木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第2章 木こりと騎士は鍛錬する

第105話 初めて見る日常

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「どうして、そのような格好を?」


 自分と瓜二つの格好をするメストを見て、カミルはアイマスクでは隠しきれないくらい動揺していた。
 そんなカミルを見て、メストは照れくさそうに頬を掻くと視線を逸らす。


「それは……村での用を済ませた後で話す。俺のせいで行くのを遅らせてしまったから」
「そ、そうですね。それに、日が暮れる前に戻ってこないといけませんので」


 (正直、メスト様がどうしてそのような格好をしているのか気になって仕方ない。けど今は、急いでリアスタ村に行かないと。きっと今頃、村人達は出入口で待っているだろうし)

 メストの格好が気になって仕方ないカミルは、『早く村の用事を済ませよう』とメストの問いに淡々と答えると、視線を前に向けてステインの手綱を持つ。


「それじゃあ、ステイン。行こうか」


 主からの指示を律儀に待ってくれた愛馬は、軽く嘶くとリアスタ村に向けて荷台を引きながら森の中を走り始めた。

 
 ◇◇◇◇◇

 
「あ、リアスタ村が見えてきた」


 森を抜けてすぐに見えてきた村に、メストは思わず目を見張る。

 (本当にカミルが住んでいる森のすぐ近くにあったんだな。それに、訓練初日で討伐した魔物達が出現した場所からそう遠くない。となるともし、一足遅かったらリアスタ村もカミルの家も全て……)

 約1ヶ月前に起きた魔物討伐を思い出し、メストが人知れず寒気を感じていると、隣で手綱を引いていたカミルが少しだけ険しい顔をしながらメストを横目で見つめてきた。


「村に着いたら、あなた様はステインの手綱を持って大人しく待っていてください。それと、何を見聞きしても口出しや手出しはしないでください」
「あ、あぁ、分かった……」


 (こんな険しい顔で話すカミル、初めて見たかもしれない)

 普段は無表情で淡々としているカミルの真剣な表情で忠告され、僅かに頬を引き攣らせたメストが軽く頷くと、幌馬車が村の中へ入っていった。


「へぇ~、村の中ってこんな風になっているのか」


 (田畑があったり、趣深い家が並んでいたり、随分とのどかなで村で良いな)

 初めて見たリアスタ村の様子にメストは思わず頬を緩ませる。
 だが、ステインがゆっくりと立ち止まった瞬間、メストは思わず眉を顰める。

 (何だ、これは?)

 僅かに険しい顔をしたメストの視線の先には、殺気立ったリアスタ村の村人達が大小様々な物資を持っていた。


「なぁ、カミル。これって……」


 のどかな村の住人とは思えない村人達の雰囲気に、首を傾げたメストはカミルに小声で話しかける。
 
 だが、メストの言葉を遮ったカミルはメストに手綱を預けると颯爽と御者台から降りる。
 
 すると、待っていましたとばかりに村人達がカミルの許可無く荷台の入口を開け、村人の何人かずかずかと荷台の中へ入ると、持ってきた物資を次々と中へと運び入れ始めた。


「なっ!?」


 (荷台の持ち主であるカミルに許可も得ずに勝手に荷台を開け、あまつさえ持ってきた物を勝手に荷台に入れるなんて、何と無礼なこ奴らなんだ!!)

 カミルに一切目もくれず、慣れたように次々と持ってきた物を荷台の中に入れていく村人達に、怒ったメストが彼らに対して物申そうとした時、メストの耳にカミルと村長の会話が入ってきた。


「こんにちは」
「あぁ、今日は随分と遅かったな」
「すみません、今日は持っていくものが多くて……」
「言い訳はいい。これが今日のリストと代金だ。きっちり頼んだぞ」
「分かっています」


 (リストに代金? 一体、どういうこと……っ!?)

 荷台から2人に目を移したメストは、カミルが村長から分厚い書類と大きな袋を受け取るところを見て思わず目を見開く。

 (もしかして、あれがカミルの言っていた『それだけじゃない』なのか!?)

 出発前にカミルが言っていたことを理解したメストが唖然としていると、蔑んだ目でカミルを見ていた村長の視線がメストに移る。


「おい、あいつは誰だ? どう見ても見慣れない奴だが」
「っ!?」


 (マズい、こっち見た!)

 人を射殺しそうな目を向けてきた村長に、メストは咄嗟に顔を前に向けるとベレー帽を深く被る。
 すると、リストに目を通していたカミルが淡々とした口調で答える。


「彼は、です。どうやら最近になってあの方が亡くなったと人伝に聞いたらしく、お墓参りでこちらを訪ねてきました」
「あいつの親戚か……それじゃあ、どうして俺たちの仕事を手伝っている?」
「彼が『一宿一飯の恩義としてどうしても手伝いたい!』と仰って、それで……」
「ふ~ん」


 疑いの目を向ける村長の視線から逃れるようにベレー帽を更に深く被るメスト。
 すると、カミルの言葉に納得したのか、カミルに視線を戻したカミルが軽く鼻を鳴らす。


「まぁ、俺たちからすればあいつも余所者に変わりない。本来は村への立ち入りが許されないが……あいつの親戚ってことなら仕方ない。お前がちゃんとあいつの面倒を見て、俺たちのために働いてくれるなら別に構わん」
「ありがとうございます」


 深々と頭を下げるカミルを見て、再び鼻を鳴らした村長が不機嫌そうな顔で首を軽く横に振った。


「ほら、用が済んだらさっさと王都まで売りに行ってこい。それが、余所者であるお前をこの村に居続けさせる条件なのだから」
「はい。では、行ってきます」


 軽く頭を下げたカミルはそそくさと御者台に乗り、メストから手綱を返してもらうと王都に向かって幌馬車を走らせた。
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