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第2章 木こりと騎士は鍛錬する
第99話 今はただ、聞かないで
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「……やはり、気になりますか?」
「あ、あぁ……そう、だな」
(そうよね、気になるわよね)
一瞬顔を歪ませたカミルがベレー帽を深く被った時、焦った表情をしたメストが、ガタンと音を鳴らして椅子から立ち上がる。
「い、嫌だったら無理して答えなくてもいい! 俺には言えない理由でベレー帽とアイマスクを外していないのは、風呂から上がってきた時に何となく察していたから! 本当にすまん! デリカシーの無いこと聞いてしまい……」
(よく考えたら、この家に帰ってきた時にベレー帽とアイマスクは外して良いはずだ。なのに、今の今まで外していないということは、俺には話せない理由があるからだ。それを俺はわざわざ……!)
自らの失言を深く後悔し、酷く申し訳なさそうな顔で口を閉じたメストは、そのままゆっくり腰を下ろすと顔を俯かせる。
そうしてしばらく、2人の間に重い沈黙の空気が流れた時、カミルが小さく息を吐く。
「全く、どうしてあなたって方は……」
「カミル?」
恐る恐る顔を上げたメストを見て、ベレー帽から手を離したカミルは、無表情のまま深く息を吐くとベレー帽とアイマスクに軽く触れる。
「確かに、あなた様がおっしゃるようにワケあって屋内でもベレー帽やアイマスクをつけています」
「やはり、そうだったんだな……」
(なんて俺は、無神経ことを聞いてしまったのだろう。それも、カミルを傷つけるようなことを)
再び顔を歪ませて視線を落とすメストに、小さく唇を噛んだカミルはいつもの表情に戻すと少しだけ丸まっていた姿勢を伸ばす。
「ですから、私が家の中でベレー帽やアイマスクをしていても、気にしないでいただけるとありがたいです」
「分かった。カミルが言うなら、これ以上は気にしない」
「ありがとうございます」
(本当、あなたって優しい人なのだから)
視線を上げたメストが真剣な表情で頷くと、僅かに笑みを浮かべたカミルはすぐさま笑みを潜め、シチューに浸していたスプーンを手に取る。
「さて、冷めないうちに食べましょう。シチューの方は、冷めても食べられるように作っていますが、やはり温かいうちに食べた方が美味しいですので」
「そうだな。せっかく目の前にご馳走が並んでいる。温かいうちに食べないと、作ってくれたカミルに失礼だ」
「『失礼』って……それに『ご馳走』って、ここにあるのは全て平民が作った料理ですよ?」
困ったように眉を顰めるカミルに、メストは満面の笑みを向けた。
「それでも、俺にはご馳走だ。こんなに美味しいシチューが食べられるのだから」
心底嬉しそうな顔でシチューを食べ始めたメストに、僅かに頬を赤らめたカミルは、持っていたスプーンを強く握る。
「……おかわり」
「えっ?」
「おかわり、欲しかったら遠慮なくおっしゃってください。温め直せば、また出せますから」
「本当か!? 本当にありがとう!!」
普段の仏頂面からは想像できない、子どものような笑顔を見せるメストに、更に頬を赤らめたカミルが慌てて顔を伏せると、スプーンの中のシチューを見つめる。
(料理に使った食材も、エドガス直伝の味付けも、毎晩貴族が食べるそれとはかなり違うはず。それなのに、この人は『毎日でも食べたいくらい美味しい』と言ってくれた)
「どうした、カミル? 食べないのか?」
「食べますよ。明日も朝から鍛錬がありますから」
「おぉ! そうだった!!」
(『そうだった』って、あなた一体何をしに来たのですか?)
ハッとした表情のメストを見て、ほんの少し笑みを浮かべたカミルは何事も無かったかのように自分で作ったシチューをお行儀よく口に運ぶ。
(例え、メスト様から出た『美味しい』という褒め言葉が、平民である私に対して気を遣ったお世辞だとしても、今の私にとってかけがえのない言葉。だって、こうしてあなたと同じ料理を食べていること自体、私にとって奇跡なのだから)
「カミル、おかわりをくれないか?」
「えぇ、もちろんです」
美味しそうに食べてくれるメストに、カミルは久しぶりに胸が温かくなった。
「あ、あぁ……そう、だな」
(そうよね、気になるわよね)
一瞬顔を歪ませたカミルがベレー帽を深く被った時、焦った表情をしたメストが、ガタンと音を鳴らして椅子から立ち上がる。
「い、嫌だったら無理して答えなくてもいい! 俺には言えない理由でベレー帽とアイマスクを外していないのは、風呂から上がってきた時に何となく察していたから! 本当にすまん! デリカシーの無いこと聞いてしまい……」
(よく考えたら、この家に帰ってきた時にベレー帽とアイマスクは外して良いはずだ。なのに、今の今まで外していないということは、俺には話せない理由があるからだ。それを俺はわざわざ……!)
自らの失言を深く後悔し、酷く申し訳なさそうな顔で口を閉じたメストは、そのままゆっくり腰を下ろすと顔を俯かせる。
そうしてしばらく、2人の間に重い沈黙の空気が流れた時、カミルが小さく息を吐く。
「全く、どうしてあなたって方は……」
「カミル?」
恐る恐る顔を上げたメストを見て、ベレー帽から手を離したカミルは、無表情のまま深く息を吐くとベレー帽とアイマスクに軽く触れる。
「確かに、あなた様がおっしゃるようにワケあって屋内でもベレー帽やアイマスクをつけています」
「やはり、そうだったんだな……」
(なんて俺は、無神経ことを聞いてしまったのだろう。それも、カミルを傷つけるようなことを)
再び顔を歪ませて視線を落とすメストに、小さく唇を噛んだカミルはいつもの表情に戻すと少しだけ丸まっていた姿勢を伸ばす。
「ですから、私が家の中でベレー帽やアイマスクをしていても、気にしないでいただけるとありがたいです」
「分かった。カミルが言うなら、これ以上は気にしない」
「ありがとうございます」
(本当、あなたって優しい人なのだから)
視線を上げたメストが真剣な表情で頷くと、僅かに笑みを浮かべたカミルはすぐさま笑みを潜め、シチューに浸していたスプーンを手に取る。
「さて、冷めないうちに食べましょう。シチューの方は、冷めても食べられるように作っていますが、やはり温かいうちに食べた方が美味しいですので」
「そうだな。せっかく目の前にご馳走が並んでいる。温かいうちに食べないと、作ってくれたカミルに失礼だ」
「『失礼』って……それに『ご馳走』って、ここにあるのは全て平民が作った料理ですよ?」
困ったように眉を顰めるカミルに、メストは満面の笑みを向けた。
「それでも、俺にはご馳走だ。こんなに美味しいシチューが食べられるのだから」
心底嬉しそうな顔でシチューを食べ始めたメストに、僅かに頬を赤らめたカミルは、持っていたスプーンを強く握る。
「……おかわり」
「えっ?」
「おかわり、欲しかったら遠慮なくおっしゃってください。温め直せば、また出せますから」
「本当か!? 本当にありがとう!!」
普段の仏頂面からは想像できない、子どものような笑顔を見せるメストに、更に頬を赤らめたカミルが慌てて顔を伏せると、スプーンの中のシチューを見つめる。
(料理に使った食材も、エドガス直伝の味付けも、毎晩貴族が食べるそれとはかなり違うはず。それなのに、この人は『毎日でも食べたいくらい美味しい』と言ってくれた)
「どうした、カミル? 食べないのか?」
「食べますよ。明日も朝から鍛錬がありますから」
「おぉ! そうだった!!」
(『そうだった』って、あなた一体何をしに来たのですか?)
ハッとした表情のメストを見て、ほんの少し笑みを浮かべたカミルは何事も無かったかのように自分で作ったシチューをお行儀よく口に運ぶ。
(例え、メスト様から出た『美味しい』という褒め言葉が、平民である私に対して気を遣ったお世辞だとしても、今の私にとってかけがえのない言葉。だって、こうしてあなたと同じ料理を食べていること自体、私にとって奇跡なのだから)
「カミル、おかわりをくれないか?」
「えぇ、もちろんです」
美味しそうに食べてくれるメストに、カミルは久しぶりに胸が温かくなった。
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