木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第1章 木こりと騎士は再会する

第40話 村人と騎士

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「……というわけで、俺とシトリン、それからラピスは今からリアスタ村に行く。他の者達は、副団長の指示に従って行動してくれ」
「「「「「はっ!!!!」」」」


 部下に指示を出したメストは、シトリンと共に馬に乗るとそのままリアスタ村に向かってかけていく。
 ちなみに、メストが部下達を集めている間に、シトリンがグレアに駐屯地に残す部下に対して指示出しをお願いしていた。


 (『かの村には、早急に挨拶と共に物資提供を断る旨を改める伝えるべきです』か。確かに、食料のことを考えたら早めに言うべきだな)


「それに、騎士に対する印象を考えると尚更……」
「メスト、あれがリアスタ村だよ」
「あっ、あぁ」


 (あれが、リアスタ村)

 目の前に見えてきた小さな村の簡素な門に、メストは気を引き締めるように手綱を強く握った。




 駐屯地を離れてしばらく、村から少し離れた安全な場所に馬を止めた3人はリアスタ村を訪れた。


「随分とのどかな村ですね」
「うん、でも村人達は僕たちのことを歓迎してくれないみたいだね」


 そう、自然豊かな村にメスト達が入った瞬間、血相を欠いた村人達が一斉に自宅へと戻ったのだ。


「はぁ、本当は声をかけたかったのだが仕方ない。村人達が出てくるまでどこか邪魔にならないところで待って……」
「隊長、それなら良いみたいだよ」
「はっ?」


 深く溜息をついたメストが顔を上げた時、自宅に戻った村人達が大小様々な袋や木箱を持って出てきた。
 そして、怯えたような顔をしながら次々とメスト達の前に持っている物を置いていく。


「ほっ、ほら! きょっ、今日の分だ! こっ、これを持ってとっとと帰ってくれ!」
「っ!」


 (まさか、騎士の鎧を見ただけで物資を持ってくるとは)

 眉を顰めたメストの視線の先には、村で採れた野菜や王都で仕入れてきた生活用の魔石がぎっしりと入っていた。


「メスト」
「あぁ、分かっている」


 小さく拳を握ったメストは、大きく息を吐くと紳士的な笑みを浮かべる。


「あの、大変ありがたいのですが……実は我々、この村に挨拶に来ただけなのです」


 すると、物資を持ってきた村人の1人が吠えた。


「嘘つけ! そうやって、いつも俺たちから無理矢理食料を奪うじゃねぇか!」


 眉を吊り上げる村人に、メストの後ろに立っていたシトリンが前に出る。


「本当です。今回はただ、こちらの村にご挨拶に来ただけなのです」
「本当か?」
「証拠を出せ! 証拠を!」
「『証拠』って……」


 (そんなの持ってきているわけがないだろうが)

 再び眉を顰めたメストとは反対に、シトリンは柔和な笑みを崩さない。


「でしたら、村長様とお話させてください」
「はっ! たかが村人でしかない俺たちじゃ話にならないっていうのかよ!?」
「違います。村長には事前に手紙を……」


 その時、いつの間にか人だかりの中から不機嫌そうな男が現れた。


「私が村長だ。話は聞かせてもらった。すまない、村人達が言っていた『証拠』を持ってくるのに時間を要してしまった」


 メスト達に蔑みの目を向けた村長は、後ろを振り返ると懐から手紙を取り出して掲げる。


「皆、今回は本当に村への挨拶だったみたいだ。これがその証拠だ」


 村長が掲げた手紙には、今回の訓練に伴ってリアスタ村近くの駐屯地に来ること、訓練に際してリアスタ村に挨拶に訪れるという内容が記されていた。


「本当だ。村長の言う通り今回は挨拶だけだったみたいだな」
「あぁ、本当だったみたいだ」


 識字率が高いペトロート王国は、平民でも文字の読み書きが出来る。
 村長の掲げた手紙を読んだ村人達は、全員安堵の溜息を漏らした。
 すると、集まった村人の1人が、持ってきた物資を見て困った顔をする。


「じゃあ、この食料や魔石はどうやって消費すればいいんだ?」
「あぁ、魔石はまだしも野菜はどうすれば……?」


 困った顔をする村人達を見て、リアスタ村に来た騎士達も難しい顔をする。

 (確かに、ここにいる村人達で大量の野菜を消費するのは無理がある。だとすれば、やはり我々が受け取るべきなのだろうか?)


「メスト、やっぱり僕たちが引き取った方が……」
「あぁ、そうだな」


 シトリンとラピスとアイコンタクトを交わし、メストが物資を受け取る旨を伝えようとしたその時、人だかりの中から濃い茶色のベレー帽を深く被った人物が現れる。


「すみません、通してく……あっ」
「っ!? きっ、君は!?」


 (どうして君がここに!?)

 何かとお世話になっている木こりの登場に、騎士達全員は言葉を失った。
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