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最終章 木こりと騎士は……
第555話 つかの間の優しい時間
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「私は、今のままでいい! 闇魔法を使える私たち達が、『王国の影』としてこの国を支えている今のままでいい! むしろ、パパとママとリアンお兄様と使用人のみんなと慎ましくも穏やかに暮らせる今がいいの!!」
「ダリア……」
涙を流しながら訴える娘を見て、ノルベルトは在りし日のことを思い出す。
◇◇◇◇◇
それは、ノルベルトが爵位を継ぐ約半年前のこと。
その日は、珍しく王宮での仕事は早く終わり、タウンハウスに帰ってきたノルベルトは、そそくさと領地に向かう準備をしていた。
「さて、今日は西側の奴らを駒にしよう。それから、随分前に駒にした奴らの様子を見て……」
(まぁ、俺が領地に行って領民を駒にしているなんて親父が知るわけが無いよな。そうじゃなきゃ、俺を早く帰すなんてしないだろうし)
下卑た笑みを浮かべながら準備を整え、意気揚々とタウンハウスを出た時、広大な庭の端でリアンとダリアが難しい顔をしながら両腕を伸ばし、その様子を妻のカルミアが優しく見守っているところが見えた。
(あの2人、ちゃんと俺の言う通り、闇魔法を使うための魔力を練る鍛錬をしているな)
「とはいえ、いつまでも魔力を練る鍛錬だけでは困る。ここは、俺自ら魔法を教えてやるか」
(1日でも早く、俺の有能な駒になってもらいためにも)
妻や子どもを手駒としか見ていないノルベルトは、笑みを浮かべながら家族のところに足を向ける。
その時、リアンの両手から黒い魔法陣が展開された。
「にいちゃま、すごいです!」
「リアン! あなた、すごいわ!」
「これが、闇魔法。僕の、もう1つの魔法」
初めて見た闇魔法の魔法陣に、驚いて言葉を失うリアン。
そんな息子の成長を目の当たりにしたノルベルトの足が止まる。
(ほう、さすが我が家の後継ぎだ。私に似て、非常に優秀だ。この調子だと、私の駒とて動ける日もそう遠くは無いな)
仕事と領地の行き来で忙しいノルベルトは、育児を全て妻に任せていたため、子ども達の様子を見に行くことを全くと言っていい程しなかった。
彼にとっては、優秀な駒が出来ればそれで十分だったから。
すると、集中力が切れたリアンの手から黒い魔法陣が瞬く間に消える。
「あっ」
「まぁまぁ、これから頑張ればいいだけよ」
「はい! 母上!」
カルミアに励まされ、優しく頭を撫でられたリアンは、照れくさそうに笑って頷く。
(フン、その程度で満足されては困るだけどな)
リアンを甘やかす妻に、ノルベルトが少々不快に思っていると、母に褒められて嬉しそうな兄を見たダリアが不機嫌そうに頬を膨らます。
「う~~!! わたしだって、まけませんからね~!」
「ダリア、頑張って!」
「ダリア、頑張るんだぞ」
母と兄からの声援に後押しされ、5歳になったばかりのダリアは、ギュッと目を瞑ると、唸り声を上げながら手を伸ばして魔力を練る。
(そうだ、お前もこの家の令嬢だ。リアンと同じくらい有能な駒でないと困る)
すると、ダリアの小さな手から黒い魔法陣が現れた。
「わ~~い!! できたできた!!」
「すごいわ、ダリア! さすが、私の娘だわ!」
「すごいな、ダリア! さすが、僕の妹だ!」
嬉しさのあまり、黒い魔法陣を展開しながらぴょんぴょんと無邪気に刎ねていると、ダリアの手から黒い魔法陣が消える。
「あっ」
初めて作れた黒い魔法陣が消え、目に見えて落ち込んだダリア。
そんな彼女を、カルミアとリアンが優しく抱きしめる。
「ダリア、あなたもリアンと同じ立派な闇魔法使いになれると思うから頑張りましょう」
「そうだぞ、ダリア。僕と一緒に頑張ろうな」
「うん、分かった!!」
大好きな2人に励まされ、満面の笑みを浮かべたダリアを見て、益々不快な気持ちになったノルベルト。
すると、彼の脳裏に幼い頃の記憶が蘇る。
『父さん。俺、闇魔法の魔法陣を出せるようになりました』
『おぉ、さすがノルベルトだな。だが、使い方は気を付けないといけないぞ』
『はい!』
(そう言えば、俺が初めて魔法陣を展開した時、親父は俺の頭を撫でてくれたな)
厳格な父から褒められたことを思い出し、フッと笑みを零したノルベルトは、リアンとダリアのもとに駆け寄ると、2人の頭を優しく撫でた。
「ダリア……」
涙を流しながら訴える娘を見て、ノルベルトは在りし日のことを思い出す。
◇◇◇◇◇
それは、ノルベルトが爵位を継ぐ約半年前のこと。
その日は、珍しく王宮での仕事は早く終わり、タウンハウスに帰ってきたノルベルトは、そそくさと領地に向かう準備をしていた。
「さて、今日は西側の奴らを駒にしよう。それから、随分前に駒にした奴らの様子を見て……」
(まぁ、俺が領地に行って領民を駒にしているなんて親父が知るわけが無いよな。そうじゃなきゃ、俺を早く帰すなんてしないだろうし)
下卑た笑みを浮かべながら準備を整え、意気揚々とタウンハウスを出た時、広大な庭の端でリアンとダリアが難しい顔をしながら両腕を伸ばし、その様子を妻のカルミアが優しく見守っているところが見えた。
(あの2人、ちゃんと俺の言う通り、闇魔法を使うための魔力を練る鍛錬をしているな)
「とはいえ、いつまでも魔力を練る鍛錬だけでは困る。ここは、俺自ら魔法を教えてやるか」
(1日でも早く、俺の有能な駒になってもらいためにも)
妻や子どもを手駒としか見ていないノルベルトは、笑みを浮かべながら家族のところに足を向ける。
その時、リアンの両手から黒い魔法陣が展開された。
「にいちゃま、すごいです!」
「リアン! あなた、すごいわ!」
「これが、闇魔法。僕の、もう1つの魔法」
初めて見た闇魔法の魔法陣に、驚いて言葉を失うリアン。
そんな息子の成長を目の当たりにしたノルベルトの足が止まる。
(ほう、さすが我が家の後継ぎだ。私に似て、非常に優秀だ。この調子だと、私の駒とて動ける日もそう遠くは無いな)
仕事と領地の行き来で忙しいノルベルトは、育児を全て妻に任せていたため、子ども達の様子を見に行くことを全くと言っていい程しなかった。
彼にとっては、優秀な駒が出来ればそれで十分だったから。
すると、集中力が切れたリアンの手から黒い魔法陣が瞬く間に消える。
「あっ」
「まぁまぁ、これから頑張ればいいだけよ」
「はい! 母上!」
カルミアに励まされ、優しく頭を撫でられたリアンは、照れくさそうに笑って頷く。
(フン、その程度で満足されては困るだけどな)
リアンを甘やかす妻に、ノルベルトが少々不快に思っていると、母に褒められて嬉しそうな兄を見たダリアが不機嫌そうに頬を膨らます。
「う~~!! わたしだって、まけませんからね~!」
「ダリア、頑張って!」
「ダリア、頑張るんだぞ」
母と兄からの声援に後押しされ、5歳になったばかりのダリアは、ギュッと目を瞑ると、唸り声を上げながら手を伸ばして魔力を練る。
(そうだ、お前もこの家の令嬢だ。リアンと同じくらい有能な駒でないと困る)
すると、ダリアの小さな手から黒い魔法陣が現れた。
「わ~~い!! できたできた!!」
「すごいわ、ダリア! さすが、私の娘だわ!」
「すごいな、ダリア! さすが、僕の妹だ!」
嬉しさのあまり、黒い魔法陣を展開しながらぴょんぴょんと無邪気に刎ねていると、ダリアの手から黒い魔法陣が消える。
「あっ」
初めて作れた黒い魔法陣が消え、目に見えて落ち込んだダリア。
そんな彼女を、カルミアとリアンが優しく抱きしめる。
「ダリア、あなたもリアンと同じ立派な闇魔法使いになれると思うから頑張りましょう」
「そうだぞ、ダリア。僕と一緒に頑張ろうな」
「うん、分かった!!」
大好きな2人に励まされ、満面の笑みを浮かべたダリアを見て、益々不快な気持ちになったノルベルト。
すると、彼の脳裏に幼い頃の記憶が蘇る。
『父さん。俺、闇魔法の魔法陣を出せるようになりました』
『おぉ、さすがノルベルトだな。だが、使い方は気を付けないといけないぞ』
『はい!』
(そう言えば、俺が初めて魔法陣を展開した時、親父は俺の頭を撫でてくれたな)
厳格な父から褒められたことを思い出し、フッと笑みを零したノルベルトは、リアンとダリアのもとに駆け寄ると、2人の頭を優しく撫でた。
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