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最終章 木こりと騎士は……
第564話 貴方様の幸せを願っています
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※フリージア視点です。
「う、ううっ……」
そっと目を開けると、そこは目が覚めるような純白な天井が広がっていた。
「あれっ? 私確か、コロッセオにいて……」
ノルベルトに追い詰められたところをメスト様に助けてもらって、その後にノルベルトが隠していた古の魔法陣を打ち消して、ダリア達をノルベルトのもとから離した後、お父様を見届けて、そして……7年越しの再会に喜んでいたはず。
ゆっくりと体を起こすと、どこまでも真っ白な光景が広がっていた。
「ここ、どこ? どう見てもコロッセオではない……」
「フリージアお嬢様」
「っ!?」
この声、まさか!
背後から聞き覚えのある声が聞こえ、慌てて立ち上がった私はそのまま振り返る。
そこには、見覚えのある燕尾服を身に纏った白髪の執事が、人の良さそうな笑みを浮かべて立っていた。
「エド、ガス?」
「はい、お久しぶりです。お嬢様」
「っ!」
エドガスは、家族と離れ離れになり、絶望に打ちひしがれていた私に平民としての生き方を叩き込み、サザランス公爵家の役目を思い出させてくれた人。
私にとって、命の恩人であり守るべき大切なものの1つだった。
そんな彼が柔和な笑みを浮かべて立っている姿に、不意に涙が溢れた私は駆け寄ろうとした。
けれど、エドガスが静かに手のひらを私に向けた瞬間、私の体が鉛のように動かなくなった。
「エドガス?」
「お嬢様、それ以上は来てはいけません」
「どうして? 私は、ずっと……ずっと、エドガスに会いたかったのに!」
あなたがいたから、あなたが私に色んなことを教えてくれたから、私は1人になっても平民として生きていけたし、離れ離れになった家族や友人、婚約者に再会出来たのよ!
全部全部あなたのお陰なのに、どうしてあなたのもとに行っちゃダメなの!?
エドガスのところに行きたくて、体を動かそうとしても重くて全く動かない。
行きたいのに、エドガスのところに行きたいのに!
「お嬢様、私もお嬢様に会いたかったです。ですから、わざわざこちらに来たのです」
「だったら……!」
「フリージアお嬢様」
ゆっくりと手を降ろしたエドガスは、柔らかい笑みを浮かべたまま右手を左胸に当てると深々と頭を下げる。
「この度、ご家族、ご友人、ご婚約者様との再会。誠におめでとうございます。このエドガス、遠くからではありますが、お嬢様の奮闘ぶりと再会を喜ぶ姿、しかと見届けさせていただきました」
「エドガス……」
エドガスの言葉に、私はもがくことを止めた。
目が覚めて、エドガスに会った時に分かっていたはず。
今いるこの場所が本来、私のいるべき場所でないくらい。
衰弱していたエドガスが、執事をしていた頃のような元気さがあるはずがないことくらい。
……エドガスがこの世にいないことくらい。
そっと、足元に視線を落とす。
今、私が立っているここが、恐らく私とエドガスが会える境界線。
これを超えてしまったら、私は多分、ここにいない大切な人達を悲しませてしまう。
それを分かっていたから、エドガスは私を止めたのね。
本当、どこまでも有能な執事だわ。
深々と頭を下げるエドガスに、笑みを零した私は静かに問い質す。
「あなたが亡くなる前、あなたが私に言ったこと覚えているかしら?」
「えぇ、もちろんです」
『お嬢様、今はとてもお辛いかと思います。ですが、安心してください。必ずあなたが失ったものは戻ってきます』
「私、あの時、あなたの言葉が信じられなかった。家族との約束があるはずに……失ったものが戻ってくるなんて本気で信じていなかったの」
家族と離れ離れになって、ノルベルトの魔法で様変わりした街や人の様子を見て、心のどこかで『このままずっと平民なのかもしれない』と思っていた。
家族との大切な約束があるはずなのに。
だからこそ、あの時のエドガスの言葉が信じられなかった。
すると、顔を上げたエドガスが小さく頷く。
「そうだと思います。ですから、私は……」
「『生きろ』って言ってくれたのよね?」
「おっしゃる通りでございます」
『ですから、どうか生きてください』
「あの時、あなたが『生きろ』って言ってくれたから、私はサザランス公爵家の人間としての役目を思い出して……失ったものを全て取り戻すことが出来たわ」
あなたが絶望していた私に言葉をかけてくれたから、態度や行動で私に生きる術を教えてくれたから、私は今日まで生きてこられた。
そうじゃなきゃ今頃、私はあなたと同じ場所にいたかもしれないわ。
ギュッと拳を握り締めた私は、あの時言えなかった……エドガスとの別れの時に言えなかった気持ちを伝える。
「ありがとう、エドガス。心の底から感謝しているわ」
あなたのお陰で、平民は令嬢を取り戻すことが出来たの。
すると、エドガスが満足げな笑みを浮かべる。
「いえ、私はただ、サザランス公爵家執事として……そして、あなたを大切に想う者の1人として当然のことをしただけです」
そう言って目を潤ませた彼が満足げに微笑んだ瞬間、凛とした彼の姿が徐々に消えていく。
「エドガス!」
また話したいことがたくさんあるのに!
消えていく彼を引き留めようと手を伸ばした時、エドガスがあの時と同じように優しく話しかけてきた。
「お嬢様。これから先、辛いことや苦しいことがたくさんあることでしょう。ですが、平民のために剣をとって悪徳騎士達に立ち向かったあなた様ならきっと乗り越えられます」
「エドガス!」
煙のように彼の姿が消えていくにつれて、私の意識が遠くなっていく。
「ですからどうか、お幸せになってくださいフリージアお嬢様……いや、次期ヴィルマン侯爵夫人殿」
遠のいていく意識の中で、最後まで笑みを絶やさなかった彼は最大の祝辞を私に送る。
そうして、再び目が覚めた時、そこには……
「フリージア!」
家族や友人と共に心配そうに顔を覗き込む婚約者がいた。
※最終回まで、あと7話!
「う、ううっ……」
そっと目を開けると、そこは目が覚めるような純白な天井が広がっていた。
「あれっ? 私確か、コロッセオにいて……」
ノルベルトに追い詰められたところをメスト様に助けてもらって、その後にノルベルトが隠していた古の魔法陣を打ち消して、ダリア達をノルベルトのもとから離した後、お父様を見届けて、そして……7年越しの再会に喜んでいたはず。
ゆっくりと体を起こすと、どこまでも真っ白な光景が広がっていた。
「ここ、どこ? どう見てもコロッセオではない……」
「フリージアお嬢様」
「っ!?」
この声、まさか!
背後から聞き覚えのある声が聞こえ、慌てて立ち上がった私はそのまま振り返る。
そこには、見覚えのある燕尾服を身に纏った白髪の執事が、人の良さそうな笑みを浮かべて立っていた。
「エド、ガス?」
「はい、お久しぶりです。お嬢様」
「っ!」
エドガスは、家族と離れ離れになり、絶望に打ちひしがれていた私に平民としての生き方を叩き込み、サザランス公爵家の役目を思い出させてくれた人。
私にとって、命の恩人であり守るべき大切なものの1つだった。
そんな彼が柔和な笑みを浮かべて立っている姿に、不意に涙が溢れた私は駆け寄ろうとした。
けれど、エドガスが静かに手のひらを私に向けた瞬間、私の体が鉛のように動かなくなった。
「エドガス?」
「お嬢様、それ以上は来てはいけません」
「どうして? 私は、ずっと……ずっと、エドガスに会いたかったのに!」
あなたがいたから、あなたが私に色んなことを教えてくれたから、私は1人になっても平民として生きていけたし、離れ離れになった家族や友人、婚約者に再会出来たのよ!
全部全部あなたのお陰なのに、どうしてあなたのもとに行っちゃダメなの!?
エドガスのところに行きたくて、体を動かそうとしても重くて全く動かない。
行きたいのに、エドガスのところに行きたいのに!
「お嬢様、私もお嬢様に会いたかったです。ですから、わざわざこちらに来たのです」
「だったら……!」
「フリージアお嬢様」
ゆっくりと手を降ろしたエドガスは、柔らかい笑みを浮かべたまま右手を左胸に当てると深々と頭を下げる。
「この度、ご家族、ご友人、ご婚約者様との再会。誠におめでとうございます。このエドガス、遠くからではありますが、お嬢様の奮闘ぶりと再会を喜ぶ姿、しかと見届けさせていただきました」
「エドガス……」
エドガスの言葉に、私はもがくことを止めた。
目が覚めて、エドガスに会った時に分かっていたはず。
今いるこの場所が本来、私のいるべき場所でないくらい。
衰弱していたエドガスが、執事をしていた頃のような元気さがあるはずがないことくらい。
……エドガスがこの世にいないことくらい。
そっと、足元に視線を落とす。
今、私が立っているここが、恐らく私とエドガスが会える境界線。
これを超えてしまったら、私は多分、ここにいない大切な人達を悲しませてしまう。
それを分かっていたから、エドガスは私を止めたのね。
本当、どこまでも有能な執事だわ。
深々と頭を下げるエドガスに、笑みを零した私は静かに問い質す。
「あなたが亡くなる前、あなたが私に言ったこと覚えているかしら?」
「えぇ、もちろんです」
『お嬢様、今はとてもお辛いかと思います。ですが、安心してください。必ずあなたが失ったものは戻ってきます』
「私、あの時、あなたの言葉が信じられなかった。家族との約束があるはずに……失ったものが戻ってくるなんて本気で信じていなかったの」
家族と離れ離れになって、ノルベルトの魔法で様変わりした街や人の様子を見て、心のどこかで『このままずっと平民なのかもしれない』と思っていた。
家族との大切な約束があるはずなのに。
だからこそ、あの時のエドガスの言葉が信じられなかった。
すると、顔を上げたエドガスが小さく頷く。
「そうだと思います。ですから、私は……」
「『生きろ』って言ってくれたのよね?」
「おっしゃる通りでございます」
『ですから、どうか生きてください』
「あの時、あなたが『生きろ』って言ってくれたから、私はサザランス公爵家の人間としての役目を思い出して……失ったものを全て取り戻すことが出来たわ」
あなたが絶望していた私に言葉をかけてくれたから、態度や行動で私に生きる術を教えてくれたから、私は今日まで生きてこられた。
そうじゃなきゃ今頃、私はあなたと同じ場所にいたかもしれないわ。
ギュッと拳を握り締めた私は、あの時言えなかった……エドガスとの別れの時に言えなかった気持ちを伝える。
「ありがとう、エドガス。心の底から感謝しているわ」
あなたのお陰で、平民は令嬢を取り戻すことが出来たの。
すると、エドガスが満足げな笑みを浮かべる。
「いえ、私はただ、サザランス公爵家執事として……そして、あなたを大切に想う者の1人として当然のことをしただけです」
そう言って目を潤ませた彼が満足げに微笑んだ瞬間、凛とした彼の姿が徐々に消えていく。
「エドガス!」
また話したいことがたくさんあるのに!
消えていく彼を引き留めようと手を伸ばした時、エドガスがあの時と同じように優しく話しかけてきた。
「お嬢様。これから先、辛いことや苦しいことがたくさんあることでしょう。ですが、平民のために剣をとって悪徳騎士達に立ち向かったあなた様ならきっと乗り越えられます」
「エドガス!」
煙のように彼の姿が消えていくにつれて、私の意識が遠くなっていく。
「ですからどうか、お幸せになってくださいフリージアお嬢様……いや、次期ヴィルマン侯爵夫人殿」
遠のいていく意識の中で、最後まで笑みを絶やさなかった彼は最大の祝辞を私に送る。
そうして、再び目が覚めた時、そこには……
「フリージア!」
家族や友人と共に心配そうに顔を覗き込む婚約者がいた。
※最終回まで、あと7話!
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