木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第8章 波乱と因縁の建国祭

第484話 それでも俺は助けたい!

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「ステイン!」


 エドガスの相棒であり、今はカミルの愛馬であるステイン。

 好奇心旺盛でありながらも、常にカミルの近くにいた彼の満身創痍で走ってくる姿に、メストは嫌な胸騒ぎがした。

 (森を走っていても必ずカミルのもとに戻ってくるステインが、どうしてここにいるんだ? それもボロボロの姿で)

 駆け寄ってきたメストに気づいた瞬間、安堵したステインがゆっくりと走る速度を緩めるとその場で倒れた。


「ステイン!」


 ステインの隣に慌ててしゃがみ込んだ駆け寄ったメストが、ステインの容体を確認する。

 (良かった、まだ息はある。だが……)

 傷だらけのステインを見て、メストが悔しそうに下唇を噛んだ時、フェビル達が駆け寄ってきた。


「メスト、その馬は?」
「カミルの愛馬、ステインです」
「ステ、イン……」


 その名を聞いた瞬間、リュシアンとロスペル、そしてレクシャが顔を見合わせる。


「リュシアン兄さん、もしかして……」
「あぁ、間違いないだろう」
「?」


 (この2人、ステインのことを知っているのか?)


「父上」
「あぁ、助けてやりなさい」
「分かりました」


 そう言って、メストの隣に座ったロスペルは、改めてステインの容態を確認すると、腰に携えたマジックバックからアミュレット型の魔道具を取り出し、そのままステインの方に翳す。


「《ハイヒール》」


 ロスペルが中級の回復魔法をかけると、ステインの体に刻まれた無数の傷が治り、虫の息だったステインの呼吸が落ち着いたものに変わった。


「これ大丈夫です」
「あ、ありがとうございます!」
「いえ、礼には及びません……って、ステイン。くすぐったいですよ」


 ゆっくりと目を開けたステインが、ロスペルを見るな否や、ゆっくりとロスペルに顔を寄せ、甘えるように彼の頬をさすった。

 (良かった、元気になってくれて)

 いつものステインに戻り、内心安堵したメストは、真剣な表情でステインに問い質す。


「ステイン、どうした? カミルは一体どこに行った?」


 その瞬間、メストとシトリン以外の全員人達の顔が強張る。
 それに全く気づていないメストに、ロスペルから離れたステインが少しだけ悲しそうに項垂れると、コロッセオのある方に向かって何度か首を振る。


「あの方角って、確かコロッセオが……っ!」


 その時、メストの脳裏にある情報が蘇る。

 (確か今、コロッセオでは貴族を喜ばせる余興を行われているはず。最初に聞いた時は心底呆れたが、まさか……)


「まさか、コロッセオの余興にカミルが関わっているのか? そしてそれを伝えるために、背中に乗っている魔道具を使って俺のところに来たのか?」


 ステインが小さく頷いた瞬間、険しい顔をしたメストが静かに立ち上がる。

 (貴族を喜ばせる余興に平民のカミルが関わっているということは、きっとろくなことではないはずだ)


「クソッ!」
「メスト?」


 小さく悪態をついたメストをシトリンが不安げに見つめた時、メストがステインの体を労うように優しく撫でる。


「ステイン。疲れているところ悪いが、俺をカミルのところに連れて行ってくれるないか?」


 それを聞いたフェビルが、静かにメストの肩を掴む。


「メスト、どこに行く気だ?」


 いつになく険しい顔をするフェビルに、振り返ったメストが鋭く睨みつける。


「今からカミルを助けに行ってきます」


 (やはり、そうなったか。だが……!)

 立ち上がったステインに跨ろうとするメストをフェビルが必死に押しとどめる。


「悪いが、それだけはダメだ!」
「っ!    どうしてですか!?」
「そんなことをしたら、お前の近衛騎士としての立場が無くなるからに決まっているからだろうが!」
「っ!」


 (騎士としての立場が、無くなる? 幼い頃から目指していたこの立場が)

 フェビルの言葉にたじろぐメスト。
 そんな彼を、フェビルは更に追い詰める。


「何より、あの騎士達と同じようになるかもしれないんだぞ!」
「っ!」


 (俺が、あいつらと同じになる!?)

 更にたじろぐメストに、フェビルはメストからステインから離すと彼の両肩を強く掴む。


「メスト、今のお前の任務は何だ?」
「……陛下の護衛です」
「ならば、近衛騎士としての務めを果たせ」
「そうですが……それでも!」


 (この立場が無くなったとしても、俺は……!)

 小さく下唇を噛んだメストは、フェビルの掴まれている手を強引に引き離すと離すと、ステインに跨った。


「それでも俺は、カミルを……大切な人を助けたいんです!!」
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