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第1章 木こりと騎士は再会する
第21話 宰相閣下の越権行為
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「つまり、陛下は宰相閣下に唆されて、アルジムを無罪放免にしたというのですか?」
「言い方が悪いが……まぁ、そういうことだ」
「そんな……」
(国のトップである国王陛下が、国防を担う騎士団長の判断ではなく、政務を担う宰相閣下の私情が混ざった判断を尊重したなんて……)
啞然とする2人の部下を一瞥したフェビルは、小さく溜息をつくと背凭れに体を預けた。
「お前らの言いたいことはよく分かる。俺だって、今でもアルジムの処罰が宰相閣下の判断に変えられたことに納得していない」
「団長! それは……」
(騎士の長が陛下に意見するようなことを……)
慌てて詰め寄るメストに眉間に皺を寄せたフェビルは小さく頷いた。
「王族を守る近衛騎士団の長である俺が、陛下のご判断に意見するようなことを口にしていけないことは分かっている。だが、おいそれと納得出来るほど、お利口な頭はしていない」
「「団長……」」
自嘲気味に笑うフェビルに、2人の騎士は揃って口を固く閉じると拳を小さく握り締めた。
すると、フェビルは視線を天井に向けた。
「それにな、街の見回りだって本来は近衛騎士がすることではない」
「確かにそうですね。王族や王宮にいる者達を守護する近衛騎士が、街を見回ることは本来ありませんから」
「では、誰がそれを……ってもしかして!?」
話の流れで察したメストに、再び小さく溜息をついたフェビルが視線を戻した。
「あぁ、宰相閣下だ。ついでに言うなら、王都の警備を任されている第一騎士団にも干渉している」
「第一騎士団にまで……ですが、どうしてそんな横暴が許されているのですか?」
(宰相閣下が騎士団そのものに干渉すること自体、越権行為で咎められてもおかしくないはずだ)
「何でも、俺が騎士団長に就く前、前王国騎士団長が宰相閣下に一時的に人事権を渡したらしい」
「そう言えば、前騎士団長は宰相閣下の犬でしたね……なるほど、だから団長の判断に口出しすることが出来たのですね」
「あぁ、本来ならお前達を第三部隊に配属させるつもりだったが、宰相閣下から『あなたが王都に慣れるまではこのままにして下さい!』と強く言われ、それを陛下が了承してしまったから……」
「結局、第四部隊という新設部隊に所属することになったのですか」
「そういうことだ。すまんな」
「いえ、フェビル団長にもどうすることも出来なかった事情があったのだと理解できたので」
ペトロート王国騎士団は、大きく分けて3つの騎士団で構成されている。
まずは、王族や王宮に勤めている者達を守ることが主な任務である少数精鋭の近衛騎士団。
次に、王都や主要都市の治安維持が主な任務としている第一騎士団。
最後に、王都や主要都市以外の街や辺境の治安維持を主な任務第二騎士団である。
(そういえば、問題を起こしたアルジムやリースタは、2人とも第一騎士団に所属していたな)
苦い顔をしているフェビルを見て、メストが悔しそうに下唇を噛んだ時、フェビルの横で今までの会話をずっと黙って聞いていた男が小さく溜息をついた。
「だからこそ、本来あなたの後釜で第二騎士団団長になるはずだった私が、ここにいるのでしょう? フェビル団長」
「あぁ、そうだったな。グレア副団長」
フッと笑みを零したフェビルが視線を横に向ける。
そこには、近衛騎士団副団長兼王国騎士団副団長であるグレア・ハースキーが、銀縁の細いフレームの眼鏡を軽く上げた。
第二騎士団の副団長を務めていたグレアは、大柄なフェビルとは正反対の細身の長身な体格のため、王宮勤めの文官に勘違いされることが多い。
そんな彼は、大雑把ではありつつも戦況を見極めて冷静な判断を下せ、人を見る目を持ち合わせているフェビルを陰から支え、第二騎士団にいた頃は無数にある隊を一手に管理していた。
それもあり、フェビルは王国騎士団長兼近衛騎士団長に任命された際、グレアを自分の腹心に置いた。
(まぁ、俺が王国騎士団長に就任した時に人事権は返してもらったから、こいつや目の前にいるこいつらを呼び寄せることが出来たんだが)
周りにいる頼もしい部下を一瞥し、フェビルが小さく笑みを零すと、グレアが軽く咳払いをした。
「コホン。それで、団長は今度のリースタの件がアルジムと同じことにならないか懸念されているのですよね?」
「そうだな。まぁ、今回はメストとシトリンという2人の有能騎士が証人にいるから、お前も前回とは違って根回ししやすいだろ?」
「そうですね。前回は私の根回しが甘かったばかりに2人の苦労を無にしてしまいましたが、今回はそうならないよう確実に根回しを済ませます」
「あぁ、ほどほどにしとけよ」
「分かっております」
(こう言っとかないと、こいつのせいで騎士と文官の全面対決を招きかねないからな)
眼鏡の奥に鋭く光るグレアの赤い瞳に、メストとシトリンが背筋を伸ばすと、小さく溜息をついたフェビルが机の上にある報告書を手に取る。
「それで、『今回も例の平民が現れ、騎士の攻撃を防ぎながら平民を助けた』っていうのは本当か?」
「言い方が悪いが……まぁ、そういうことだ」
「そんな……」
(国のトップである国王陛下が、国防を担う騎士団長の判断ではなく、政務を担う宰相閣下の私情が混ざった判断を尊重したなんて……)
啞然とする2人の部下を一瞥したフェビルは、小さく溜息をつくと背凭れに体を預けた。
「お前らの言いたいことはよく分かる。俺だって、今でもアルジムの処罰が宰相閣下の判断に変えられたことに納得していない」
「団長! それは……」
(騎士の長が陛下に意見するようなことを……)
慌てて詰め寄るメストに眉間に皺を寄せたフェビルは小さく頷いた。
「王族を守る近衛騎士団の長である俺が、陛下のご判断に意見するようなことを口にしていけないことは分かっている。だが、おいそれと納得出来るほど、お利口な頭はしていない」
「「団長……」」
自嘲気味に笑うフェビルに、2人の騎士は揃って口を固く閉じると拳を小さく握り締めた。
すると、フェビルは視線を天井に向けた。
「それにな、街の見回りだって本来は近衛騎士がすることではない」
「確かにそうですね。王族や王宮にいる者達を守護する近衛騎士が、街を見回ることは本来ありませんから」
「では、誰がそれを……ってもしかして!?」
話の流れで察したメストに、再び小さく溜息をついたフェビルが視線を戻した。
「あぁ、宰相閣下だ。ついでに言うなら、王都の警備を任されている第一騎士団にも干渉している」
「第一騎士団にまで……ですが、どうしてそんな横暴が許されているのですか?」
(宰相閣下が騎士団そのものに干渉すること自体、越権行為で咎められてもおかしくないはずだ)
「何でも、俺が騎士団長に就く前、前王国騎士団長が宰相閣下に一時的に人事権を渡したらしい」
「そう言えば、前騎士団長は宰相閣下の犬でしたね……なるほど、だから団長の判断に口出しすることが出来たのですね」
「あぁ、本来ならお前達を第三部隊に配属させるつもりだったが、宰相閣下から『あなたが王都に慣れるまではこのままにして下さい!』と強く言われ、それを陛下が了承してしまったから……」
「結局、第四部隊という新設部隊に所属することになったのですか」
「そういうことだ。すまんな」
「いえ、フェビル団長にもどうすることも出来なかった事情があったのだと理解できたので」
ペトロート王国騎士団は、大きく分けて3つの騎士団で構成されている。
まずは、王族や王宮に勤めている者達を守ることが主な任務である少数精鋭の近衛騎士団。
次に、王都や主要都市の治安維持が主な任務としている第一騎士団。
最後に、王都や主要都市以外の街や辺境の治安維持を主な任務第二騎士団である。
(そういえば、問題を起こしたアルジムやリースタは、2人とも第一騎士団に所属していたな)
苦い顔をしているフェビルを見て、メストが悔しそうに下唇を噛んだ時、フェビルの横で今までの会話をずっと黙って聞いていた男が小さく溜息をついた。
「だからこそ、本来あなたの後釜で第二騎士団団長になるはずだった私が、ここにいるのでしょう? フェビル団長」
「あぁ、そうだったな。グレア副団長」
フッと笑みを零したフェビルが視線を横に向ける。
そこには、近衛騎士団副団長兼王国騎士団副団長であるグレア・ハースキーが、銀縁の細いフレームの眼鏡を軽く上げた。
第二騎士団の副団長を務めていたグレアは、大柄なフェビルとは正反対の細身の長身な体格のため、王宮勤めの文官に勘違いされることが多い。
そんな彼は、大雑把ではありつつも戦況を見極めて冷静な判断を下せ、人を見る目を持ち合わせているフェビルを陰から支え、第二騎士団にいた頃は無数にある隊を一手に管理していた。
それもあり、フェビルは王国騎士団長兼近衛騎士団長に任命された際、グレアを自分の腹心に置いた。
(まぁ、俺が王国騎士団長に就任した時に人事権は返してもらったから、こいつや目の前にいるこいつらを呼び寄せることが出来たんだが)
周りにいる頼もしい部下を一瞥し、フェビルが小さく笑みを零すと、グレアが軽く咳払いをした。
「コホン。それで、団長は今度のリースタの件がアルジムと同じことにならないか懸念されているのですよね?」
「そうだな。まぁ、今回はメストとシトリンという2人の有能騎士が証人にいるから、お前も前回とは違って根回ししやすいだろ?」
「そうですね。前回は私の根回しが甘かったばかりに2人の苦労を無にしてしまいましたが、今回はそうならないよう確実に根回しを済ませます」
「あぁ、ほどほどにしとけよ」
「分かっております」
(こう言っとかないと、こいつのせいで騎士と文官の全面対決を招きかねないからな)
眼鏡の奥に鋭く光るグレアの赤い瞳に、メストとシトリンが背筋を伸ばすと、小さく溜息をついたフェビルが机の上にある報告書を手に取る。
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