木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第8章 波乱と因縁の建国祭

第512話 団長と副団長

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「リュシアン君、大丈夫か!」
「フェビル騎士団長」


 大剣を構えて砂埃を睨みつけながら、フェビルは背後でシトリンとラピスにリュシアンに声をかける。


「すまない、君の父上から報告を受けていたはずなのに、油断してしまい助けるのが遅れてしまった」


 悔しがるフェビルに、笑みを潜めたリュシアンが小さく首を横に振る。


「いえ、俺もノルベルトに気を取られすぎて油断していました。そのせいで……うっ!」
「リュシアン!」
「リュシアン様!」


 痛みで顔を歪めるリュシアンに2人の騎士が声をかけた時、顔を真っ青にしたカトレアが空から降りてきた。


「ラピス! シトリン様!」
「カトレア!」
「カトレア嬢!」


 空から降りてきて早々、リュシアンのもとに駆け寄ったカトレアは、ボロボロのリュシアンの怪我の状態を確認すると、マジックバックからポーションを取り出し、そのままリュシアンの全身に振りかける。

 すると、リュシアンが負った傷が瞬く間に塞がった。


「助かった。ありがとう、カトレア嬢」
「いえ、このくらい、大したことはありません」


 笑ってお礼を言うリュシアンに、カトレアが気まずそうに目を伏せると、一安心したラピスがリュシアンを問い質す。


「リュシアン様。一体、何があったのですか」
「それが……」


 その時、砂塵の向こう側から短剣を構えた黒い外套を身に纏った男が飛び出し、小さく笑みを浮かべたフェビルと鍔迫り合いになる。


「「団長!!」」


 突如始まった戦闘に、シトリンとラピスが慌てて立ち上がろうとする。

 それを見たフェビルが2人に命令する。


「大丈夫だ!   それよりも、お前達はリュシアン君とカトレア嬢を連れて陛下のもと行き、守りを固めろ!」
「しかし、団長……!」


 団長の命令に異を唱えるシトリン。

 そんな彼に、笑みを深めたフェビルは視線を前に戻す。


「『一匹狼』の頃に戻った今のアイツの相手が出来るのは俺だけだ。だから、お前達は行け!」
「っ!!」
「それは、どういう……」


 何かに気づいて目を見開くラピスを他所に、シトリンは眉を顰めると、鍔迫り合いになっているフェビルが笑みを浮かべながら挑発する。


「おいおい、俺に代わってお前には騎士団本部で全体指揮を任せんたんだが……なんだよ、本当は暴れ回りたかったのかよ。だったら、最初からそう言えよ。そしたら、考えてやったのに……なぁ、グレア?」
「「っ!!」」


 フェビルの言葉に、驚いたシトリンが黒い外套を身に纏っている男を見る。
 そこには、短剣を逆手に持ってフェビルと対峙しているグレアがいた。


「どうして、グレア副団長が?」


 (責任感が強く、フェビル団長に対して誰よりも忠誠を誓っている副団長がどうして?)

 グレアがフェビルに代わって騎士団本部で、建国祭の警備の全体指揮を執ることは、シトリンやラピスはもちろん知っていた。

 だから、王都にいるグレアがなぜ遠く離れたコロッセオにいて、最も信頼しているフェビルに剣を向けているのか、事情を知らない今のシトリンには理解出来なかった。

 すると、どこからともなく風の矢がリュシアンに向かって一直線に飛んできた。


「危ない!」


 矢に気づいたカトレアが慌てて杖を構えようする。

 その時、上空でとある人物を探していたロスペルがカトレア達の前に現れ、銀色の杖を構えると無詠唱で風の矢を放ち、飛んできた風の矢を打ち消した。


「師匠!」
「すみません、あの方を探していたのですが中々見つからず」


 そう言うと、ロスペルはリュシアンを一瞥する。

 (良かった、兄さんの怪我が治って)

 内心安堵したロスペルは、視線を前に戻す。


「カトレア嬢、兄さんに治癒を施していただきありがとうございます」
「あ、いえ!    これくらい、師匠の弟子として当然のことです!」
「フフッ、そうですか」


 (さすが、我が弟子……いや、妹の親友と呼ぶべきだろう)

 カトレアの返事に笑みを零したロスペルは、静かに笑みを潜めると静かに殺気を纏って杖を構え直す。

 すると、何も無い場所から突然、使い込まれた杖を持つ黒い外套を纏った男が現れた。


「っ!!」
「……やはり、あなたでしたか」


 男が持つ杖を見て、言葉を失うカトレア。
 対して、銀色の杖を強く握りしめたロスペルは、周囲を凍てつかせるような殺気を放つと、冷気を纏った声で男に話しかける。


「ご無沙汰しております、ルベル団長。しばらく見ないうちに、ノルベルトの傀儡になっていたんですね?」


 (本当は、あなたには当初の作戦通り、宮廷魔法師団本部で、宮廷魔法師達を指揮して欲しかった)


「ルベル団長に、グレア副団長。一体どうして……?」


 突如現れた宮廷魔術師団長と王国騎士団副団長に、戸惑いが隠せないシトリン。

 そんな彼を一瞥したフェビルは、険しい顔をしながら答えた。


「それはもちろん、俺たちの目の前にいるこいつらも、そこでへばっている奴らと同じだからに決まっている」
「っ!!」


 フェビルの言葉で、ようやくシトリンは2人がノルベルトの傀儡だと理解する。


「そ、そんな……」


 (ルベル団長やグレア副団長がノルベルトの傀儡になるなんて)

 唖然とするシトリンを見て、小さくため息をついたフェビルは視線を前に戻して剣を構え直す。


「全く、こうならないように王都に置いてきてやったのに」
「同感です」


 フェビルの嫌味を聞いたノルベルトが愉悦に満ちた嗤い声をあげる。


「ギャハハハハハ! それは残念だったな!    フェビル・シュタールにロスペル・サザランスよ!」


 勝ち誇った顔でロスペルとフェビルを見たノルベルトは、少し離れているグレアとルベルに黒い魔力を注ぐ。

 すると、2人はロスペル達のもとを離れると、そのままノルベルトの背後に控えた。
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