木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第3章 木こりは距離を縮め、宮廷魔法師は陥れられる

第131話 再会して思うこと

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 木こりの忙しない1日を聞いて、眉を顰めるメストに、カミルはメストが手伝うことで変わったことを話す。

「ですが、あなた様が色々と手伝っていただいたりしたお陰で、あなた様がいる日だけ自由時間が出来るのです」
「それって、風呂から上がった後の読書時間か?」
「そうです」


 (言われてみれば、ここ最近、お風呂から上がったカミルがリビングのソファーで読書をしているところを見かけるようになったな。まぁ、俺もそれに便乗して、宿舎に置いてある自室の本をわざわざ持ってきて一緒に読んでいるんだが)

 すると、何かを思い出したカミルが、頬を赤らめながら慌ててメストから顔を背ける。

 (そう言えば最近、メスト様が私の隣で本を読まれるようになったのよね。それも、肩が触れる距離にメスト様が座られて読書をされるの! 正直、距離が近すぎて本の内容が全く入って来ないんだけど)


「カミル、どうした?」
「い、いえ……ともかく、あなた様が積極的に手伝っていただいてとても感謝しているのです」
「そうか。それなら良かった」


 安堵した笑みを浮かべるメストに、カミルの頬が急に熱くなると、カミルの脳裏に懐かしい記憶が蘇る。


『俺、これが好きなんだ!』
『メスト様、こちらがお好きなのですか?』
『あぁ! この料理は、シチューと同じくらい好きだ!』


 (そうだ、今日の夕飯はあれにしましょう。実はあの料理、私の得意料理だったりするのよね)


「どうした、カミル? 急に黙って」

 
 不思議そうに小首を傾げるメストを見て、小さく首を横に振ったカミルは、シンクに視線を戻す。


「いえ、何でも。それよりも、さっさと片付けましょう」
「そうだな」


 そう言うと、メストは止まっていた手を動かし始める。


 ◇◇◇◇◇


「お願いします」
「はいよ!」

 
 カミルの洗った食器をひたすら拭いていたメストはふと何かを思い出す。

 
「そう言えば、カミルと一緒に鍛錬を始めてから1年が経つな」
「そうですか。時が経つのは早いですね」
「そうだなぁ」


 (ということは、王都でメスト様達と会ってから1年以上経つのね。王都で会った時は、正直『絶対に関わりたくない』と思ったし、今でも関わりたくないと思っている。けれど……)

 感慨深げに微笑むメストの隣で、罪悪感に苛まれたカミルが思わず手を止める。
 すると、それに気づいたメストがカミルの顔を覗き込む。


「カミル、どうした?」
「な、何でもありません……」


 (ち、近いのよ!)
 
 慌てて顔を逸らしたカミルは、火照った体を冷まそうと、シンクに残っている食器をいつも以上に丁寧に洗いながら、鍛錬を通してのメストの成長を振り返る。


「回避技の方は、すっかり身につきましたね」
「そうか? まぁ、最初の頃に比べれば身についたかもしれない。だが、武器を使った回避技がまだまだだ。今朝の鍛錬でも、木刀を使った途端、急に動きがぎこちなくなった」
「確かにそうですね」


 食器を拭いていた手を止め、真面目な顔で自分の未熟な点を反省するメストを見て、小さく微笑んだカミルは汚れ1つない真っ白な皿をメストに渡す。


「それでも、相手の動きに合わせて回避する動きは、最初に比べてだいぶ板についたと思いますよ。それに、私と鍛錬しなくても、1人でも充分身につけられ……」
「いや」


 メストの口から出た拒否の言葉に、カミルは思わず目を見開くと、いつになく真剣な表情のメストが真っ白な皿を受け取ると、そのままシンクに乗せてカミルを見つめる。


「俺はまだ、カミルのような誰かを守れる回避技を身についていない。だから、これからもカミルと一緒に鍛錬がしたい」
「っ!?」


 (そ、そんな顔でそんなこと言われたら、私は……!)

 メストの真っ直ぐな言葉に、一瞬言葉を失ったカミルは、静かに伏せるとそのままシンクに視線を戻し、止まっていた手を動かし始める。


「まぁ、あなた様との鍛錬は有意義なものだと私個人も思っていますので、私としても続けていただけるとありがたいです」
「そうか、ありがとう!」
「何のお礼ですか?」
「俺と同じことを思ってくれたことに対しての礼だ」
「っ!」


 (本当、いきなり何を言っているんだが!)

 メストの言葉に、少しだけ照れたカミルは洗ったばかりの皿をご機嫌な彼に渡すと、蛇口から水の魔石を取り出して蛇口の近くに置く。


「でも本当は、ただ一緒にいてくれるだけで嬉しいんだけど」
「カミル、何か言ったか?」
「いえ、何も。それより、片付けが終わって少し休んだら王都に行きますよ」
「了解!」

 
 拭き終わった食器を棚に戻すメストの満足げな顔に、カミルは優しく微笑んだ。

 そして、少しだけ休んだ2人は王都で木材を納品し、村人達の頼みごとを叶えるべく、森を出るのであった。
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