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第8章 波乱と因縁の建国祭
第498話 俺と彼女の出会い④
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※メスト視点です。
王家主催のお茶会から数日後、俺は約束通り、王都にあるサザランス公爵邸の広大な庭で、銀髪の少女フリージア嬢と2人きりでお茶会をしていた。
「美味しいです! さすが、サザランス公爵家! 紅茶1つにしてもとても洗練されていますね!」
それにしても本当に美味しい。さすが、宰相家だ!
「あ、ありがとうございます……」
出された紅茶の美味しさに感動していた俺とは反対に、目の前にいたフリージア嬢はか細い声でお礼を言うと、なぜか顔を真っ赤にしながらもじもじして俯いていた。
どうしたのだろうか?
今の彼女は、祭りの日な木剣を持って威勢の良いことを言った人物とは思えないくらい大人しい。
すると、彼女の後ろに控えていた侍女が少女の傍に立つと、耳元で何かを囁いた。
すると、淡い緑色の瞳を見開いた彼女は、勢いよく顔を上げると勇気を振り絞って俺に話しかける。
「あ、あの! ヴィルマン侯爵令息様」
「何でしょうか? サザランス公爵令嬢様」
「ど、どうして、私とのお茶会を参加してくださったのでしょうか!」
その時、周りにいた使用人達の顔が一気に凍り付いた。
だが、目の前にいる少女は、俺に話しかけるのに精一杯で気づいていない。
大方、厳しい淑女教育で貴族令嬢としてのマナーは身につけているが、『自分を売り込む』という大事なことは頭に入っていなかったのだろう。
そんな少女のポンコツすぎる質問に、一瞬だけ驚いた俺は、目を潤ませている少女を安心させるように微笑みかけると、持っていたティーカップを静かに置いた。
「実は、君の1番上の兄上と私は友人なのです」
「『1番上の兄』ということは、リュシアン兄様のことでしょうか?」
「えぇ、そうです」
すると、少女が何かを思い出し、哀れんだ目で俺を見てきた。
「そう言えば、兄が領地に帰ってきた時、よくヴィルマン侯爵令息様のお話をされていたのを思い出しました」
「そうでしたか」
俺がリュシアンの親友だと言った途端に目の色が変わった。
どうやらあの親友は、妹にろくでもないことを吹き込んでいるのだろう。
よし、今度会った時に問い詰めてやる。
心の中でリュシアンを問い詰めることを決心した俺は、ふと随分前にリュシアンから聞いた話を思い出す。
「聞けば君は、剣の鍛錬をしているのですね」
「はい、護身術程度ではありますが」
「ほう、そうですか」
そう言うと、俺は両肘をテーブルにつけて両手を組んで顎を乗せた。
「私が見かけた時、大勢の子息相手に剣を振りまわしていましたが?」
「うぐっ!……まさか、見られたのですか?」
顔を引き攣らせる少女に、笑みを深めた俺は静かに頷く。
「はい。実は、君のお兄さんに招かれて、サザランス公爵領の祭りに来ていたので、その時にお見かけしました」
「っ!!」
俺の話を聞いて顔を真っ青にしながら驚いている顔をしている辺り、あの悪友はあの時のことを妹に話していないらしい。
本当、妹に俺たちのことは何と話しているのだろうか。
すると、椅子から立ち上がった少女が慌てたように言い訳をし始めた。
「あ、あれは! うちの領内で悪さをするバカ貴族から使用人達を守ろうとしただけで、そ、その……」
「うん、分かっている。君は守りたいものを守った、それだけだよな?」
「……はい」
肩を落としながら椅子に座る彼女。
恐らく、あの場面は彼女にとって1番見られたく無かった場面だったのだろう。
だが、俺はあの場面を見たからこうして君とのお茶会に参加した。
すると、暗い顔をした少女が俯きながら問いかけてきた。
「……呆れましたか?」
『こんな規格外な私を』
肩を震わせながら必死に涙を堪えている少女の心の声が聞こえた瞬間、俺はこの少女が抱えているものの重さをようやく思い知った。
幼い頃から宰相家の令嬢として厳しい淑女教育を受けたであろう彼女は、幼いながらも宰相家の令嬢としての自覚はあるのだろう。
けれど、まともに魔法が使えず、剣を振って誰かを守る令嬢なんて、普通に考えれば野蛮な令嬢でしかない。
それを彼女は理解している。
……いや、この前のお茶会でそれを思い知ったのだろう。
これから飛び込む社交界で、自分はどんな目で見られるのか。
そして、自分がいかに貴族令嬢として規格外であるかを。
だから、俺に聞いたんだ。
『貴族令嬢として規格外な自分に呆れたのか?』と。
そう考えると、何だかそこら辺の有象無象と一緒にされたみたいで、無性に腹立たしくなった。
俺は、そんな有象無象の奴らとは違うのに!
怒りで我を忘れそうになるのを堪え、小さく息を吐いた俺は彼女を見て真っ直ぐ本心を伝える。
「いいえ」
「っ!」
顔を上げた少女の泣きそうな顔に、胸が張り裂けそうになった俺は、少女を安心させるように精一杯微笑んだ。
「私は……いや、俺は守りたいものを自らの手で守っているあなたをとても好ましいと思った。何だったら、一手お相手したいとも考えた」
「……本当、ですか?」
「あぁ、本当だ」
誰よりも気高く高潔で美しい君を好ましいと思った。
だから、あなたと話したいと思った。
あなたとの距離を縮めたいと思った。
そして、高潔なあなたの騎士として、あなたの隣に立ち、あなたを守りたいと決意した。
王家主催のお茶会から数日後、俺は約束通り、王都にあるサザランス公爵邸の広大な庭で、銀髪の少女フリージア嬢と2人きりでお茶会をしていた。
「美味しいです! さすが、サザランス公爵家! 紅茶1つにしてもとても洗練されていますね!」
それにしても本当に美味しい。さすが、宰相家だ!
「あ、ありがとうございます……」
出された紅茶の美味しさに感動していた俺とは反対に、目の前にいたフリージア嬢はか細い声でお礼を言うと、なぜか顔を真っ赤にしながらもじもじして俯いていた。
どうしたのだろうか?
今の彼女は、祭りの日な木剣を持って威勢の良いことを言った人物とは思えないくらい大人しい。
すると、彼女の後ろに控えていた侍女が少女の傍に立つと、耳元で何かを囁いた。
すると、淡い緑色の瞳を見開いた彼女は、勢いよく顔を上げると勇気を振り絞って俺に話しかける。
「あ、あの! ヴィルマン侯爵令息様」
「何でしょうか? サザランス公爵令嬢様」
「ど、どうして、私とのお茶会を参加してくださったのでしょうか!」
その時、周りにいた使用人達の顔が一気に凍り付いた。
だが、目の前にいる少女は、俺に話しかけるのに精一杯で気づいていない。
大方、厳しい淑女教育で貴族令嬢としてのマナーは身につけているが、『自分を売り込む』という大事なことは頭に入っていなかったのだろう。
そんな少女のポンコツすぎる質問に、一瞬だけ驚いた俺は、目を潤ませている少女を安心させるように微笑みかけると、持っていたティーカップを静かに置いた。
「実は、君の1番上の兄上と私は友人なのです」
「『1番上の兄』ということは、リュシアン兄様のことでしょうか?」
「えぇ、そうです」
すると、少女が何かを思い出し、哀れんだ目で俺を見てきた。
「そう言えば、兄が領地に帰ってきた時、よくヴィルマン侯爵令息様のお話をされていたのを思い出しました」
「そうでしたか」
俺がリュシアンの親友だと言った途端に目の色が変わった。
どうやらあの親友は、妹にろくでもないことを吹き込んでいるのだろう。
よし、今度会った時に問い詰めてやる。
心の中でリュシアンを問い詰めることを決心した俺は、ふと随分前にリュシアンから聞いた話を思い出す。
「聞けば君は、剣の鍛錬をしているのですね」
「はい、護身術程度ではありますが」
「ほう、そうですか」
そう言うと、俺は両肘をテーブルにつけて両手を組んで顎を乗せた。
「私が見かけた時、大勢の子息相手に剣を振りまわしていましたが?」
「うぐっ!……まさか、見られたのですか?」
顔を引き攣らせる少女に、笑みを深めた俺は静かに頷く。
「はい。実は、君のお兄さんに招かれて、サザランス公爵領の祭りに来ていたので、その時にお見かけしました」
「っ!!」
俺の話を聞いて顔を真っ青にしながら驚いている顔をしている辺り、あの悪友はあの時のことを妹に話していないらしい。
本当、妹に俺たちのことは何と話しているのだろうか。
すると、椅子から立ち上がった少女が慌てたように言い訳をし始めた。
「あ、あれは! うちの領内で悪さをするバカ貴族から使用人達を守ろうとしただけで、そ、その……」
「うん、分かっている。君は守りたいものを守った、それだけだよな?」
「……はい」
肩を落としながら椅子に座る彼女。
恐らく、あの場面は彼女にとって1番見られたく無かった場面だったのだろう。
だが、俺はあの場面を見たからこうして君とのお茶会に参加した。
すると、暗い顔をした少女が俯きながら問いかけてきた。
「……呆れましたか?」
『こんな規格外な私を』
肩を震わせながら必死に涙を堪えている少女の心の声が聞こえた瞬間、俺はこの少女が抱えているものの重さをようやく思い知った。
幼い頃から宰相家の令嬢として厳しい淑女教育を受けたであろう彼女は、幼いながらも宰相家の令嬢としての自覚はあるのだろう。
けれど、まともに魔法が使えず、剣を振って誰かを守る令嬢なんて、普通に考えれば野蛮な令嬢でしかない。
それを彼女は理解している。
……いや、この前のお茶会でそれを思い知ったのだろう。
これから飛び込む社交界で、自分はどんな目で見られるのか。
そして、自分がいかに貴族令嬢として規格外であるかを。
だから、俺に聞いたんだ。
『貴族令嬢として規格外な自分に呆れたのか?』と。
そう考えると、何だかそこら辺の有象無象と一緒にされたみたいで、無性に腹立たしくなった。
俺は、そんな有象無象の奴らとは違うのに!
怒りで我を忘れそうになるのを堪え、小さく息を吐いた俺は彼女を見て真っ直ぐ本心を伝える。
「いいえ」
「っ!」
顔を上げた少女の泣きそうな顔に、胸が張り裂けそうになった俺は、少女を安心させるように精一杯微笑んだ。
「私は……いや、俺は守りたいものを自らの手で守っているあなたをとても好ましいと思った。何だったら、一手お相手したいとも考えた」
「……本当、ですか?」
「あぁ、本当だ」
誰よりも気高く高潔で美しい君を好ましいと思った。
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