木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第1章 木こりと騎士は再会する

第11話 再会とお礼

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「そういえば、彼に謝罪はしたけどお礼を言ってなかったね」
「あぁ、そうだったな」


 (親子の事情聴取が終わった後、『謝罪した後にどうして俺はすぐにお礼を言わなかったんだ~!』心の中で盛大に後悔した)


「もし彼に会うことが出来たら、すぐにお礼を……」
「メスト」
「ん? どうし……あっ」


 シトリンが黙って指した先には、木こりの格好でレイピアを携えた人物が大きな紙袋を抱えながら歩いてきた。


「っ!!」


 (まただ。またが……)


「メスト」
「分かっている」


 こみ上げてきた気持ちを無視したメストは、前から歩いてきた人物に声をかける。


「なぁ、君ちょっと待ってくれないか?」


 しかし、木こりは2人の横を素通りした。そこで、今度はシトリンが声をかける。


「そこの紙袋を持って僕たちのことを素通りした君、少しだけ足を止めてくれないかな?」


 すると、シトリンから声をかけられた木こりは、足を止めると後ろを振り返った。


「何で、俺の時には立ち止まってくれないんだ?」
「ほらほら、さっさと行くよ」


 (全く、どうしてこいつが声をかけると必ず立ち止まってくれるんだよ)

 物腰柔らかい雰囲気を纏っているシトリンに内心悪態をつきつつ、人の良さそうな笑みを浮かべたメストは、無表情でこちらを見ている木こりに声をかけた。


 ◇◇◇◇◇


「あの、何ですか? あなた達と違って急いでいるんですけど」


 会って早々辛辣なことを言う木こりに、少しだけ口元を引き攣らせたメストはすぐさま謝罪を口にした。


「それはすまない。どうしても、君にお礼が言いたいと思って声をかけたんだ」
「お礼ですか?」
「あぁ、本当はアルジムの件で謝罪した後にすぐに言うべきだったのだが……」
「別に構いませんよ。私はただ、『困っている人を助ける』という人として当たり前のことをしただけですから」


 (それが、どれだけ勇気ある行動なのか彼は分かって……いや、俺たちが王都に来る前から平民を守ってきた彼にとっては当たり前のことなのかもしれない)


「でもだからこそ、言わせてくれ。あの時、愚行を犯した騎士からあの親子を救ってくれてありがとう。君が助けてくれなかったら、あの親子がどうなっていたか……」


 眉を顰めながら拳を強く握ったメストは、人目の多い場所でシトリンと共に深々と頭を下げた。


「あの時、アルジムから親子を守ってくれてありがとう」
「僕からも、あの時にアルジムから親子を守ってくれてありがとう」


 2人の騎士が1人の平民に対して頭を下げるという珍しい光景に、その場にいた人達がざわついた。
 そんな中、メストの潔い姿に木こりは一瞬言葉を失う。

 (あなた達は、やっぱり……)


 2人の騎士らしい姿を目の当たりにし、僅かに口角を緩ませた木こりは、小さく咳払いをして表情を戻した。


「別に、あなた方の為にしたわけではありません。先程も申し上げた通り、私はただ人として当たり前のことをしただけです」
「あぁ、それでも本当にありがとう」
「っ!」


 (本当、あなたって方は……!)

 頭を上げたメストの笑みに、木こりはほんの少しだけ赤らめた頬を隠そうとベレー帽を深く被った。
 すると、頭を上げたシトリンの視線がレイピアに向いた。


「それにしても、平民がレイピアを帯剣しているなんて珍しいね。見た感じ、かなり使い込まれているように見えるけど」


 少しだけ鈍色に光っている銀色のレイピアに、シトリンが興味本位で観察していると、僅かに眉を顰めませた木こりが淡々と答えた。


「えぇ、何せ王都にいらっしゃる騎士様達は皆、我々平民に嬉々として暴力を振いますから。こうして守る術を身につけておかないと普通に歩くことも出来ません」
「それは……」


『この街では、騎士様は疎まれる存在なのです』


 (あの母親の言葉は本当だったのか)

 木こりの言葉で、2人の頭の中に数日前の事情聴取で母親から言われた言葉が蘇り、2人の騎士は揃って難しい顔をして口を噤む。
 そんな2人に、木こりは面倒くさそうな目を向けた。


「あの、もういいですか? そろそろ帰りたいのですが」
「あっあぁ、急いでいるところに呼び止めてしまいすまなか……」



 ドーン!!!



 先を急いでいる木こりにメストが別れを告げようとしたその時、昼下がりの王都に空気を震わせる爆音が響き渡った。
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