木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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最終章 木こりと騎士は……

第554話 『王国の陰』として

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 ※ダリア視点です。



「私は、今のままでいい! 闇魔法を使える私たち達が、『王国の影』としてこの国を支えている今のままでいい! むしろ、パパとママとリアンお兄様と使用人のみんなと慎ましくも穏やかに暮らせる今がいいの!!」


 そう、今のままでいい。私は、『王国の陰』としてこの国で大好きな人達と穏やかに暮らせる今がいいの。


 ◇◇◇◇◇


 『王国の影』を賜っているインベック伯爵家の長女として生まれた私は、闇魔法使いを輩出している家柄とあって、魔力判定の時に『魅了魔法』という魔法が使えることが判明した。

 本格的な魔法の勉強が始まるまでは、私の中の『魅了魔法』の認識は『私だけが使える特別な魔法』だった。

 そのため、私は神様から授けられた特別な魔法が使える日を今か今かとワクワクしながら待っていた。

 けれど、本格的に魔法の勉強が始まった時、私は神様から授かった魔法が、人を傷つける闇魔法だと知って絶望した。

『この魔法が使えるようになったら、そしてそのことが家族や使用人以外の人達に知られたら、絶対嫌われてしまう!』

 そう思い、『魅了魔法』を使うことが怖くなった私は、もう1つの授かった魔法を極めようと、家庭教師に頼んで土属性の魔法に全力で取り組んだ。

 けど、普段は忙しくて中々会えないパパから、しきりに『闇魔法を使えるようになりなさい!』とうるさく言われるようになった。

 インベック家が代々、闇魔法使いを輩出している家だから、私もその家に生まれた闇魔法を使えるようにならないといけないのでしょう。

 パパは『これで新しい駒がまた1つ増える』なんて嬉しそうに言っていたけど……私は、この魔法で誰かを傷つけたくないし誰かに嫌われたくない。

 そんなある日、私は廊下で雑談をしていた使用人達から盗み聞きしてしまった。


『私が魅了魔法を使えることが貴族達の間で広まっていること』を。


 耳にした瞬間、目の前が真っ暗になった。

『私はもう、他の貴族と仲良くなる機会が無くなってしまったのだ』と。

 だったら、もういい。

 これからは、インベック家の者として闇魔法を極めて、何の躊躇いもなく闇魔法を使おう。

 その日を境に吹っ切れた私は、土属性の魔法から闇魔法を極めた。

 そしてママと一緒にとあるお茶会に出席した時、婚約者と仲睦まじくしている貴族令息を自分のものにしようと、初めて魅了魔法をかけようとした。

 狙っていた貴族令息は容姿端麗だったし、自分のものになれば、私を忌避な目で見ていた令嬢の悔しがる顔も見られるからと思った。

 その時、誰かが私の魔法を打ち消した。


「誰!? 私の魔法を打ち消したのは!」
「私よ」
「っ!?」


 そう言って、貴族令嬢の私に対して容赦の無いビンタをお見舞いしたのは、現宰相家であるサザランス公爵家の令嬢、フリージア・サザランスだった。


「あんた! 貴族令嬢相手に頬を叩くなんてはしたないと思わないの!?」


 勢いで倒れ込んだ私に対し、その令嬢は困ったように小首を傾げる。


「ごめんなさい。でも、婚約者がいると分かっていて、自分のものにしようと魅了魔法を使おうとしたあなたの方がはしたないと思うけど?」
「っ!?」


 バレた!

 そう思った私は、咄嗟にその令嬢から目を逸らす。

 すると、周囲にいた令息達から忌避な目を向けられ、令嬢達から嘲笑と共に罵りを浴びせられ、悔しさで下唇を噛む。

 決して、魅了魔法を使ったことがバレたことに対して悔しさを覚えたのではない。

 無効化魔法しか使えないこの女が、腹いせで私の魔法を打ち消し、私を笑い者にしたことが悔しさを覚えたのよ。

 『お転婆令嬢』なんて呼ばれているからどんな規格外の令嬢かと思ったけど……なによ、そこで嘲笑っている女たちと変わらないじゃない。

 胸の中でなぜか残念な気持ちが膨れ上がった時、険しい顔をした令嬢が『パン!』と大きく手を叩いてその場の鎮める。

 そして、そのまま私の前にしゃがみ込む。


「な、なによ?」
「あなたが魅了魔法を使えるせいで変な目で見られ、それに対して怒る気持ちは分かります。ですが、その怒りを晴らすために魔法でたくさんの人を傷つけるのはするのは間違っています! どうせ晴らすなら……悪い奴を魅了し、自らの罪を白状させるような、この国の平和のために使いなさい!!」
「っ!」


『あんたなんかに、私の気持ちなんて分かるわけが無いでしょうが!』

 そう罵倒しようとしたけど、宝石のような淡い緑色の瞳に深い悲しみと底知れぬ怒りが映り、私はただ口を噤むしかなかった。

 でも、その言葉をきっかけで私は魅了魔法を使うことを自ら禁じた。

 あの女に言われっぱなしでは性に合わないから。
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