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第3章 木こりは距離を縮め、宮廷魔法師は陥れられる
第132話 初めての共同作業
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リアスタ村や王都での仕事を終え、カミルと一緒に自主練をしたメストは、手際よく風呂洗いを終えて脱衣所から出ると、料理を作っているカミルの背中越しに顔を覗かせる。
「カミル、風呂洗い終わったぞ……って、何作っているんだ?」
「っ!?」
(ち、近い! そして、いつになってもこの距離感は慣れない自分が悔しい!)
料理を作ることに集中しすぎて、背後に立ったメストの存在に気づかなかったカミルは、至近距離で見る彼の整った顔立ちに思わず頬を赤らめるとサッと手元に視線を戻す。
「ハ、ハンバーグの種を作っています」
「ハンバーグの種?」
「は、はい。きょ、今日は、良いお肉のミンチを買いましたから、それを使ってハンバーグを作ろうかと」
(大丈夫かしら? ちゃんといつも通り話せている? あと、汗臭いなんて思われていないわよね?)
普段眠っているカミルの乙女心が、ここぞとばかりに出てきてカミルの不安をあおる。
だが、そんなことなど知る由もなく、メストはカミルの話を聞いて何かを思い出して納得する。
「あぁ、そう言えばいつもお世話になっている肉屋でミンチを買っていたな。確か、カミルに『兄ちゃん! 今日は良い肉が入ったんだよ!』って声をかけて、それでミンチを買ったんだったな」
「…………」
(それ、私じゃなくてメスト様に声をかけたのだと思う。ここ最近、平民でも親しくしてくれるメスト様のことを、良く思ってくれる平民が多くなったから。ミンチを買ったお肉屋さんの店主様もその1人。メスト様に『兄ちゃん! この肉、実はなぁ……』って熱弁していたし。とはいえ、彼が騎士なのはバレていないけれど)
変な勘違いをしたメストが1人納得しているところを見て、いつもの冷静さを取り戻したカミルは小さく苦笑すると、ボールから手のひらサイズのハンバーグの種を取り出して小刻み良く空気を抜く。
それを背中越しに見ていたメストが、何かを決意してカミルの隣に立つと意を決して声をかける。
「カミル」
「何ですか?」
「もし、良かったら……俺にも手伝わせてくれないか?」
「はい?」
メストからの突然の申し出に、空気抜きをしていたカミルの手が止まる。
すると、視線を逸らしたメストの表情が遠慮がちなものになり、顔の前で大きく手を横に振り始める。
「いや、カミルが邪魔と思うなら別に構わないんだ。だが、もしよかったら手伝わせて欲しい。もちろん、カミルの言うことには絶対に聞く!」
凛々しい表情で騎士の仕事をしているとは思えない、メストの不安げな表所を見て、一瞬口を噤んだカミルは小さく息を吐く。
(まぁ、前々から手伝いたそうな目をしていてから別に良いんだけど)
「良いですよ。その代わり、私の言うことは絶対従って下さい。それと、無理だったら遠慮なくおっしゃって下さい。無理に手伝われても困りますから」
「分かった!」
「それでは早速、手を洗ってください。最初はそこからです」
「了解!」
(何だろう、『手伝わせてもらえる』って分かった途端、一瞬だけ嬉しそうに笑うメスト様が、嬉しそうに尻尾を振っている大型犬に見えたんだけど)
満面の笑顔で手を洗うメストを一瞥し、一瞬だけ微笑んだカミルは、メストが手を洗い終えたタイミングで無表情に戻すと手に持っていたハンバーグの種を真っ白な大皿に乗せる。
そして、ボールに残っているハンバーグの種を全て取り出す。
「これが、焼く前ハンバーグ……『ハンバーグの種』です」
「これが、ハンバーグの種」
「はい。まずはこれを持ってください」
「分かった」
ハンバーグの種を受け取ったメストは、初めて見たハンバーグの種をまじまじと見つめる。
「これが焼く前のハンバーグか。これもカミルが一から作ったのか?」
「はい。ミンチ・小麦粉・卵・みじん切りにした玉葱・塩コショウを入れて混ぜただけですが」
「そうなのか! 騎士団本部にある食堂で焼かれたハンバーグをよく食べているが、焼く前のハンバーグを見たのは生まれて初めてだ」
(まぁ、貴族令息がハンバーグの種を見る機会なんて滅多に無いでしょうし。私もそうだったから)
目を輝かせてハンバーグの種を見るメストが過去の自分と重なり、懐かしいような恥ずかしいような気持になったカミルは、先程大皿に乗せたハンバーグの種を手に取る。
「では今から、ハンバーグの種の空気を抜きます」
「空気を抜くのか?」
「はい。やり方は、両方の手でこうして交互に種を叩きつけます」
「こう、か?」
カミルの動きに倣い、メストは手に持っていたハンバーグの種をゆっくりと左右の手に叩きつける。
「そうです。上手いですね。その調子で空気を抜いていってください。これをするのとしないとでは食感が違いますから」
「そうなんだな。だが、どこでやめればいいんだ?」
首を傾げながら空気抜きをするメストに、カミルは空気抜きをしながら答える。
「それは、私が合図しますからご安心を。それよりも、ハンバーグの種を落とさないでくださいね。あなた様が持っているのは、今日あなた様にお出しするハンバーグなのですから」
「えっ、そうだったのか!? それなら早く行ってくれよ!」
「すみません、言うタイミングを逃していました」
無表情で淡々と謝るカミルに、思わず苦笑したメストはカミルが合図するまでひたすら空気抜きをしていく。
「それくらいで大丈夫です。では、焼いていきますのでこちらにどうぞ」
「おう!」
カミルの合図で空気抜きを終えたメストは、カミルに言われるがままフライパンの前に立つ。
「フライパンには油をひいていますので、横からゆっくりと入れてください」
「こ、こうか?」
初めてのことに戦々恐々としつつ、メストがゆっくりとフライパンの中にハンバーグを入れると、ジュワっといい音が聞えてきた。
「で、出来た」
「良かったですね。後は、焼き目がついたタイミングでひっくり返して、反対側も焼き目がついたら蒸し焼きにして完成です」
「そう、なんだな」
(それにしても初めてのことに緊張しているメスト様、とても可愛かったわ)
疲れた顔をしているメストを見て、小さく笑みを零すカミル。
その後、2人でハンバーグを焼き終えると、仲良くサラダを作り、食卓に並べて、美味しい料理にありついた。
「カミル、風呂洗い終わったぞ……って、何作っているんだ?」
「っ!?」
(ち、近い! そして、いつになってもこの距離感は慣れない自分が悔しい!)
料理を作ることに集中しすぎて、背後に立ったメストの存在に気づかなかったカミルは、至近距離で見る彼の整った顔立ちに思わず頬を赤らめるとサッと手元に視線を戻す。
「ハ、ハンバーグの種を作っています」
「ハンバーグの種?」
「は、はい。きょ、今日は、良いお肉のミンチを買いましたから、それを使ってハンバーグを作ろうかと」
(大丈夫かしら? ちゃんといつも通り話せている? あと、汗臭いなんて思われていないわよね?)
普段眠っているカミルの乙女心が、ここぞとばかりに出てきてカミルの不安をあおる。
だが、そんなことなど知る由もなく、メストはカミルの話を聞いて何かを思い出して納得する。
「あぁ、そう言えばいつもお世話になっている肉屋でミンチを買っていたな。確か、カミルに『兄ちゃん! 今日は良い肉が入ったんだよ!』って声をかけて、それでミンチを買ったんだったな」
「…………」
(それ、私じゃなくてメスト様に声をかけたのだと思う。ここ最近、平民でも親しくしてくれるメスト様のことを、良く思ってくれる平民が多くなったから。ミンチを買ったお肉屋さんの店主様もその1人。メスト様に『兄ちゃん! この肉、実はなぁ……』って熱弁していたし。とはいえ、彼が騎士なのはバレていないけれど)
変な勘違いをしたメストが1人納得しているところを見て、いつもの冷静さを取り戻したカミルは小さく苦笑すると、ボールから手のひらサイズのハンバーグの種を取り出して小刻み良く空気を抜く。
それを背中越しに見ていたメストが、何かを決意してカミルの隣に立つと意を決して声をかける。
「カミル」
「何ですか?」
「もし、良かったら……俺にも手伝わせてくれないか?」
「はい?」
メストからの突然の申し出に、空気抜きをしていたカミルの手が止まる。
すると、視線を逸らしたメストの表情が遠慮がちなものになり、顔の前で大きく手を横に振り始める。
「いや、カミルが邪魔と思うなら別に構わないんだ。だが、もしよかったら手伝わせて欲しい。もちろん、カミルの言うことには絶対に聞く!」
凛々しい表情で騎士の仕事をしているとは思えない、メストの不安げな表所を見て、一瞬口を噤んだカミルは小さく息を吐く。
(まぁ、前々から手伝いたそうな目をしていてから別に良いんだけど)
「良いですよ。その代わり、私の言うことは絶対従って下さい。それと、無理だったら遠慮なくおっしゃって下さい。無理に手伝われても困りますから」
「分かった!」
「それでは早速、手を洗ってください。最初はそこからです」
「了解!」
(何だろう、『手伝わせてもらえる』って分かった途端、一瞬だけ嬉しそうに笑うメスト様が、嬉しそうに尻尾を振っている大型犬に見えたんだけど)
満面の笑顔で手を洗うメストを一瞥し、一瞬だけ微笑んだカミルは、メストが手を洗い終えたタイミングで無表情に戻すと手に持っていたハンバーグの種を真っ白な大皿に乗せる。
そして、ボールに残っているハンバーグの種を全て取り出す。
「これが、焼く前ハンバーグ……『ハンバーグの種』です」
「これが、ハンバーグの種」
「はい。まずはこれを持ってください」
「分かった」
ハンバーグの種を受け取ったメストは、初めて見たハンバーグの種をまじまじと見つめる。
「これが焼く前のハンバーグか。これもカミルが一から作ったのか?」
「はい。ミンチ・小麦粉・卵・みじん切りにした玉葱・塩コショウを入れて混ぜただけですが」
「そうなのか! 騎士団本部にある食堂で焼かれたハンバーグをよく食べているが、焼く前のハンバーグを見たのは生まれて初めてだ」
(まぁ、貴族令息がハンバーグの種を見る機会なんて滅多に無いでしょうし。私もそうだったから)
目を輝かせてハンバーグの種を見るメストが過去の自分と重なり、懐かしいような恥ずかしいような気持になったカミルは、先程大皿に乗せたハンバーグの種を手に取る。
「では今から、ハンバーグの種の空気を抜きます」
「空気を抜くのか?」
「はい。やり方は、両方の手でこうして交互に種を叩きつけます」
「こう、か?」
カミルの動きに倣い、メストは手に持っていたハンバーグの種をゆっくりと左右の手に叩きつける。
「そうです。上手いですね。その調子で空気を抜いていってください。これをするのとしないとでは食感が違いますから」
「そうなんだな。だが、どこでやめればいいんだ?」
首を傾げながら空気抜きをするメストに、カミルは空気抜きをしながら答える。
「それは、私が合図しますからご安心を。それよりも、ハンバーグの種を落とさないでくださいね。あなた様が持っているのは、今日あなた様にお出しするハンバーグなのですから」
「えっ、そうだったのか!? それなら早く行ってくれよ!」
「すみません、言うタイミングを逃していました」
無表情で淡々と謝るカミルに、思わず苦笑したメストはカミルが合図するまでひたすら空気抜きをしていく。
「それくらいで大丈夫です。では、焼いていきますのでこちらにどうぞ」
「おう!」
カミルの合図で空気抜きを終えたメストは、カミルに言われるがままフライパンの前に立つ。
「フライパンには油をひいていますので、横からゆっくりと入れてください」
「こ、こうか?」
初めてのことに戦々恐々としつつ、メストがゆっくりとフライパンの中にハンバーグを入れると、ジュワっといい音が聞えてきた。
「で、出来た」
「良かったですね。後は、焼き目がついたタイミングでひっくり返して、反対側も焼き目がついたら蒸し焼きにして完成です」
「そう、なんだな」
(それにしても初めてのことに緊張しているメスト様、とても可愛かったわ)
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