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最終章 木こりと騎士は……
第568話 その後の話(sideフリージア) 後編
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「アハハッ、あんな、甘い、メスト、久しぶりに、見た」
『あら、奇遇ですね。私もですわ』
『俺は何も聞いていない。俺は何も聞いていない……』
扉越しに聞いた婚約者に対して甘い言葉を囁くメストに、シトリンは息絶え絶えになりながら笑いを堪え、カトレアはニヤニヤと笑い、ラピスは耳を塞いで自己暗示を唱える。
そんな3人をすれ違いざまに見た人達が揃って顔を引き攣らせていると、扉の向こうからガタンという物音が聞こえた。
(あら、今度は何が始まったのかしら?)
自己暗示を唱え続けているラピスを他所に、ニヤリと笑ったシトリンとカトレアはアイコンタクトを交わすと病室の様子を聞き逃さないように耳を澄ませる。
「それなら、選んでくれ。俺にこのまま食べさせてもらうか、口移しで食べさせてもらうか」
「な、なんですかその二択は!? というより、口移しってなんですか口移しって! そもそも、私たちまだ、そ、その、キ、キスだって……!」
「そうだったな、すまなかった。真っ赤に照れているジアが可愛すぎてつい」
((ジア!?))
「シトリン様、聞きました?」
「うん、バッチリ聞いた」
「今、メスト様。フリージアのことを『ジア』って!」
「メストったら、実は僕やラピスから『フリージア』って呼ばれるのが面白くなかったんだね」
宰相家令嬢として淑女の振る舞いをしつつも、天真爛漫でお転婆娘のフリージアは、特に親しくしている人達には『名前で呼んで!』と言っている。
それがメストには面白くなかったらしい。
「だとしたら、私も今日からメスト様のことを『ヴィルマン侯爵令息様』って呼んだ方が良いでしょうか?」
「それは、2人に聞いた方が良いね。あっ、僕のことは『シトリン』って呼んでも大丈夫だよ」
「ありがとうございます。シトリン様」
すると、扉の向こうからフリージアの不安を滲ませた声が聞こえてきた。
「……あの、メスト様」
「何だ?」
「そ、その……改竄魔法をかけられていた時も、こうしてダリア様に食べさせていたのでしょうか?」
「「「っ!?」」」
フリージアが漏らした不安は、3人の表情が固まるには十分だった。
3人は知っていた。
ダリアをフリージアと勘違いしていたメストが、ダリアを溺愛していたことを。
だから、メストがダリアに何かを食べさせていてもおかしくなかった。
3人の間に緊張が走ったが、フリージアの不安を聞いたメストは、『何だ、そんなことか』と呆れたような溜息をつく。
「そんな訳ないだろう」
「そう、なのですか?」
「あぁ、可愛いジアの前で思い出したくないが……初めてデートに行った時に、『私、誰かに食べさせてもらうっていう行為、嫌いなんですよね』って言ったんだ。だから、あの女にこうして何か食べさせてることはしなかった」
「そうだったのですね」
メストの言葉を聞いたカトレアがシトリンに目を向けると、真剣な表情のシトリンが小さく頷いた。
どうやら、本当のことだったらしい。
「それよりも……」
「キャッ!」
「「「っ!?」」」
メストの言葉にフリージアの口から可愛らしい声が出て、それを聞いたシトリンとカトレアは慌てて扉に耳を付ける。
「どうやらフリージアはまだ、俺の愛を疑っているらしいな?」
「メ、メスト様!? いきなり抱き上げてどうしたのですか!? というか、重いですから離してください!」
「嫌だ、こうでもしないと逃げるだろうが。それに、ジアは軽いから問題ない」
「「っ!?」」
(メスト様!? 一体何をするつもりなのですか!?)
親友の慌てた声に顔を引き攣らせるカトレアに、シトリンが焦ったように話しかける。
「ねぇ、これはそろそろヤバいんじゃないの?」
「そ、そうですね」
シトリンの言葉で、カトレアは冷静さを取り戻す。
(今のフリージアは、7年のブランクのせいでそっち方面はすっかりご無沙汰になっているわ。そんな子に、これ以上の刺激は良くないわね)
「メ、メスト様?」
「ジア……」
メストを甘さを含んだ声に、『これ以上はダメだ』と判断した2人は、再びアイコンタクトを交わすとすぐさま立ち上がり、シトリンが自己暗示をかけ続けているラピスの腕を掴んだタイミングで、カトレアが勢いよく病室の扉を開ける。
「ハ~イ、そこまで~! これ以上は、恋愛ブランクの酷い子には刺激が強すぎるのでおやめくださ~い!」
「カトレア!」
カトレアが勢いよく扉を開けると、そこには絶対安静のフリージアを膝の上に乗せて抱きしめているメストがいた。
「やぁ、メスト。フリージア嬢の心を射止めようと必死なのは分かるけど、ほどほどにしないと逃げられるよ」
「シトリン! それにラピスも!」
「……ご無沙汰しております、隊長」
3人の突然の来訪に固まっているメストを他所に、カトレアは抱きしめられたままのフリージアに差し入れを渡す。
「はい、フリージア。手紙で頼んでいたものを持って来たわ」
「ありがとう……って、これって全部恋愛に関するものじゃない! 私は貴族令嬢として勉強し直したいから頼んだのに!」
「だから持ってきたじゃない、恋愛に関する本を♪ 今のあんたには絶対に必要な勉強だと思うけど?」
「カ~ト~レ~ア~!!」
「キャハハッ、ごめんあそばぜ~」
親友の悪戯に膨れっ面で怒る彼女がかつて、木こりの姿で7年の間、平民の盾として悪徳騎士達と渡り合い、全ての元凶であるノルベルトに1人立ち向かっていたなんて……何も知らない誰かが今の彼女の姿を見たら、到底信じられないだろう。
そんな彼女の不機嫌そうな顔を見て、笑みを零したメストはカトレアに視線を移す。
「カトレア、ありがとうな」
「いいえ~」
「メスト様! 『ありがとう』ではありませんわ!」
大声でメストを咎めるフリージアを見て、メスト達は笑い声を上げる。
その中で、カトレアは願った。
7年間孤独だった彼女がこれから先、大切な人と共に幸せな人生を送れるようになって欲しいと。
※最終回まで、あと3話!
『あら、奇遇ですね。私もですわ』
『俺は何も聞いていない。俺は何も聞いていない……』
扉越しに聞いた婚約者に対して甘い言葉を囁くメストに、シトリンは息絶え絶えになりながら笑いを堪え、カトレアはニヤニヤと笑い、ラピスは耳を塞いで自己暗示を唱える。
そんな3人をすれ違いざまに見た人達が揃って顔を引き攣らせていると、扉の向こうからガタンという物音が聞こえた。
(あら、今度は何が始まったのかしら?)
自己暗示を唱え続けているラピスを他所に、ニヤリと笑ったシトリンとカトレアはアイコンタクトを交わすと病室の様子を聞き逃さないように耳を澄ませる。
「それなら、選んでくれ。俺にこのまま食べさせてもらうか、口移しで食べさせてもらうか」
「な、なんですかその二択は!? というより、口移しってなんですか口移しって! そもそも、私たちまだ、そ、その、キ、キスだって……!」
「そうだったな、すまなかった。真っ赤に照れているジアが可愛すぎてつい」
((ジア!?))
「シトリン様、聞きました?」
「うん、バッチリ聞いた」
「今、メスト様。フリージアのことを『ジア』って!」
「メストったら、実は僕やラピスから『フリージア』って呼ばれるのが面白くなかったんだね」
宰相家令嬢として淑女の振る舞いをしつつも、天真爛漫でお転婆娘のフリージアは、特に親しくしている人達には『名前で呼んで!』と言っている。
それがメストには面白くなかったらしい。
「だとしたら、私も今日からメスト様のことを『ヴィルマン侯爵令息様』って呼んだ方が良いでしょうか?」
「それは、2人に聞いた方が良いね。あっ、僕のことは『シトリン』って呼んでも大丈夫だよ」
「ありがとうございます。シトリン様」
すると、扉の向こうからフリージアの不安を滲ませた声が聞こえてきた。
「……あの、メスト様」
「何だ?」
「そ、その……改竄魔法をかけられていた時も、こうしてダリア様に食べさせていたのでしょうか?」
「「「っ!?」」」
フリージアが漏らした不安は、3人の表情が固まるには十分だった。
3人は知っていた。
ダリアをフリージアと勘違いしていたメストが、ダリアを溺愛していたことを。
だから、メストがダリアに何かを食べさせていてもおかしくなかった。
3人の間に緊張が走ったが、フリージアの不安を聞いたメストは、『何だ、そんなことか』と呆れたような溜息をつく。
「そんな訳ないだろう」
「そう、なのですか?」
「あぁ、可愛いジアの前で思い出したくないが……初めてデートに行った時に、『私、誰かに食べさせてもらうっていう行為、嫌いなんですよね』って言ったんだ。だから、あの女にこうして何か食べさせてることはしなかった」
「そうだったのですね」
メストの言葉を聞いたカトレアがシトリンに目を向けると、真剣な表情のシトリンが小さく頷いた。
どうやら、本当のことだったらしい。
「それよりも……」
「キャッ!」
「「「っ!?」」」
メストの言葉にフリージアの口から可愛らしい声が出て、それを聞いたシトリンとカトレアは慌てて扉に耳を付ける。
「どうやらフリージアはまだ、俺の愛を疑っているらしいな?」
「メ、メスト様!? いきなり抱き上げてどうしたのですか!? というか、重いですから離してください!」
「嫌だ、こうでもしないと逃げるだろうが。それに、ジアは軽いから問題ない」
「「っ!?」」
(メスト様!? 一体何をするつもりなのですか!?)
親友の慌てた声に顔を引き攣らせるカトレアに、シトリンが焦ったように話しかける。
「ねぇ、これはそろそろヤバいんじゃないの?」
「そ、そうですね」
シトリンの言葉で、カトレアは冷静さを取り戻す。
(今のフリージアは、7年のブランクのせいでそっち方面はすっかりご無沙汰になっているわ。そんな子に、これ以上の刺激は良くないわね)
「メ、メスト様?」
「ジア……」
メストを甘さを含んだ声に、『これ以上はダメだ』と判断した2人は、再びアイコンタクトを交わすとすぐさま立ち上がり、シトリンが自己暗示をかけ続けているラピスの腕を掴んだタイミングで、カトレアが勢いよく病室の扉を開ける。
「ハ~イ、そこまで~! これ以上は、恋愛ブランクの酷い子には刺激が強すぎるのでおやめくださ~い!」
「カトレア!」
カトレアが勢いよく扉を開けると、そこには絶対安静のフリージアを膝の上に乗せて抱きしめているメストがいた。
「やぁ、メスト。フリージア嬢の心を射止めようと必死なのは分かるけど、ほどほどにしないと逃げられるよ」
「シトリン! それにラピスも!」
「……ご無沙汰しております、隊長」
3人の突然の来訪に固まっているメストを他所に、カトレアは抱きしめられたままのフリージアに差し入れを渡す。
「はい、フリージア。手紙で頼んでいたものを持って来たわ」
「ありがとう……って、これって全部恋愛に関するものじゃない! 私は貴族令嬢として勉強し直したいから頼んだのに!」
「だから持ってきたじゃない、恋愛に関する本を♪ 今のあんたには絶対に必要な勉強だと思うけど?」
「カ~ト~レ~ア~!!」
「キャハハッ、ごめんあそばぜ~」
親友の悪戯に膨れっ面で怒る彼女がかつて、木こりの姿で7年の間、平民の盾として悪徳騎士達と渡り合い、全ての元凶であるノルベルトに1人立ち向かっていたなんて……何も知らない誰かが今の彼女の姿を見たら、到底信じられないだろう。
そんな彼女の不機嫌そうな顔を見て、笑みを零したメストはカトレアに視線を移す。
「カトレア、ありがとうな」
「いいえ~」
「メスト様! 『ありがとう』ではありませんわ!」
大声でメストを咎めるフリージアを見て、メスト達は笑い声を上げる。
その中で、カトレアは願った。
7年間孤独だった彼女がこれから先、大切な人と共に幸せな人生を送れるようになって欲しいと。
※最終回まで、あと3話!
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