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第2章 木こりと騎士は鍛錬する
第127話 理不尽は喜んで買う
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リリアナの侍女が淹れた紅茶で一息をついたフェビルは、少しだけ面倒くさそうな顔をしながら目の前の姉に視線を向ける。
「それで、本日はどんな御用でこちらに来られたのですか? まさか、世間話をするためにわざわざ騎士団本部はおろか、王都に来られたわけでも無いでしょう?」
「あら、さすがは王国騎士団長。話が早くて助かるわ」
(当たり前だ! 王国騎士団の前に、何年あなたの弟をやっていると思っている!)
不快そうに眉を顰めたフェビルを見て、広げた扇子の奥で満足げに笑ったリリアナは、スッと笑みを顰めると広げた扇子をパチンと閉じる。
「だったら、私たちがわざわざ王都に来たのも分かるわよね? 辺境伯家の次男の自覚があるなら」
「っ!?」
(やはり、この2人はノルベルトに売られた理不尽を喜んで買ったのだ。でも、あれなら……)
身内を相手にしているにも関わらず殺気を放つリリアナに、一瞬頬を引き攣らせたフェビルは軽く咳払いをして気を落ち着かせるとリリアナに視線を戻す。
「ノルベルトが我がシュタール辺境伯家に理不尽な罰を与えた件についてなら、つい先日、ヴィルマン侯爵様のお力添えで撤回されました」
謁見の間でノルベルトから処罰を言い渡された翌日。
フェビルは、シュタール辺境伯夫妻が王都に来るまでに、実家に下された理不尽な処罰だけは撤回させようと、当時謁見の間にいたヴィルマン侯爵……正確には、ヴィルマン侯爵に力を貸しているかの方に頼み込んだ。
その結果、ヴィルマン侯爵の物申しにより、シュタール辺境伯家に下された処罰は撤回されたのだ。
(だが、この2人には俺の使っている情報屋を通して伝えたはず。ならば、どうして王都に来た?)
嫌な胸騒ぎを覚えつつ、フェビルは毅然とした態度で答えると、リリアナの横で静かに聞いていたジェレミが含みのある笑みを浮かべながら口を開く。
「うん、そのことなら聞いているよ。でもさぁ、我がシュタール辺境伯家に対して理不尽に罰を与えようとした事実は変わらないよね?」
「そうよね。撤回されたとはいえ、雑魚が我が家に喧嘩を売ったのは紛れもない事実よね~?」
「っ!?」
(この2人、本当に何しに来たんだ!? まさか、シュタール辺境伯家に喧嘩を売ったことを口実にして、本気で国家転覆を図ろうしているわけじゃないよな!?)
ニコニコしている夫婦が揃って目が笑っていないことに今更ながら気づいたフェビルは、少しだけ肩を震わせると気を落ち着かせようと、ぬるくなった紅茶を飲んでそっとティーカップを置いた。
「ですが、その罰が撤回されたのも事実。ならばここは、素直に受け入れるべきかと……」
「フェビル君」
「っ!」
人の良さそうな笑みを浮かべる義兄から名前を呼ばれ、フェビルはなぜか命の危機を感じた。
「そもそも今回、宰相閣下が我が家に喧嘩を吹っ掛けてきたのは、宰相閣下自身が我が家のことをよく知らなかったからだよね?」
「そ、そうですね」
穏やかな表情のジェレミに宰相閣下について聞かれただけで、フェビルはかつてないほど冷や汗を掻いていた。
そんな彼を見て、笑みを深めたジェレミは王都に来た目的を伝える。
「だったら、この機会に我が家のことを知ってもらおうと思って、こうしてわざわざ夫婦揃って王都にきたんだよ」
「っ!?」
(『知ってもらう』って、一体どうやって知ってもらうつもりなんだ!?)
顔を青ざめさせるフェビルとは対照的に、楽しそうに笑うジェレミ。
そんな彼の話を横で聞いていたリリアナも、楽しそうな笑みを浮かべながら頷く。
「そうそう、今代の宰相閣下は大変頭が残念みたいだから、私たち自らシュタール辺境伯家について手取り足取り教えようと思ったの」
「おや、宰相閣下に手取り足取り教えるのかい? 随分と優しいね」
「だって、残念な頭の持ち主の宰相閣下が、我がシュタール辺境伯家のことをきちんと知ってほしくて」
「確かに、君の言う通りだね。さすが、辺境伯家の娘だよ」
「いやだ~、褒めても何も出ないわよ♪」
何も知らない第三者が聞けば、仲睦まじい2人の会話が『ノルベルトに是非ともシュタール辺境伯家について知って欲しい!』という親切心溢れる微笑ましい会話に聞こえるだろう。
だが、2人の本性を知っているフェビルには、楽しそうに話す2人の会話が『ノルベルトに自分達が被った理不尽の落とし前をつけさせよう』という背筋も凍る物騒な会話にしか聞こえなかった。
(この腹黒夫婦は、本当に久しぶりに吹っ掛けられた『理不尽』という名の喧嘩を喜んで買い、その上でノルベルトにきっちり落とし前をつけさせようと遠路はるばる王都に来たようだ)
「あっ、でも安心して。領地の運営はうちの有能な執事に任せているし、魔物討伐の方は我が家のお抱え騎士団と第二騎士団に任せているから」
「そうよ! 何せ、我がシュタール辺境伯家はペトロート王国の最重要拠点を任されている家だから!」
「そうですか、それを聞いて安心しました」
嬉々として話す腹黒夫妻に対し、満身創痍のフェビルが棒読み気味で答えると、これから激しい報復に遭うであろうノルベルトにほん少しだけ同情した。
「それで、本日はどんな御用でこちらに来られたのですか? まさか、世間話をするためにわざわざ騎士団本部はおろか、王都に来られたわけでも無いでしょう?」
「あら、さすがは王国騎士団長。話が早くて助かるわ」
(当たり前だ! 王国騎士団の前に、何年あなたの弟をやっていると思っている!)
不快そうに眉を顰めたフェビルを見て、広げた扇子の奥で満足げに笑ったリリアナは、スッと笑みを顰めると広げた扇子をパチンと閉じる。
「だったら、私たちがわざわざ王都に来たのも分かるわよね? 辺境伯家の次男の自覚があるなら」
「っ!?」
(やはり、この2人はノルベルトに売られた理不尽を喜んで買ったのだ。でも、あれなら……)
身内を相手にしているにも関わらず殺気を放つリリアナに、一瞬頬を引き攣らせたフェビルは軽く咳払いをして気を落ち着かせるとリリアナに視線を戻す。
「ノルベルトが我がシュタール辺境伯家に理不尽な罰を与えた件についてなら、つい先日、ヴィルマン侯爵様のお力添えで撤回されました」
謁見の間でノルベルトから処罰を言い渡された翌日。
フェビルは、シュタール辺境伯夫妻が王都に来るまでに、実家に下された理不尽な処罰だけは撤回させようと、当時謁見の間にいたヴィルマン侯爵……正確には、ヴィルマン侯爵に力を貸しているかの方に頼み込んだ。
その結果、ヴィルマン侯爵の物申しにより、シュタール辺境伯家に下された処罰は撤回されたのだ。
(だが、この2人には俺の使っている情報屋を通して伝えたはず。ならば、どうして王都に来た?)
嫌な胸騒ぎを覚えつつ、フェビルは毅然とした態度で答えると、リリアナの横で静かに聞いていたジェレミが含みのある笑みを浮かべながら口を開く。
「うん、そのことなら聞いているよ。でもさぁ、我がシュタール辺境伯家に対して理不尽に罰を与えようとした事実は変わらないよね?」
「そうよね。撤回されたとはいえ、雑魚が我が家に喧嘩を売ったのは紛れもない事実よね~?」
「っ!?」
(この2人、本当に何しに来たんだ!? まさか、シュタール辺境伯家に喧嘩を売ったことを口実にして、本気で国家転覆を図ろうしているわけじゃないよな!?)
ニコニコしている夫婦が揃って目が笑っていないことに今更ながら気づいたフェビルは、少しだけ肩を震わせると気を落ち着かせようと、ぬるくなった紅茶を飲んでそっとティーカップを置いた。
「ですが、その罰が撤回されたのも事実。ならばここは、素直に受け入れるべきかと……」
「フェビル君」
「っ!」
人の良さそうな笑みを浮かべる義兄から名前を呼ばれ、フェビルはなぜか命の危機を感じた。
「そもそも今回、宰相閣下が我が家に喧嘩を吹っ掛けてきたのは、宰相閣下自身が我が家のことをよく知らなかったからだよね?」
「そ、そうですね」
穏やかな表情のジェレミに宰相閣下について聞かれただけで、フェビルはかつてないほど冷や汗を掻いていた。
そんな彼を見て、笑みを深めたジェレミは王都に来た目的を伝える。
「だったら、この機会に我が家のことを知ってもらおうと思って、こうしてわざわざ夫婦揃って王都にきたんだよ」
「っ!?」
(『知ってもらう』って、一体どうやって知ってもらうつもりなんだ!?)
顔を青ざめさせるフェビルとは対照的に、楽しそうに笑うジェレミ。
そんな彼の話を横で聞いていたリリアナも、楽しそうな笑みを浮かべながら頷く。
「そうそう、今代の宰相閣下は大変頭が残念みたいだから、私たち自らシュタール辺境伯家について手取り足取り教えようと思ったの」
「おや、宰相閣下に手取り足取り教えるのかい? 随分と優しいね」
「だって、残念な頭の持ち主の宰相閣下が、我がシュタール辺境伯家のことをきちんと知ってほしくて」
「確かに、君の言う通りだね。さすが、辺境伯家の娘だよ」
「いやだ~、褒めても何も出ないわよ♪」
何も知らない第三者が聞けば、仲睦まじい2人の会話が『ノルベルトに是非ともシュタール辺境伯家について知って欲しい!』という親切心溢れる微笑ましい会話に聞こえるだろう。
だが、2人の本性を知っているフェビルには、楽しそうに話す2人の会話が『ノルベルトに自分達が被った理不尽の落とし前をつけさせよう』という背筋も凍る物騒な会話にしか聞こえなかった。
(この腹黒夫婦は、本当に久しぶりに吹っ掛けられた『理不尽』という名の喧嘩を喜んで買い、その上でノルベルトにきっちり落とし前をつけさせようと遠路はるばる王都に来たようだ)
「あっ、でも安心して。領地の運営はうちの有能な執事に任せているし、魔物討伐の方は我が家のお抱え騎士団と第二騎士団に任せているから」
「そうよ! 何せ、我がシュタール辺境伯家はペトロート王国の最重要拠点を任されている家だから!」
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