木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第8章 波乱と因縁の建国祭

第495話 俺と彼女の出会い①

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 ※メスト視点です。



 ――彼女を初めて知ったのは、友人の何気ない会話だった。


「は? 公爵令嬢が木剣を持って鍛錬をしている?」


 大昔、世界を巻き込んだ大戦で、剣一本で敵を蹴散らしたことから『王国の剣』という二つ名を王家から賜っているヴィルマン侯爵家。
 その由緒ある名家の跡取り息子として生まれた俺は、父のような強くて立派な領主になりたいと、幼い頃から勉強や剣の鍛錬、そして父と同じ氷属性の魔力を扱えるように励んでいた。

 そんな俺には、よく遊んでいた同い年の友人がいた。

 それが、リュシアン・サザランスとシトリン・ジャグロットだった。

 サザランス家とジャグロット家は、昔からヴィルマン侯爵家と仲が良かった。

 特にサザランス公爵家は王家から『王国の盾』という2つ名を賜っており、王家から2つ名を賜った家同士ということで、両家の交流が盛んにおこなわれていた。

 というより、単にリュシアンがよく俺の家に遊びに来ていただけなのだが。

 でも、彼の妹のことについてちゃんたて知ったのは俺が10歳の頃だった。

 いつもように屋敷に遊びに来たリュシアンが、何の気なしに話してくれたのだ。


「おうよ、お前とシトリンに随分前に話しただろ? サザランス公爵家に連なる人間の大半が使える固有魔法のこと」
「無効化魔法のことか?」
「そうだ」


 無効化魔法。それは遥か昔、ここから遥か東にある小さな島国の長が、我が身可愛さに造ったという、あらゆる魔法を無効化するという人智を超えた魔法のことである。

 その魔法がなぜか帝国に伝わり、その規格外さからその魔法が使える者達は『帝国の死神』と呼ばれて恐れられている。

 そして今から300年前、当時の宰相が改竄魔法を使った帝国を巻き込んだ戦争の終結後、帝国から出された条件の1つとして、無効化魔法が使える者を我が国の宰相として迎えたのだ。

 その者を迎えた当初は、『帝国の死神』という恐ろしい二つ名から敬遠されていたらしい。

 だが、王国に様々な貢献をしたお陰で『王国の盾』という2つ名を賜り、今では王国最強の一角を担う名家の魔法として受け入れられている。

 そんな話がなぜリュシアンがしだしたのかと考えた時、すぐにある結論に至った。


「もしかして、妹さんもお前と同じ無効化魔法が使えるのか?」
「そういうことだ」


 無効化魔法の最大の特徴。それは、魔力そのものに魔法が刻まれているということ。

 これにより、詠唱をしなくても魔法が使えるのだ。

 ただし、魔力に魔法が魔法が固定化されたことで、無効化魔法以外の魔法は使えない。

 加えて、魔力を流した途端、無効化魔法が自動的に発動するため、魔力を流す魔道具は使えない。

 また、無効化魔法を使う際は対価と必要になる。

 そのため、無効化魔法で戦う時は、必ず剣などの得物を使わなければならないのだ。


「それはまた、大変な人生を送ることになるんだな」


 宰相家に生まれたからといって、たった1つしか魔法が使えない貴族令嬢がこれから先、どのような人生を歩むかは想像に難くない。

 婚約者を探すのは、さぞかし大変なものになるだろう。

 彼女がこれから歩むだろう過酷な人生に、人知れず胸を痛めている俺とは対称的に、リュシアンはなぜか楽しそうに笑う。


「だろな。だけど俺は、あのお転婆娘なら喜んで剣を振って、大変な人生を笑って歩むと思うぞ」
「え?」
「というか、もう既に剣を振っているし」
「どういうことだ?」


 貴族令嬢が喜んで剣を振るう?

 一体どういうことだ?

 眉を顰める俺を見て、リュシアンがニヤリと笑った。


「そう言えば、妹に会ったことが無かったんだよな」
「そ、そうだな」
「それなら会ってみるか?」
「えっ?」


 俺が、親友の妹に会う?


「今度、領地で祭りがあるからそれに参加してくれ。そしたら紹介してやる」


 すると、いつの間にか俺の隣に来て、興味深そうに話を聞いていたシトリンが、楽しそうな顔をして会話に入ってきた。


「いいね。久しぶりにロスペル君にも会いたいし」
「おっ、それじゃあ決まりだな!」
「お、おい!   俺はまだ何も言って……」
「じゃあ、行かないのか?」
「……行く」
「よし、決まりだな!」


 こうして俺は、リュシアンに誘われてサザランス公爵領の祭りに参加することになった。

 そこで俺は、運命の出会いを果たすことになる。
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