にやらかしたからさ。その分こっちは冷静になれたというか……つっても、立ち位置が逆だったら俺も同じことしてただろうけどね」
「殿下、申し訳ありませんでした。ローシュの神にあのような……」
『ローシュの神様が温厚で命拾いしたな』とルイスさんはレナードさんをいじっている。コンティレクト様がお帰りになった途端、みんな一斉に喋り出した。考えることは同じだ。神様のご機嫌を損ねないよう、発言に気を遣っていたのだ。
「レナード、お前の行動は何も間違っていない。いきなり部屋に踏み込んできたのはあちらだ。剣を向けたことに対する謝罪は既に行っているし、今後訪問する際は連絡すると仰って下さったからな」
レオンはレナードさんに気にするなと声をかける。いくらなんでもコンティレクト様は突然過ぎたからなぁ。レオンの力の気配を頼りに訪問されたのだろうけど、神様の姿なんてみんな知らないから状況によっては大騒ぎになっていただろう。
「神様に会ってみたいとは思ってたけど、こんなシチュエーションで実現するとは想像もしてなかったよ。容姿は人間と変わらないしさ、あんなの言われなきゃ気付けないよ」
「ニュアージュの神は巨大な鳥の姿が本来のものだと聞いています。コンティレクト神も人の姿は仮のものなのですよね。一体どんな……あの方も人間を食糧にしているのだろうか」
私も含めて、みんなコンティレクト様に会ったことで気持ちが高ぶっていた。そんな私達を嗜めるように、レオンは両手を軽く叩いた。パンという音が部屋に響く。
「はい、お前たち注目。浮ついてしまうのは分かるが一旦落ち着いてくれ」
レオンは全員の意識が自分に向いたのを確認すると、テーブルに置かれたままだった石の入った布袋を手に取る。
「コンティレクト神の訪問だけでも衝撃的な出来事だったが……この贈り物をどう利用していくか。皆の意見を聞かせて欲しい」
コンティレクト様の説明を聞いた限り、石はとても便利でレオン達にとっても有用な物だろう。せっかく頂いたのだから有り難く使わせて貰えば良いのにと思ったのだけど……レオンは石を実際に使うことにはかなり慎重に見えた。
単純に驚いただけなのだけど……コンティレクト様は私達の反応を否定的に捉えてしまったようだ。刃物を突き付けられた時でさえ、眉ひとつ動かさなかったのに。贈り物が不評かもしれないと想像しただけでここまで困惑なさるのか。
「いっ、いえ。少し驚いてしまって……。気に入らないだなんてとんでもありません」
「そうですか? それなら良いのですが……」
レオンはすかさず否定をした。大衆の中に紛れた魔法使いを見つけだすには、レオンの魔力感知に頼らざるをえなかった。それが一番正確だからだ。しかし、常に魔法を発動させているわけにもいかない。レオンの体への負担が大き過ぎる。代わりとなる手段を与えて貰えるのは願ったり叶ったりで、不服などありはしない。コンティレクト様が選んだであろう、料理店の招待券は気になるけど……
石が無駄にならなくて良かったと、コンティレクト様は胸を撫で下ろしている。レオンの言葉を聞いて安心されたようだ。
「石は10個ほど用意致しました。使用するのに特別な力は必要ありません。側近の方々も安心してご利用下さい」
「コンティレクト神の仰る通り、魔力感知に頼ることなく魔法使いの情報が得られるというのは我々にとってとても有益です。このような貴重な石を頂けることを感謝致します」
1番のメリットは誰でも使えるという所だろう。本来の魔力感知ほどでないとは言え、レオンに任せきりにならなくなる利点はかなりのものだ。
コンティレクト様が直々に改良したという特別なコンティドロップス……。ローシュの神の来訪に私達は右往左往だったけれど、まさかこのような物が頂けるとはレオンも想像していなかっただろう。石はこれから行う事件の調査にも役立ちそうだ。
「石の使い方は……と言っても難しいことはないのですが、先ほど見て貰いましたように、この石は魔力を吸い込み色を変える性質がある。石の色が変化したら、近くに魔力を持った者がいるということの証明になるのです。この石の変化を参考にし、魔法使いの探索なりに役立てて頂けたらと思います」
通常のコンティドロップスとの違い、そして使用の際の注意点などもコンティレクト様は丁寧に説明して下さった。レオンに対するお詫びとはいえ、至れり尽せりだ。コンティレクト様はメーアレクト様と仲が良さそうなので、レオンにも好意的なのかもしれない。
「おや、つい話し込んでしまいましたね。伝えるべきことは伝えましたし、そろそろお暇させて頂きましょうか」
自前の懐中時計で時刻を確認すると、コンティレクト様は帰宅の準備を始めた。来るのも突然だったけど、帰るのも突然なんだな。
「レオン王子、本日はこれで失礼致します。次にお会いするのはリオラドでの会合になるかと思いますが、もし石について尋ねたいことがありましたらメーア殿に託けて下さいませ」
「分かりました」
「それと、こちらをルーイ様に渡して頂けますかな」
コンティレクト様は懐から白い封筒を取り出し、レオンに手渡した。これがルーイ様へのお詫びだという招待券かな……
「姫君もお元気で。いつかローシュに遊びに来てくださいね。歓迎致しますよ」
「はいっ、ありがとうございます」
「それでは、また……」
私達への挨拶を済ませた直後、コンティレクト様の姿が煙のように消えてしまった。今更ではあるけど、ルーイ様が行っていた空間を移動する魔法をコンティレクト様も使えるんだな。
ようやく緊張状態から解放された。ガチガチだった体から一気に力が抜けたのを感じる。レオンはソファの背もたれに全身を預けながら大きく息を吐いていた。部屋のあちこちからも同じように呼吸を整える音が聞こえる。何も心構えが出来ていない状態で、他国の神様と相まみえることになったのだ。みんな神経を擦り減らしていたのだろうな。
「はぁ……緊張した。こんなにドキドキしたの久しぶりだよ」
「ルイスにしては珍しく空気読んでたな。いつお前がローシュの神に失言するんじゃないかと、こっちは気が気じゃなかったよ」
「失礼だな、クライヴ。俺だってそのくらいできるわ。まぁ、レナードが最初にやらかしたからさ。その分こっちは冷静になれたというか……つっても、立ち位置が逆だったら俺も同じことしてただろうけどね」
「殿下、申し訳ありませんでした。ローシュの神にあのような……」
『ローシュの神様が温厚で命拾いしたな』とルイスさんはレナードさんをいじっている。コンティレクト様がお帰りになった途端、みんな一斉に喋り出した。考えることは同じだ。神様のご機嫌を損ねないよう、発言に気を遣っていたのだ。
「レナード、お前の行動は何も間違っていない。いきなり部屋に踏み込んできたのはあちらだ。剣を向けたことに対する謝罪は既に行っているし、今後訪問する際は連絡すると仰って下さったからな」
レオンはレナードさんに気にするなと声をかける。いくらなんでもコンティレクト様は突然過ぎたからなぁ。レオンの力の気配を頼りに訪問されたのだろうけど、神様の姿なんてみんな知らないから状況によっては大騒ぎになっていただろう。
「神様に会ってみたいとは思ってたけど、こんなシチュエーションで実現するとは想像もしてなかったよ。容姿は人間と変わらないしさ、あんなの言われなきゃ気付けないよ」
「ニュアージュの神は巨大な鳥の姿が本来のものだと聞いています。コンティレクト神も人の姿は仮のものなのですよね。一体どんな……あの方も人間を食糧にしているのだろうか」
私も含めて、みんなコンティレクト様に会ったことで気持ちが高ぶっていた。そんな私達を嗜めるように、レオンは両手を軽く叩いた。パンという音が部屋に響く。
「はい、お前たち注目。浮ついてしまうのは分かるが一旦落ち着いてくれ」
レオンは全員の意識が自分に向いたのを確認すると、テーブルに置かれたままだった石の入った布袋を手に取る。
「コンティレクト神の訪問だけでも衝撃的な出来事だったが……この贈り物をどう利用していくか。皆の意見を聞かせて欲しい」
コンティレクト様の説明を聞いた限り、石はとても便利でレオン達にとっても有用な物だろう。せっかく頂いたのだから有り難く使わせて貰えば良いのにと思ったのだけど……レオンは石を実際に使うことにはかなり慎重に見えた。
0
あなたにおすすめの小説
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
転生皇女セラフィナ
秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。
目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。
赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。
皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。
前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。
しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。
一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。
「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」
そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。
言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。
それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。
転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。
※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。
お飾り王妃のはずなのに、黒い魔法を使ったら溺愛されてます
りんりん
恋愛
特産物のないポプリ国で、唯一有名なのは魔法だ。
初代女王は、歴史に名を残すほどの魔法使い。
それから数千年、高い魔力を引き継いだ女王の子孫達がこの国をおさめてきた。
時はアンバー女王の時代。
アンバー女王の夫シュリ王婿は、他国の第八王子であった。
どこか影の薄い王婿は、三女ローズウッドを不義の子ではと疑っている。
なぜなら、ローズウッドだけが
自分と同じ金髪碧眼でなかったからだ。
ローズウッドの薄いピンク色の髪と瞳は宰相ククスにそっくりなのも、気にいらない。
アンバー女王の子供は四人で、すべて女の子だった。
なかでもローズウッドは、女王の悩みの種だ。
ローズウッドは、現在14才。
誰に似たのか、呑気で魔力も乏しい。
ある日ストーン国のレオ王から、ローズウッド王女を妻にしたいとうい申し出が届いた。
ポプリ国は、ストーン国から魔法石の原料になる石を輸入している。
その石はストーン国からしか採れない。
そんな関係にある国の申し出を、断ることはできなかった。
しかし、レオ王に愛人がいるという噂を気にしたアンバー女王は悩む。
しかし、ローズウッド王女は嫁ぐことにする。
そして。
異国で使い魔のブーニャンや、チューちゃんと暮らしているうちに、ローズウッドはレオ王にひかれていってしまう。
ある日、偶然ローズウッドは、レオ王に呪いがかけられていることを知る。
ローズウッドは、王にかけられた呪いをとこうと行動をおこすのだった。
婚活に失敗したら第四王子の家庭教師になりました
春浦ディスコ
恋愛
王立学院に勤めていた二十五歳の子爵令嬢のマーサは婚活のために辞職するが、中々相手が見つからない。そんなときに王城から家庭教師の依頼が来て……。見目麗しの第四王子シルヴァンに家庭教師のマーサが陥落されるお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる