木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第8章 波乱と因縁の建国祭

第504話 彼と彼女はようやく再会する

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 ――そして時は、メスト達がコロッセオに突入した現在に移る。



「《アイスアロー》!!」


 メストの容赦の無い氷属性魔法攻撃で、アリーナに繋がる広々とした通路が冷えきる。

 そんな中、突如、通路に甲高い女性の悲鳴が響く。


「あああああああああああっ――――――!!」
「「「「っ!!!」」」」


 聞き覚えのある女性の悲痛な声に、国王とジルベール以外の顔が一気に険しいものに変わる。


「ねぇあなた、今のって……」
「あぁ、間違いない。フリージアの声だ」


 合流したティアーヌがといかけると、苦い顔をしたレクシャが小さく首を縦に振る。

 その時、攻撃を止めたメストが駆け出す。


「メスト!!」


 (フリージア!)


『メスト様!』

 笑顔で振り向くフリージアの姿が、メストの脳裏をよぎり、引き止めようとしたシトリンの声が届かない。

 それを見たリュシアンが苦々しく呟く。


「メストの奴、やっぱり、フリージアの声だと言った瞬間、矢のように駆け出したな」


 すると、列の真ん中にいたカトレアとラピスが前に出た。


「でしたら、私たちも後を追わないといけないですね」
「そうだね」


 そう言って、後ろにいるレクシャとアイコンタクトを交わしたシトリン達は、ジルベールと国王の護衛をサザランス公爵とヴィルマン侯爵に託すと、周囲を警戒しながらメストの後を追うように駆け出す。

 一方、シトリン達を置いていって1人駆け出したメストは、嫌な胸騒ぎに苛まれつつ、襲いくる騎士達を片っ端から氷漬けにしていく。

 そんな彼の不安を煽るように、前方から聞こえてくる会話が鮮明に彼の耳に届く。


「ギャハハハハハッ! ほらほら、生きたかったら俺に命乞いしろよ! と言っても、助けてやらねぇし、すぐに殺すが! ギャハハハハハッ!!」
「っ!!」


 (殺す、奴は絶対に殺す!!)

 ノルベルトが愉しそうに嗤う声で、フリージアを嬉々として甚振ってるのが容易に想像出来たメストの殺意が更に増す。

 すると、ノルベルトの苛立った声が聞こえた


「どうした、何が可笑しい!」
「だ、誰が」
「は?」


 フリージアのか細い声が、愉悦の笑みを浮かべているであろうノルベルトを挑発する。


「誰が、あんたなんかに命乞いなんてするものですか!」
「っ!!」


 満身創痍のフリージアの声が、怒りで我を忘れそうになったメストを冷静にさせ、強ばっていた彼の表情を僅かに緩ませる。

 (フリージア、どんな状況でも君は君のままなんだな。俺は、そんな君を……)



「なんだと、このクソアマが――!!」
「うぐっ!」
「お前! 自分の立場を分かって言っているか!」
「うっ!!」
「今のこの国で偉いのは俺だ!」
「ぐはっ!」
「その俺を侮辱するなんて、本当に命が惜しくないようだな!!」
「ガハッ!!」
「くっ!!」


 (ノルベルト、貴様だけは絶対に生かさない!! フリージアを貴様だけは!!)


「はぁ、はぁ、はぁ……」
「っ!!」


 (フリージア!!)

 徐々に大きくなっていくノルベルトの罵声とフリージアの苦しそうな声に、不安に駆り立てられたメストは、走る速度を更に上げ、襲い掛かってくる騎士達を蹴り倒していく。

 すると、ノルベルトの調子に乗った声と共に、コロッセオの様子が見えてきた。


「お~、『帝国の死神』と呼ばれた平民貴族が、こうも呆気ないと倒されるとは」
「ノル、ベルト……」
「っ!」


 (フリージア!!)

 メストの視界に、おぼろげではあるが剣を杖替わりに立っているフリージアの後ろ姿が映る。


「フン、やはり倒れないか。だが、そろそろ限界のようだな」
「そ、そんなことありません」


 立っているのもやっとのフリージアの声が、更にか細くなる。


「ハッ、何を強がっている?」
「別に、強がってなんていません」


 けれど、ノルベルトに対して命乞いをする様子は無い。

 むしろ、戦おうと殺気を放ちながら剣を構えた。


「可愛くねぇ女だな。なら仕方ねぇ、これでとどめだ!」
「やれる、ものなら、やって、みなさい!!」
「っ!!」


『あんた達、それでも貴族令息なの!?』


 メストの脳裏に蘇った、複数の令息相手に勇敢に立ち向かった幼い彼女の姿。


「……ジア」


 その少女の姿が、見覚えのある木こりの恰好をした彼女と重なる。


「それなら、死ねぇ―――――!!」


 怒りの形相のノルベルトが、ボロボロの彼女に大剣を振り下ろす。

 それを見たメストは、咄嗟に手を伸ばすとありったけの魔力と共に大声で詠唱する。


「《アイスショット》!!」


 (届け! 高潔で優しい君を害する奴に!)


「ぐはっ!!」
「えっ?」


 メストの放った氷の塊に直撃したノルベルトは、情けない声が吐きながら吹き飛ばされた。

 そして、突然のことに驚いた彼女は、片手剣を落とすと、ふらりと体を揺らして後ろに倒れ込もうとした。

 (危ない!!)


「フリージア!!」
「っ!」


 彼女の名前を呼んだメストは、ふらついた彼女の華奢な体を抱き留めた。
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