木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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最終章 木こりと騎士は……

第544話 ノルベルト・インベック②

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※ノルベルト視点です。



「……それで、学園を卒業してカルミアと結婚した後、父上の側近として働きつつ、次期伯爵としてタウンハウスで領地経営をしろと?」
「そういうことだ」


 学園卒業を間近に控えたある日、親父に呼び出された俺は、親父から自分の側近として働きつつ、領地経営に携われと命じられた。


「改竄魔法が使えるお前を私の目の届かないところに置かせるわけにはいかないからな」
「っ!」


 また、改竄魔法か!     どいつもこいつも!


「それに、領地の実務はお前より遥かに有能な執事に任せているから、お前は執事から上がってきた報告書に目を通して判を押すだけでいい」
「それ、だけですか?」
「あぁ、それだけでいい。まともに勉強していない今のお前では、領地経営など任せられない」
「くっ!」
「全く、次期伯爵の自覚があるのか?」


 心底溜息をつく親父の愚痴に、俺はただ拳を握って耐えるしか出来なかった。

 なにせ、学園に入ってから、俺は勉強をそこそこに、学園にいる奴らを実験台として改竄魔法の練習をしていたのだから。

 俺が改竄魔法を使えることは、学園では周知の事実。

 そのため、学園にいる間、俺が変な気を起こさないように監視役の騎士がついていた。

 とはいえ、『改竄魔法』という貴重な魔法を使いこなし、『世界征服』という野望を叶えたかった俺は、学園の奴らにバレず、尚且つ騎士の目を掻い潜り、手当り次第、改竄魔法を学園の奴らにかけていった。

 学園に通う前から屋敷の使用人共に何度か使ってみたが、魔力制御が上手くいかないせいで悉く失敗していた。

 だから、練習相手を増やし、魔法の精度を上げるしかなかった。

 その点において、学園は絶好の練習の場だった。

 最初は監視役の騎士に『今朝、今日の昼飯について話した』という至極どうでもいいことを改竄魔法で騎士の記憶に植え付けた。

 監視役の騎士は、かなり堅物で俺が話しかけても一切答えないし、俺に話しかけることは一切ない。

 だが、昼飯の時間になり、いつも通り食堂に行くと、騎士の方から『そう言えば今朝、昼食について話しましたね』と初めて話しかけてきたのだ。


「そうだな。確か、今日はステーキにするという話をしていたな」


 騎士の問いかけににこやかに答えた俺だったが、内心は喜びで打ち震えていた。

 初めて改竄魔法が成功したのだから。

(やっと、やっと改竄魔法が成功した!)

 それからというのも、俺は騎士にバレないように学園の奴らに改竄魔法をかけていき、少しずつではあるが 改竄魔法の精度を上げていった。

 その中で俺は、当時学園イチの美女であった男爵令嬢カルミアと出会い、彼女の圧倒的な美貌と『若返りの魔法』という闇魔法が使えるというところに惹かれ、何度も逢瀬を重ねた末、彼女と婚約した。

 これには、さすがの頑固おやじも受け入れてくれた。

 余程俺に婚約者が出来ないと思っていたのだろう。

 まぁ、学園で遠巻きにされていたから、俺に婚約者が出来ないと思われても仕方ないか。

 そんな過去を振り返った俺は、首を傾げる親父に小さく頷く。


「分かりました。このノルベルト、学園卒業後、カルミアと結婚してすぐ、父上の側近として働き、領地経営に携わります」


 すると、強ばっていた親父の表情が一気に緩む。


「お前が魔法のことで蔑まされていると執事から聞いた時は心配したが……まぁ、学園で色々学び、大人になったのだろう」


 子どもの成長を心から喜ぶ親父を、俺は内心バカにした。

(ギャハハハハッ! 誰が真面目に側近として働きながら、次期伯爵として領地経営なんてするかよ! バーーカ!!)

 その後、学園卒業直前に馴染みの闇商人から転移魔法の魔道具を買う。

 そして学園卒業後、カルミアと結婚した俺は言われた通り、親父の側近として働きつつ、次期伯爵としてタウンハウスで領地から届いた書類に目を通し判を押していった。

 その傍ら、俺は国王の側近として多忙である親父の目を盗み、転移魔法が付与された魔道具を使いインベック領に行っていた。

 親父から『絶対に行くな!』と言われていた領地に。


「よし、今日もインベック領の奴らを俺の駒にするぞ!」


(この国を俺の支配下に置く準備もしないといけねぇしな!)

 王都からかなり離れた、農業以外に目立った特色が無いクソ田舎で、俺は屋敷で働いている奴ら全員を駒にしたことを皮切りに、領民共を次々と俺の支配下に置いた。
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