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第2章 木こりと騎士は鍛錬する
第74話 部下の行動
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「……あの、メスト隊長にシトリン副隊長。お願いがあります」
「ん? どうした?」
「何かな?」
気丈に振舞っていたカトレアの姿が見えなり、小さく下唇を噛んでいたラピスが何かを決意すると、メストとシトリンに向かって深々と頭を下げる。
「突然で申し訳ありませんが、彼女の後を追ってもよろしいでしょうか?」
「それは良いが……なぁ、シトリン?」
「うん、今日は休息日に充てられているし、そのまま帰ってもいいだよ」
「ありがとうございます。それでは、お先に失礼致します」
礼を口にして顔を上げたラピスが、2人の上司に向かって綺麗な敬礼をすると駆け足でカトレアの後を追った。
「どうしたんだろうね、ラピス。何か焦っていたみたいだけど」
「そう、だな……」
あっという間に消えた部下の背中に、不思議そうに首を傾げるシトリンに対し、メストは険しい顔をしながら小さく拳を握った。
(カトレア嬢が立ち去った時、彼女の隣にいたラピスが悔しそうな顔で彼女を見送っていた。大方、侮蔑ともとれる言葉をかけたダリアからカトレア嬢を守ることが出来なくて悔やんでいるのだろう)
「……もし、ダリアがカトレア嬢と同じようなことに遭ったら、俺はラピスのように血相を欠いて追いかけることが出来るだろうか?」
「メスト?」
(親友とはいえ、貴族令嬢である彼女を平気で貶す婚約者のことを……)
「……何だか、分からなくなってきた」
「何が?」
「いや、何でもない」
(俺は、本当にダリアのことが好きなのだろうか?)
不思議そうな顔をするシトリンに小さく首を横に振ったメストは、足早に騎士団本部の中へ入っていった。
◇◇◇◇◇
一方、2人の上司と別れたラピスは、騎士団本部から伸びる長い廊下を全力疾走していた。
すると、眼前に燃えるような真っ赤な長い髪を揺らしながら歩いている白いローブを着た小さな背中が見えた。
「おい、待て! 待てって!!」
「えっ、ラピス!?」
後ろから婚約者の声が聞こえ、驚いたカトレアは慌てて振り返えると足を止めると、深い瑠璃色の髪にくすんだ黄色い瞳で凛々しい顔立ちをした背の高い鎧を着た婚約者が、額に汗を掻きながら彼女の前で立ち止まった。
「あんた、急にどうしたのよ? 仕事は?」
「今日は休息日だ。だから、送っていく」
「はぁっ!? 『送っていく』って……」
「宮廷魔法師団本部までだ」
(どうして……どうして、こんな時にあんたが来るのよ! あんたに、あの子に言われたことを真に受けて弱っている私を見せたくないのに!)
素早く息を整えたラピスが毅然とした顔で答えると、大きく目を見開いたカトレアは心配そうな表情で彼に詰め寄る。
「本当に大丈夫なの!? 訓練後だから溜まっている書類とかあるだろうし……」
「それなら、出勤日にやれば問題ない」
「そう、かもしれないけど……だったら、どうしてわざわざ追いかけて来るの!? 私1人でもちゃんと戻れるし、休息日ならさっさと騎士舎に戻って体を休めなさいよ!!」
「っ!!」
薄紫色の瞳を潤ませながら怒鳴るカトレアを見て、一瞬怯んだラピスはすぐさま顔を顰める。
(どうして……どうしてお前は、そうやっていつも何もかも1人で抱え込もうとするんだよ!)
「ほら、分かったのならさっさと戻って……って、きゃっ!」
常に自信に満ちているように見えているカトレアだが、その実はとても泣き虫で、でも誰かに気遣われたくなくて、幼い頃から何かある度によく1人で隠れて泣いていた。
そんな彼女の悪い癖を知っていたラピスは、彼女の気遣いに苛立ちを覚え、彼女の白くか細い手首を強引に掴むと廊下の大きな窓の前に彼女を立たせる。
そして、ローブ姿の華奢な体を丸ごと包み込むようにラピスはカトレアを優しく抱き寄せた。
「ん? どうした?」
「何かな?」
気丈に振舞っていたカトレアの姿が見えなり、小さく下唇を噛んでいたラピスが何かを決意すると、メストとシトリンに向かって深々と頭を下げる。
「突然で申し訳ありませんが、彼女の後を追ってもよろしいでしょうか?」
「それは良いが……なぁ、シトリン?」
「うん、今日は休息日に充てられているし、そのまま帰ってもいいだよ」
「ありがとうございます。それでは、お先に失礼致します」
礼を口にして顔を上げたラピスが、2人の上司に向かって綺麗な敬礼をすると駆け足でカトレアの後を追った。
「どうしたんだろうね、ラピス。何か焦っていたみたいだけど」
「そう、だな……」
あっという間に消えた部下の背中に、不思議そうに首を傾げるシトリンに対し、メストは険しい顔をしながら小さく拳を握った。
(カトレア嬢が立ち去った時、彼女の隣にいたラピスが悔しそうな顔で彼女を見送っていた。大方、侮蔑ともとれる言葉をかけたダリアからカトレア嬢を守ることが出来なくて悔やんでいるのだろう)
「……もし、ダリアがカトレア嬢と同じようなことに遭ったら、俺はラピスのように血相を欠いて追いかけることが出来るだろうか?」
「メスト?」
(親友とはいえ、貴族令嬢である彼女を平気で貶す婚約者のことを……)
「……何だか、分からなくなってきた」
「何が?」
「いや、何でもない」
(俺は、本当にダリアのことが好きなのだろうか?)
不思議そうな顔をするシトリンに小さく首を横に振ったメストは、足早に騎士団本部の中へ入っていった。
◇◇◇◇◇
一方、2人の上司と別れたラピスは、騎士団本部から伸びる長い廊下を全力疾走していた。
すると、眼前に燃えるような真っ赤な長い髪を揺らしながら歩いている白いローブを着た小さな背中が見えた。
「おい、待て! 待てって!!」
「えっ、ラピス!?」
後ろから婚約者の声が聞こえ、驚いたカトレアは慌てて振り返えると足を止めると、深い瑠璃色の髪にくすんだ黄色い瞳で凛々しい顔立ちをした背の高い鎧を着た婚約者が、額に汗を掻きながら彼女の前で立ち止まった。
「あんた、急にどうしたのよ? 仕事は?」
「今日は休息日だ。だから、送っていく」
「はぁっ!? 『送っていく』って……」
「宮廷魔法師団本部までだ」
(どうして……どうして、こんな時にあんたが来るのよ! あんたに、あの子に言われたことを真に受けて弱っている私を見せたくないのに!)
素早く息を整えたラピスが毅然とした顔で答えると、大きく目を見開いたカトレアは心配そうな表情で彼に詰め寄る。
「本当に大丈夫なの!? 訓練後だから溜まっている書類とかあるだろうし……」
「それなら、出勤日にやれば問題ない」
「そう、かもしれないけど……だったら、どうしてわざわざ追いかけて来るの!? 私1人でもちゃんと戻れるし、休息日ならさっさと騎士舎に戻って体を休めなさいよ!!」
「っ!!」
薄紫色の瞳を潤ませながら怒鳴るカトレアを見て、一瞬怯んだラピスはすぐさま顔を顰める。
(どうして……どうしてお前は、そうやっていつも何もかも1人で抱え込もうとするんだよ!)
「ほら、分かったのならさっさと戻って……って、きゃっ!」
常に自信に満ちているように見えているカトレアだが、その実はとても泣き虫で、でも誰かに気遣われたくなくて、幼い頃から何かある度によく1人で隠れて泣いていた。
そんな彼女の悪い癖を知っていたラピスは、彼女の気遣いに苛立ちを覚え、彼女の白くか細い手首を強引に掴むと廊下の大きな窓の前に彼女を立たせる。
そして、ローブ姿の華奢な体を丸ごと包み込むようにラピスはカトレアを優しく抱き寄せた。
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