木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

文字の大きさ
45 / 606
第1章 木こりと騎士は再会する

第45話 魔物討伐へ!(side 平民)

しおりを挟む
 ――時は、騎士団が魔物討伐に行く少し前まで遡る。


「はぁ、今日は疲れたわね」


 村長の無茶ぶりで、王都の得意先に村で作った野菜を全て卸し、日が暮れた頃に帰ってきた木こりは、ノロノロと部屋に入るとそのままベッドへダイブした。

 (私が村に来た時には、既に村人達が正門前に集まっていて、遠くから銀色の鎧しか見えなかったから、てっきり『悪徳騎士様達が来たのか』と思って慌てて集団の前に出たら……)


「よりにもよって村に来たのはあの人達で、私が来た時には既に村長と話をつけていたなんて」


 (というか、断りの手紙が届いていたなら、せめて村人には見せなさいよ)


「やっていることが小狡い。あの村長」


 すっかり日が落ち、薄暗くなった部屋で1人愚痴を零した木こりは、ふかふかのベッドの上で大きく溜息をつくと、のろのろと起き上がり身につけていたベレー帽とアイマスクを取ろうと手にかけた。
 その時、何かを思い出して手を止める。


「あっ、いつもの鍛錬がまだだった」


 (この場所に来てから一度も忘れることが無かった鍛錬を忘れるなんて)


「それも全て、あの村長が無茶ぶりせいね。得意先の店主の嫌そうな顔を見る羽目になのも、村長が無駄に見栄を張って私に無茶ぶりのせいだし。それに……」


 頬を膨らませた木こりが急に顔を俯かせると、手にかけてきたベレー帽の唾とアイマスクの端をギュッと握り締める。


「あの人たちが来たせいよ」


 恨めしそうに呟いた木こりの表情は、どこか苦しそうにも見えた。


 ◇◇◇◇◇


「さて、日もすっかり傾いちゃったし、今日は珍しく湖畔近くで鍛錬でもして……っ!」


 大きく伸びをした木こりが鍛錬に向かおうとしたベットから離れたその時、胸元から熱と共に赤い光が放たれた。

 (ペンダントが赤く光ったということは、魔物が幻覚に惑わされなかったのね!)


『いいですか。この辺りに張った結界は、魔物にだけ幻覚を見せて追い払う効果があります。そのため、結界を突破されることはないのですが……万が一、魔物が結界を突破した場合、このペンダントに嵌め込まれている赤い魔石が熱を持って光ります』


 今は亡きネックレスの持ち主の言葉を思い出し、慌てて胸元からペンダントを取り出した木こりは、嵌め込まれた魔石が熱を持ちながら赤く光っていた。


「全く、幻覚に惑わされれば良かったものの……仕方ない、急がないと!」


 この世界では、生きとし生けるものには大なり小なり魔力が持っている。
 
 その中で人間以上の魔力を宿し、『動物が人の負の感情が触れたことで変化した』と言われている異形の物を人は【魔物】と呼び、本能に忠実な彼らは魔力を持つものなら人間や動物関係なく躊躇なく襲う。
 
 そんな獰猛で恐ろしい魔物に対抗するためには、属性魔法が付与された【魔武器】と呼ばれる武器を使うか、攻撃系の属性魔法で対抗するしか方法が無い。
 
 だが、魔法がまともに使えず、高価すぎて魔武器が買えない平民には対抗手段がないため、魔物を見つけたら逃げるか食われるかの二択しかなかった。
 
 ちなみに、魔物が現れた時、大抵の場合は第二騎士団か冒険者が討伐を任されている。

 (本当は、第二騎士団の詰所か冒険者ギルトに駆け込むべきなのでしょうけど、ここからだと距離があるから私が駆け込んだ頃には村はもう……)


「それに、今のペトロート王国で、騎士様があんな小さな村を救うはずがない。今までだってそうだった。だから、いつも通りエドガスが守った村を私が守らないと。魔物とまともに戦えるのは、私しかいないのだから」


 (期待してはダメ。村に来たあの人達が、あの村を救いに来るなんて期待してダメよ)


 大きく息を吐いた木こりは急いで外に飛び出し、一直線で馬小屋まで駆けていくと大人しくしていた愛馬に声をかける。


「ステイン。お疲れのところ悪いけど、久しぶりに夜のお仕事よ。行けるかしら?」


 入口近く置いてある乗馬用の馬具を手に取って、ステインに近づくと慣れた手つきで馬具を取り付ける。
 すると、主の真剣な表情を見たステインが鋭く嘶く。


「さすが、ステイン。頼りにしているわよ」


 小さく笑みを零した木こりは、ステインを馬小屋から連れ出すと颯爽と跨って手綱を握った。


「それじゃあ、いつものように私を悪い魔物達のところに連れて行って」


 やる気に満ちた笑みを浮かべる木こりに呼応して、威勢よく嘶いたステインは闇に包まれた森の中を颯爽と駆けて行く。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。 過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。 そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。 「パパ……私はあなたの娘です」 名乗り出るアンジェラ。 ◇ アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。 この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。 初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。 母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞  🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞 🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇‍♀️

冷酷侯爵と政略結婚したら、実家がざまぁされました

鍛高譚
恋愛
「この結婚は、家のため。ただの政略結婚よ」 そう言い聞かせ、愛のない結婚を受け入れた公爵令嬢リゼット。 しかし、挙式後すぐに父が「婚約破棄しろ」と命じてきた!? だが、夫であるアレクシス・フォン・シュヴァルツ侯爵は冷たく言い放つ。 「彼女を渡すつもりはない」 冷酷無慈悲と噂される侯爵が、なぜかリゼットを溺愛し始める!? 毎日甘やかされ、守られ、気づけば逃げ場なし! さらに、父の不正が明るみに出て、公爵家は失墜―― リゼットを道具として利用しようとした者たちに、ざまぁの鉄槌が下される! 政略結婚から始まる、甘々溺愛ラブストーリー! 「愛なんてないはずなのに……どうしてこんなに大切にされるの?」

見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ

しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”―― 今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。 そして隣国の国王まで参戦!? 史上最大の婿取り争奪戦が始まる。 リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。 理由はただひとつ。 > 「幼すぎて才能がない」 ――だが、それは歴史に残る大失策となる。 成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。 灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶…… 彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。 その名声を聞きつけ、王家はざわついた。 「セリカに婿を取らせる」 父であるディオール公爵がそう発表した瞬間―― なんと、三人の王子が同時に立候補。 ・冷静沈着な第一王子アコード ・誠実温和な第二王子セドリック ・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック 王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、 王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。 しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。 セリカの名声は国境を越え、 ついには隣国の―― 国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。 「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?  そんな逸材、逃す手はない!」 国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。 当の本人であるセリカはというと―― 「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」 王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。 しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。 これは―― 婚約破棄された天才令嬢が、 王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら 自由奔放に世界を変えてしまう物語。

追放された落ちこぼれ令嬢ですが、氷血公爵様と辺境でスローライフを始めたら、天性の才能で領地がとんでもないことになっちゃいました!!

六角
恋愛
「君は公爵夫人に相応しくない」――王太子から突然婚約破棄を告げられた令嬢リナ。濡れ衣を着せられ、悪女の烙印を押された彼女が追放された先は、"氷血公爵"と恐れられるアレクシスが治める極寒の辺境領地だった。 家族にも見捨てられ、絶望の淵に立たされたリナだったが、彼女には秘密があった。それは、前世の知識と、誰にも真似できない天性の《領地経営》の才能! 「ここなら、自由に生きられるかもしれない」 活気のない領地に、リナは次々と革命を起こしていく。寂れた市場は活気あふれる商業区へ、痩せた土地は黄金色の麦畑へ。彼女の魔法のような手腕に、最初は冷ややかだった領民たちも、そして氷のように冷たいはずのアレクシスも、次第に心を溶かされていく。 「リナ、君は私の領地だけの女神ではない。……私だけの、女神だ」

【完結】捨てられた皇子の探し人 ~偽物公女は「大嫌い」と言われても殿下の幸せを願います~

ゆきのひ
恋愛
二度目の人生は、前世で慕われていた皇子から、憎悪される運命でした…。 騎士の家系に生まれたリュシー。実家の没落により、生きるために皇宮のメイドとなる。そんなリュシーが命じられたのは、廃屋同然の離宮でひっそりと暮らすセレスティアン皇子の世話係。 母を亡くして後ろ盾もなく、皇帝に冷遇されている幼い皇子に心を寄せたリュシーは、皇子が少しでも快適に暮らしていけるよう奮闘し、その姿に皇子はしだいに心開いていく。 そんな皇子との穏やかな日々に幸せを感じていたリュシーだが、ある日、毒を盛られて命を落とした……はずが、目を開けると、公爵令嬢として公爵家のベッドに横たわっていた。けれどその令嬢は、リュシーの死に因縁のある公爵の一人娘……。 望まぬ形で二度目の生を享けたリュシーと、その死に復讐を誓った皇子が、本当に望んでいた幸せを手に入れるまでのお話。 ※本作は「小説家になろう」さん、「カクヨム」さんにも投稿しています。 ※表紙画像はAIで作成したものです

白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません

鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。 「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」 そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。 ——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。 「最近、おまえが気になるんだ」 「もっと夫婦としての時間を持たないか?」 今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。 愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。 わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。 政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ “白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!

無能だとクビになったメイドですが、今は王宮で筆頭メイドをしています

如月ぐるぐる
恋愛
「お前の様な役立たずは首だ! さっさと出て行け!」 何年も仕えていた男爵家を追い出され、途方に暮れるシルヴィア。 しかし街の人々はシルビアを優しく受け入れ、宿屋で住み込みで働く事になる。 様々な理由により職を転々とするが、ある日、男爵家は爵位剥奪となり、近隣の子爵家の代理人が統治する事になる。 この地域に詳しく、元男爵家に仕えていた事もあり、代理人がシルヴィアに協力を求めて来たのだが…… 男爵メイドから王宮筆頭メイドになるシルビアの物語が、今始まった。

【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?

雨宮羽那
恋愛
 元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。 ◇◇◇◇  名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。  自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。    運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!  なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!? ◇◇◇◇ お気に入り登録、エールありがとうございます♡ ※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。 ※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。 ※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))

処理中です...