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第2章 木こりと騎士は鍛錬する
第87話 寂しそうなあなただから
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「本当に君は何でも知っているんだな。平民が騎士の傷を負う意味なんて分からないはずだが」
「い、いえ……たまたま覚えていただけです」
(いけない。私としたことがつい熱くなってしまった。でも、『あなた様が昔、騎士団に入ることを知ったから勉強した』なんて言えないわよね)
悔しそうに下唇をカミルに、優しく微笑んだメストは視線を木々の隙間から見える空に向ける。
「幼い頃は、ダリアも俺が騎士団に入ることを応援してくれていた。だが、本当は俺の騎士団入りを猛反対していたとは」
寂しそうに笑うメストの横顔を見て、拳に力を入れたカミルが恐る恐る聞く。
「……ちなみに、聞いたのはいつだったのですか?」
(平民の身で余計なことを聞いていることは分かっている。それでも、聞いてみたかった)
無表情で問い質すカミルに、視線を戻したメストが苦笑しながら答えた。
「『駐屯地で訓練をする関係でしばらく王都を離れることになった』と手紙で伝えた時に、わざわざ騎士団本部に来た彼女から直接言われた」
「本当に、つい最近だったのですね」
「あぁ、涙を溜めながら激怒する彼女から本心を聞かされた時は……正直、裏切られたと思った。『あなたは、俺の騎士団入団を応援していなかったのか?』って」
「っ!?」
悔しさを滲ませるメストが拳を握る姿に、一瞬目を見張ったカミルは再び下唇を噛む。
そんなカミルを見て、少しだけ頬を緩ませたメストは騎士を目指したきっかけの話をする。
「俺の家、騎士の家系なんだ」
(えぇ、知っていますとも)
「それで、幼い頃から騎士になる鍛錬をしていたのだが……10歳の頃、ダリアの強くて凛々しい姿に一目惚れしたんだ」
「そう、ですか……」
「それで、そんな彼女の姿を見て、『凛々しくて気高い彼女を守れるような騎士になりたい』と誓ったんだ」
(ダリアに出会う前は、侯爵家の跡取りとして騎士を目指していた。けれど、幼い彼女の凛々しい姿に一目惚れした俺は、『彼女を守りたい!』という騎士としての使命が出来て、そこから『本気で騎士を目指そう』と思ったんだ)
「そう、だったのですね……」
少しだけ苦々しい顔をするカミルを見て、メストが自嘲気味に笑った。
「フッ、男が女に憧れるって変か?」
「いえ、人が人を憧れることに男女は関係ありません」
無表情で否定したカミルに、メストは安堵の笑みを浮かべる。
「そうか。ダリアも幼い頃にカミルと同じことを言ってくれた。そう思うと、カミルはどこか幼い頃のダリアにそっくりだ」
「っ!?」
(それは……!)
懐かしそうに微笑むメストに、少しだけ顔を歪ませたカミルは少しだけ視線を逸らす。
「そんなに、私と幼い頃の婚約者様はそっくりなのでしょうか?」
「あぁ、まるで同一人物かと思うくらいそっくりだ」
「っ!?」
「カミル? どうした?」
「いえ、何でもありません。話を続けて下さい」
「あ、あぁ……」
(言えない。言えるはずがない。本当は……)
何かに堪えるようにそっと拳を強く握るカミルに、メストは話を続ける。
「でも、今のダリアは昔の面影はすっかり無くなって立派な公爵令嬢になった。俺は、幼い頃のお転婆な彼女に惚れたんだけどな」
「それは、女性に対してあまりにも失礼なのでは?」
「アハハッ、そうかもしれないな。でも、俺はそんな彼女が好きなんだ……いや、好きだったのかもしれない」
「えっ?」
(過去形? 一体どういうこと?)
メストの言葉に引っ掛かりを覚え、ゆっくり視線を戻したカミルは、寂しそうに笑うメストに思わず胸が締め付けられる。
(どうして、あなたがそんな表情をするのよ!)
言葉に出来ない想いを握り潰すように、カミルは片手をそっと胸の上に押し当てて握り締める。
すると、小さく息を吐いたメストが吹っ切れたような明るい表情で話題を変える。
「それよりも泊りの件だ! さっきも言ったが、泊まる時は事前に伝えるし、カミルの仕事の手伝いもする! だから、泊まらせて欲しい!」
「は、はぁ……」
(婚約者との話ですっかり忘れていたけど、そんな話だったわね)
メストから泊まりの話を聞いた瞬間、カミルは速攻断ろうと思っていた。
その方がお互いの……いや、彼のためにもなるからと思ったから。
けど……
(寂しそうな顔で婚約者の話を聞いているうちに、何だか無下に断るのが嫌になったのよね)
『我ながらお人好しだな』と内心苦笑しつつ、小さく息を吐いたカミルはメストに向かって小さく首を縦に振った。
「そういうことでしたら、泊まりに来ても良いですよ」
「本当か!?」
「はい。ですが、少しだけ時間を貰ってもよろしいでしょうか? 色々と準備が必要ですので」
「そういうことなら別に構わないが……もし良かったら俺も手伝おうか? 俺のせいで準備をさせてしまって申し訳ないから」
「いえ、私一人で十分ですから」
(むしろ、1人でやらないと色々とバレそうだから1人で準備させて!!)
無表情でありながらも殺気を放っているカミルに、少しだけ頬を引き攣らせたメストはあっさり引き下がった。
「そ、そうか。それじゃあ、泊まりに来てもいい準備が出来たら言ってくれ。そのタイミングで泊まりに来るから」
「分かりました」
そして、数日後。
『迎え入れる準備が出来た』とカミルに言われたメストは、休日の前夜に彼の家へ初めて泊りに行く。
もちろん、ダリアから『二度とデートに誘わないでください!』と直接言われ、彼女の父親からこっぴどく叱られた上で。
「い、いえ……たまたま覚えていただけです」
(いけない。私としたことがつい熱くなってしまった。でも、『あなた様が昔、騎士団に入ることを知ったから勉強した』なんて言えないわよね)
悔しそうに下唇をカミルに、優しく微笑んだメストは視線を木々の隙間から見える空に向ける。
「幼い頃は、ダリアも俺が騎士団に入ることを応援してくれていた。だが、本当は俺の騎士団入りを猛反対していたとは」
寂しそうに笑うメストの横顔を見て、拳に力を入れたカミルが恐る恐る聞く。
「……ちなみに、聞いたのはいつだったのですか?」
(平民の身で余計なことを聞いていることは分かっている。それでも、聞いてみたかった)
無表情で問い質すカミルに、視線を戻したメストが苦笑しながら答えた。
「『駐屯地で訓練をする関係でしばらく王都を離れることになった』と手紙で伝えた時に、わざわざ騎士団本部に来た彼女から直接言われた」
「本当に、つい最近だったのですね」
「あぁ、涙を溜めながら激怒する彼女から本心を聞かされた時は……正直、裏切られたと思った。『あなたは、俺の騎士団入団を応援していなかったのか?』って」
「っ!?」
悔しさを滲ませるメストが拳を握る姿に、一瞬目を見張ったカミルは再び下唇を噛む。
そんなカミルを見て、少しだけ頬を緩ませたメストは騎士を目指したきっかけの話をする。
「俺の家、騎士の家系なんだ」
(えぇ、知っていますとも)
「それで、幼い頃から騎士になる鍛錬をしていたのだが……10歳の頃、ダリアの強くて凛々しい姿に一目惚れしたんだ」
「そう、ですか……」
「それで、そんな彼女の姿を見て、『凛々しくて気高い彼女を守れるような騎士になりたい』と誓ったんだ」
(ダリアに出会う前は、侯爵家の跡取りとして騎士を目指していた。けれど、幼い彼女の凛々しい姿に一目惚れした俺は、『彼女を守りたい!』という騎士としての使命が出来て、そこから『本気で騎士を目指そう』と思ったんだ)
「そう、だったのですね……」
少しだけ苦々しい顔をするカミルを見て、メストが自嘲気味に笑った。
「フッ、男が女に憧れるって変か?」
「いえ、人が人を憧れることに男女は関係ありません」
無表情で否定したカミルに、メストは安堵の笑みを浮かべる。
「そうか。ダリアも幼い頃にカミルと同じことを言ってくれた。そう思うと、カミルはどこか幼い頃のダリアにそっくりだ」
「っ!?」
(それは……!)
懐かしそうに微笑むメストに、少しだけ顔を歪ませたカミルは少しだけ視線を逸らす。
「そんなに、私と幼い頃の婚約者様はそっくりなのでしょうか?」
「あぁ、まるで同一人物かと思うくらいそっくりだ」
「っ!?」
「カミル? どうした?」
「いえ、何でもありません。話を続けて下さい」
「あ、あぁ……」
(言えない。言えるはずがない。本当は……)
何かに堪えるようにそっと拳を強く握るカミルに、メストは話を続ける。
「でも、今のダリアは昔の面影はすっかり無くなって立派な公爵令嬢になった。俺は、幼い頃のお転婆な彼女に惚れたんだけどな」
「それは、女性に対してあまりにも失礼なのでは?」
「アハハッ、そうかもしれないな。でも、俺はそんな彼女が好きなんだ……いや、好きだったのかもしれない」
「えっ?」
(過去形? 一体どういうこと?)
メストの言葉に引っ掛かりを覚え、ゆっくり視線を戻したカミルは、寂しそうに笑うメストに思わず胸が締め付けられる。
(どうして、あなたがそんな表情をするのよ!)
言葉に出来ない想いを握り潰すように、カミルは片手をそっと胸の上に押し当てて握り締める。
すると、小さく息を吐いたメストが吹っ切れたような明るい表情で話題を変える。
「それよりも泊りの件だ! さっきも言ったが、泊まる時は事前に伝えるし、カミルの仕事の手伝いもする! だから、泊まらせて欲しい!」
「は、はぁ……」
(婚約者との話ですっかり忘れていたけど、そんな話だったわね)
メストから泊まりの話を聞いた瞬間、カミルは速攻断ろうと思っていた。
その方がお互いの……いや、彼のためにもなるからと思ったから。
けど……
(寂しそうな顔で婚約者の話を聞いているうちに、何だか無下に断るのが嫌になったのよね)
『我ながらお人好しだな』と内心苦笑しつつ、小さく息を吐いたカミルはメストに向かって小さく首を縦に振った。
「そういうことでしたら、泊まりに来ても良いですよ」
「本当か!?」
「はい。ですが、少しだけ時間を貰ってもよろしいでしょうか? 色々と準備が必要ですので」
「そういうことなら別に構わないが……もし良かったら俺も手伝おうか? 俺のせいで準備をさせてしまって申し訳ないから」
「いえ、私一人で十分ですから」
(むしろ、1人でやらないと色々とバレそうだから1人で準備させて!!)
無表情でありながらも殺気を放っているカミルに、少しだけ頬を引き攣らせたメストはあっさり引き下がった。
「そ、そうか。それじゃあ、泊まりに来てもいい準備が出来たら言ってくれ。そのタイミングで泊まりに来るから」
「分かりました」
そして、数日後。
『迎え入れる準備が出来た』とカミルに言われたメストは、休日の前夜に彼の家へ初めて泊りに行く。
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