木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第2章 木こりと騎士は鍛錬する

第114話 貴族嫌いのカミル

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「『物入り』って……」


 (他人と距離を置くこいつが『物入り』って一体……)

 小首を傾げた店主は、カミルの視線が店内を見て回っているメストに向いていることに気づく。

 (なるほど、『物入り』ってそういうことか)
 
 
「もしかして、あの兄ちゃん、今はあんたの家にいるのか?」
「そういうことです」


 カミルの返事に納得したが店主は、子どものように目を輝かせながら魔石を見ているメストと、そんな彼を家に置いているカミルの変化を微笑ましく思いつつ、買い物かごを手に取るとメストの邪魔にならないよう配慮しつつ商品である魔石を見極め始める。


「それにしても、あんたとあの兄ちゃんが知り合いだったなんて。あんた、貴族のことを心底嫌っているから」
「そうですね。平民を虐げる存在としか思っていない貴族は心底嫌いです」


 店主の隣で一瞬だけ何かに対して酷く憎んでいる顔を見せたカミルを見て、思わず目を見開いた店主は小さく溜息をつくと視線を魔石に戻す。


「まぁ、それはこの国に住んでいる平民は全員思っていることだな。だが、お前さんの貴族嫌いは、俺が知っている限りでは群を抜いている」
「そうですか?」
「ったりめぇだろ。いくら嫌いだからって、貴族出身の騎士様相手に自ら刃を交える平民はあんたぐらいだ」


 (とは言っても、こいつの場合、貴族じゃなくてこの国自体を酷く憎んでいるような気がしてならないんだよな)

 カミルとは長い付き合いになる店主は、普段は淡々としていて、なぜか人と距離を取りたがっているカミルが時折、剥き出しの感情を見せ、それが貴族だけでなくこの国自体を酷く憎んでいるように映っていた。
 
 (そう言えば、こいつと初めて出会った時も目に映る全てを酷く憎んでいる顔をしていたな)

 カミルが初めてこの店に来たときのことを思い出した店主は、今のカミルを横目で見ると手に取っている魔石に視線を移す。


「だから、心底貴族嫌いのあんたが、そこにいる兄ちゃんと知り合いだったのが意外だったんだよ。というか、知っていただろ? 兄ちゃんが貴族出身の騎士だってことくらいは」
「そう、ですね……私が彼と初めて会ったのは、彼が騎士の仕事をしていた時でしたので」


 (本音を言ってしまえば、彼と親しくしている今の状況は大変不本意なんだけどね)

 無表情のまま淡々と答えるカミルに、魔石を見ていた店主はニヤリと笑う。


「へぇ~、知っていて兄ちゃんと買い物をするほどの仲になったのか」
「言い方に悪意を感じますが……まぁ、そんなところです」


 店主の仕事ぶりを見ていたカミルに、小さく溜息をついた店主は仕事の手を止める。
 そして、後ろで手に取った魔石をじっくり観察しているメストの方に視線を向ける。


「でもあの兄ちゃん、今日は仕事が休みなんだろ?」
「そうらしいですよ」
「だったら、婚約者をほったらかしてここで呑気に買い物していてもいいのか?」


 (普通、休日なら婚約者との親睦を深めるためにデートとかするんじゃないのか?)


「さぁ、お貴族様の考えることは、ただの平民でしかない私にはよく分かりません」
「『ただの平民』ねぇ……」


 (それにしては、やけに貴族に詳しい気がするが)

 無表情のカミルに疑惑の目を向けた店主は、大きく溜息をつくとメストに目を向ける。


「そういや、前にあんたから貴族の結婚について教えてもらったな」
「そんなこともありましたね」


『貴族の場合、自家の繫栄を重視しています。つまり、貴族にとって結婚とは、自家がより繫栄するための手段なのです。ですから、お互いの好意が無くても恋人……いや、夫婦になれるのです』


 (そう言えば、そんなことも話したわね)


「だとしたら、今の兄ちゃんが彼女さんをほったらかしにしてここで魔石見ているのも、兄ちゃんが彼女さんに対して好意の無いからか?」


 メストに鋭い目で見た店主に、カミルは小さく肩を竦める。

 (本当はそうであって欲しくはないんだけど)
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