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第2章 木こりと騎士は鍛錬する
第112話 報酬は君に
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最初の店に木材を納品した後、カミルとメストは次々と得意先の店に木材や村人達から預かった品々を納品して回った。
店主達は皆、メストの存在に最初はとても驚いていたが、カミルの指示に従って真面目に働くメストに好感を持ったのか、最後は最初の店と同じように2人分の報酬を出した。
そうして一通り得意先を回り終え、御者台に座っていたメストは、荷台に積まれている色のついた報酬達を一瞥し、隣で手綱を握っているカミルに声をかける。
「なぁ、大丈夫なのか?」
「『大丈夫』って、何が?」
「『何が』って、木材を納品した分の報酬だ。あんなに多くもらって、本当に大丈夫なのか?」
(確か、平民はその日を生きるのに必死だったはず。そんな彼らが、同じ平民に色をつけて報酬を渡すなんて……)
再び報酬を一瞥したメストが心配そうな顔で話すと、手綱を握っていたカミルは『何だ、そんなことか』と言わんばかりに小さく溜息をつく。
「大丈夫ですよ。なにせ、彼らは『商人』ですから」
「確かにそうだが、でも……」
「それに、彼らは儲けのプロです。私たちに多く報酬をあげて損になることはないことくらい、彼らだって分かっていると思いますから」
「た、確か」
ペトロート王国の国民は『王族・貴族・平民』という3つの市民階級で分けられている。
その市民階級の中で『商人』と呼ばれる人達は、平民の階級でありながらも、皆が平民の作った物を色んな人達に売ることを生業にしているため、平民の中でも比較的に裕福な方であり、稀に商人から貴族になることもある。
ちなみに、メストが生業にしている騎士は、貴族の中で武に秀でた人達が就く仕事とされている。
「それにしても、よくそんなことも知っていたな。平民でも、そのことを知っている人はほとんどいないだろう?」
「……前に、得意先の店主様から聞いたことがありましたので」
「なるほど」
(本当は違うんだけど)
話を聞いて納得したように頷いたメストを一瞥したカミルは、一瞬気まずそうな顔をすると目の前に見えてきた店の看板に視線を戻す。
「では次に、買い物です」
「あぁ、村人達から頼まれたお使いだろ? 改めて思うが、村人達はカミルに対して容赦が無いな。たった一人にこんなに頼むなんて」
(これじゃまるで、ただの仕入れじゃないか)
僅かに眉を顰めたメストが、荷台に置いてあった紙束を手に取り目を通すと、カミルの口から諦めにも似た溜息が漏れる。
「まぁ、私があの場所に住むことが許されているのは、偏に私がこの幌馬車を持っているお陰です。だから、住ませてもらっている分の働きをするべきでしょう」
「それは、そうかもしれないが……」
クシャと持っていた紙束に皺をつけたメストを見て、カミルが小さく微笑むと幌馬車をいつもの場所に止める。
「それに、これは私の買い物も兼ねています。だから、別に構わないのです」
「それって……俺が来たから買い物をする羽目になったのか?」
「いえ、あなた様が来たせいでは……」
そう否定しようとした時、素早く荷台にリストを置いたメストが、木材分の報酬が入った袋を手に取るとカミルに差し出す。
「だったら、俺の分の報酬を使ってくれ!」
「は?」
(いきなり、何を言っているの?)
思わず間抜けた声をあげたカミルに、メストは真剣な表情でグイグイと袋をカミルに押し付ける。
「俺の本職は騎士で、本来この報酬は受け取れない」
(騎士はこの国の国防を担っていて、国のために尽くさないといけない。だから、騎士は給料以外の報酬を受け取ってはいけない。騎士の国に対する忠誠心を揺らし、欲に溺れ、国を陥れるかもしれないから)
「だから、俺の分の報酬は俺が滞在している間に使った分の補填に充てて欲しい」
「ですが、それだとあなた様は……」
「良いんだ」
一瞬だけ不安げな顔をしたカミルに、メストは優しく微笑む。
「俺は、カミルの仕事の手伝いを兼ねた鍛錬が出来ればそれでいい」
「メストさ……さん」
「それに、俺の報酬でカミルが美味しい料理を作ってくれるなら、俺にとってこれ以上の報酬はない!」
「っ!」
(そんな顔されたら、嫌だなんて言えないじゃない! それに、こんなに多く貰ったら、美味しいご飯くらいいくらでも作れるわよ!)
「……分かりました。お言葉に甘えます」
「あぁ、ありがとう」
メストの笑みと無自覚な甘い言葉に負けたカミルは、気持ちを落ち着かせるように深く溜息をつくとメストから袋を受け取る。
そして、そこからメストの報酬分を抜くと、懐に入れていた財布に大切に仕舞いこんだ。
「では、早速買い物に行ってきますが……メ、メストさんはどうされますか? 一緒に行かれますか? それとも、ここでステインと大人しく待っていますか?」
「そなら、俺も一緒に行く。何を買うかはカミルに任せるしかないが、荷物持ちくらいなら俺にでも出来るはずだ」
「分かりました。では、荷物持ちをお願いします」
「あぁ、任せて欲しい!」
自信に満ちた笑みで自分の胸を叩くメストに、一瞬笑みを浮かべたカミルは、持っていた報酬を荷台へ戻すついでに村人達から預かった硬貨のたくさん入った使い込まれた麻袋とリストを取り出す。
そして、メストに麻袋を持たせると幌馬車から降りた。
店主達は皆、メストの存在に最初はとても驚いていたが、カミルの指示に従って真面目に働くメストに好感を持ったのか、最後は最初の店と同じように2人分の報酬を出した。
そうして一通り得意先を回り終え、御者台に座っていたメストは、荷台に積まれている色のついた報酬達を一瞥し、隣で手綱を握っているカミルに声をかける。
「なぁ、大丈夫なのか?」
「『大丈夫』って、何が?」
「『何が』って、木材を納品した分の報酬だ。あんなに多くもらって、本当に大丈夫なのか?」
(確か、平民はその日を生きるのに必死だったはず。そんな彼らが、同じ平民に色をつけて報酬を渡すなんて……)
再び報酬を一瞥したメストが心配そうな顔で話すと、手綱を握っていたカミルは『何だ、そんなことか』と言わんばかりに小さく溜息をつく。
「大丈夫ですよ。なにせ、彼らは『商人』ですから」
「確かにそうだが、でも……」
「それに、彼らは儲けのプロです。私たちに多く報酬をあげて損になることはないことくらい、彼らだって分かっていると思いますから」
「た、確か」
ペトロート王国の国民は『王族・貴族・平民』という3つの市民階級で分けられている。
その市民階級の中で『商人』と呼ばれる人達は、平民の階級でありながらも、皆が平民の作った物を色んな人達に売ることを生業にしているため、平民の中でも比較的に裕福な方であり、稀に商人から貴族になることもある。
ちなみに、メストが生業にしている騎士は、貴族の中で武に秀でた人達が就く仕事とされている。
「それにしても、よくそんなことも知っていたな。平民でも、そのことを知っている人はほとんどいないだろう?」
「……前に、得意先の店主様から聞いたことがありましたので」
「なるほど」
(本当は違うんだけど)
話を聞いて納得したように頷いたメストを一瞥したカミルは、一瞬気まずそうな顔をすると目の前に見えてきた店の看板に視線を戻す。
「では次に、買い物です」
「あぁ、村人達から頼まれたお使いだろ? 改めて思うが、村人達はカミルに対して容赦が無いな。たった一人にこんなに頼むなんて」
(これじゃまるで、ただの仕入れじゃないか)
僅かに眉を顰めたメストが、荷台に置いてあった紙束を手に取り目を通すと、カミルの口から諦めにも似た溜息が漏れる。
「まぁ、私があの場所に住むことが許されているのは、偏に私がこの幌馬車を持っているお陰です。だから、住ませてもらっている分の働きをするべきでしょう」
「それは、そうかもしれないが……」
クシャと持っていた紙束に皺をつけたメストを見て、カミルが小さく微笑むと幌馬車をいつもの場所に止める。
「それに、これは私の買い物も兼ねています。だから、別に構わないのです」
「それって……俺が来たから買い物をする羽目になったのか?」
「いえ、あなた様が来たせいでは……」
そう否定しようとした時、素早く荷台にリストを置いたメストが、木材分の報酬が入った袋を手に取るとカミルに差し出す。
「だったら、俺の分の報酬を使ってくれ!」
「は?」
(いきなり、何を言っているの?)
思わず間抜けた声をあげたカミルに、メストは真剣な表情でグイグイと袋をカミルに押し付ける。
「俺の本職は騎士で、本来この報酬は受け取れない」
(騎士はこの国の国防を担っていて、国のために尽くさないといけない。だから、騎士は給料以外の報酬を受け取ってはいけない。騎士の国に対する忠誠心を揺らし、欲に溺れ、国を陥れるかもしれないから)
「だから、俺の分の報酬は俺が滞在している間に使った分の補填に充てて欲しい」
「ですが、それだとあなた様は……」
「良いんだ」
一瞬だけ不安げな顔をしたカミルに、メストは優しく微笑む。
「俺は、カミルの仕事の手伝いを兼ねた鍛錬が出来ればそれでいい」
「メストさ……さん」
「それに、俺の報酬でカミルが美味しい料理を作ってくれるなら、俺にとってこれ以上の報酬はない!」
「っ!」
(そんな顔されたら、嫌だなんて言えないじゃない! それに、こんなに多く貰ったら、美味しいご飯くらいいくらでも作れるわよ!)
「……分かりました。お言葉に甘えます」
「あぁ、ありがとう」
メストの笑みと無自覚な甘い言葉に負けたカミルは、気持ちを落ち着かせるように深く溜息をつくとメストから袋を受け取る。
そして、そこからメストの報酬分を抜くと、懐に入れていた財布に大切に仕舞いこんだ。
「では、早速買い物に行ってきますが……メ、メストさんはどうされますか? 一緒に行かれますか? それとも、ここでステインと大人しく待っていますか?」
「そなら、俺も一緒に行く。何を買うかはカミルに任せるしかないが、荷物持ちくらいなら俺にでも出来るはずだ」
「分かりました。では、荷物持ちをお願いします」
「あぁ、任せて欲しい!」
自信に満ちた笑みで自分の胸を叩くメストに、一瞬笑みを浮かべたカミルは、持っていた報酬を荷台へ戻すついでに村人達から預かった硬貨のたくさん入った使い込まれた麻袋とリストを取り出す。
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