木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第8章 波乱と因縁の建国祭

第514話 範囲干渉!!

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「っ!!……カトレア、あれって……!!」
「っ!? 嘘、でしょ?」


 (どうして!?)

 アリーナの出入口に視線を移し、何かを見つけたラピスに声をかけられ、ラピスにつられるように視線を移したカトレアが言葉を失う。

 そんな2人に気づいたシトリンが2人に話しかけながら、アリーナ出入口に視線を移す。


「どうしたの、2人とも……えっ、ちょっと待って、あれって」
「ダリア・インベック嬢、ですね」


 険しい顔をしたロスペルがノルベルトから視線を移した先には、ボロボロにドレスに身を包んだ醜い姿のダリアが悠然と立っていた。

 (そんな、ここに来た時は出入口で倒れていたはずなのに!)

 その瞬間、何かに気づいたカトレアがノルベルトを睨みつける。


「まさか……!」
「ギャハハハハハ!!! そのまさかだ!」
「っ!」


 驚いたカトレアは視線をダリアに戻すと、ダリアの真っ赤な瞳にはハイライトが無くなっていた。

 つまり、ダリアもまた、ノルベルトの傀儡になってしまったのだ。

 (なんて、ことを……!)

 怒りで顔を歪めたカトレアは、ノルベルトに向かって声を荒げる。


「あなた、実の娘も傀儡にするなんて最低だとは思わないの!?」



 カトレアの怒号に、ノルベルトは不機嫌そうに鼻を鳴らす。


「フン、そいつは遅かれ早かれ俺の駒になっていた。だから、最低なんて思わん」
「あなたって人は……!」
「そもそも、使えない奴など、俺の家族ではない!」
「っ!」


 (本当、救いようのないクズね!)

 親として最低な発言をするノルベルトに、カトレアが不快そうに眉を顰めた時、ダリアを見て嬉々とした表情を浮かべたノルベルトがダリアに命令する。


「ダリア! こいつらを灰燼に帰せ!」


 ノルベルトからの命令に、小さく頷いたダリアがカトレア達に向かって手を翳す。
 すると、カトレア達の足元に巨大な赤い魔法陣が現れた。


「これって……!」
「火属性の上級魔法!?」


 (貴族なら誰でも使える中級魔法しか使えないダリアが、魔法を極めている者しか使えない上級魔法が使えるはずがない! だとしたら……)


「ギャハハハハッ!! さぁ、やっちまえ!! ダリア!!」


 魔法の鍛錬をまともにしていない人が、何の鍛錬もせずいきなり実力以上の魔法を使った場合、魔力の枯渇や実力不足によりその魔法が暴走し、最悪の場合、術者やその周りにいた人達を死に至らしめる場合がある。

 これは、魔法を使う者なら誰でも知っている常識であり、ロスペルから口酸っぱく言われていたことだった。

 だからこそ、自分の傀儡になったダリアに実力以上の魔法を出させるノルベルトが、カトレアは心底許せなかった。

 そんな彼女が愉しそうに嗤うノルベルトを憎たらしく思ったその時、ラピスに支えられているリュシアンが大剣を地面に突き刺す。


「リュシアン様!」
「大丈夫だ。この程度の魔法、俺の魔法でどうにかしてやる」


 そう言って、力なく笑ったリュシアンは、大剣を通して透明な魔力を地面に流し込んで唱える。


「《範囲干渉》!」


 リュシアンが無効化魔法を発動した瞬間、足元に現れた赤い魔法陣が打ち消される。
 その直後、ふらついたリュシアンの手が大剣から離れた。


「リュシアン様!」
「だ、大丈夫だ。それよりも……っ!」


 体勢を立て直し、リュシアンが大剣を握り直した瞬間、赤い魔法陣がリュシアンの足元に現れる。


「っ!……カトレア嬢!」
「はい、師匠!!」


 (魔法が発動される前に術者の気を逸らすことが出来れば、魔法を強制的に無効化することが出来る!)

 ロスペルから教わったことを思い出したカトレアは、すぐさま杖をダリアに向けると、杖先に青い魔法陣を展開して詠唱しようとした。

 その時、ノルベルトがカトレアに向かって手を翳す。


「そうはさせねぇよ!」



 ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべたノルベルトが、カトレアに向かって黒い魔力を放つ。

 その瞬間、カトレアの手首に黒い縄が巻かれ、魔法を発動させないとばかりにカトレアの細い手首を縛り上げた。


「うぐっ!」
「カトレア!」


 痛みで顔を歪めるカトレアに、ラピスは駆け寄ろうとするが、ボロボロのリュシアンを置いていくことが出来ず、悔しそうに下唇を噛む。

 すると、カトレアを縛っている黒い縄を見たロスペルの目が大きく見開く。


「もしかして、《バインド》!?」


 (でも、無詠唱で非属性魔法を唱えるなんて無理のはず!)

 その時、ノルベルトの傀儡になったダリアが小さく唱える。


「《ファイヤーボルケーノ》」


 すると、リュシアン達の足元から炎の竜巻が現れ、リュシアン達を竜巻の中に閉じ込めた。


「しまった! 無詠唱魔法に気を取られている隙に……!」
「ギャハハハハハ!! 纏めて火の海に飲まれちまえ!」
「くっ!」


 (一先ず、僕の水属性の上級魔法で打ち消して……でも、間髪入れずに上級魔法を撃たれでもしたら……!)

 その時、遠くから女性の声が聞こえた。


「《範囲干渉》!!」


 か細くも力強い声で無効化魔法が唱えられた瞬間、リュシアン達を囲っていた竜巻が一瞬にしてなくなった。


「この声にこの魔力、もしかして……!」


 バインドが解かれたカトレアは、声が聞こえた方を見る。

 そして、無効化魔法を放った人物の名前を呼んだ。


「フリージア!!」


 満面の笑みを浮かべたカトレアの視線を向けた先には、メストに支えられながらレイピアを地面に突き刺すフリージアがいた。
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