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第3章 木こりは距離を縮め、宮廷魔法師は陥れられる
第134話 カミルの過去(中編)
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「没落、したのか?」
(カミルを引き取るために、孤児院に対して多額の寄付金をした大貴族が瞬く間に没落したのか?)
貴族として妙に信じられない話を聞き、言葉を失っているメストに対し、ホットミルクで一息ついたカミルが無表情で静かに頷く。
「えぇ、私が引き取られた時は『大貴族』と呼ぶに相応しい家で、その家が治めている領地はとても平和で穏やかなところでした。なにせ、お抱え騎士団が常に領地の見回りをしていたのですから。それに、領民に対して多額の税金を取るようなことをしませんでしたので、その家は領民からとても慕われていました」
「へぇ、その領主貴族はとても有能な貴族だったんだな」
「そう、なんですね。私は平民ですからよく分かりませんが……」
(だがやはり、カミルの1つ1つの所作がとても洗練されている。もしかして、大貴族の家の使用人として働いていたから身についたのか?)
「それに、その大貴族は他国からの移民を積極的に受け入れていました」
「そうなのか!? よく、国王……というより、あの他国嫌いな宰相が許可したな!?」
「そう、なのですね。私にはよく分かりませんが……あと、その大貴族が治めていた領地には孤児院もありました」
「えぇっ!? 孤児院が!?」
(その大貴族、よくもまぁそんな大胆なことが出来たな!? いや、出来たからこそ宰相の反感を買ってしまい没落したのか?)
「はい。何でも、国王陛下からの覚えがめでたかったらしく……他国からの移民を受け入れられたのも、孤児院が出来たのも、全て国王陛下が黙認してくださったからみたいなのです」
「だろうな」
(そうじゃなきゃ、貴族至上主義の宰相閣下がいるこの国で、移民を受け入れることも孤児院を建てることも出来ないはずだ)
王都に来てから、メストはこの国の貴族が目先の利益と保身ばかりに力を入れ、平民のことを人とも思わない様に嫌悪を抱いている。
特に、宰相が懇意にしている貴族に対しては、宰相家令嬢の婚約者にも関わらず懇意にしたいとすら思っていない。
眉間の皺を深くするメストに、カミルは話を続ける。
「加えて、その大貴族が暮らしている屋敷には多くの使用人がいましたが、大半が私のような身寄りのない人達ばかりでした」
「そうだったのか!?」
(大貴族ならば、屋敷の使用人を全て貴族出身の者だけにしてもおかしくないはずなのに!)
驚きのあまり椅子から立ち上がったメストを見てカミルは小さく頷く。
「はい。ですので、孤児院から引き取られた私に対し、屋敷にいる皆様がとても親しくしてくださっただけでなく、無知な私に色んなことを丁寧に教えていただいたのです」
「なるほど。それじゃあ、料理が出来て木が切れて、物腰が丁寧で品のある話し方が出来るのも、全ては教えてもらったからなのか?」
「そうですね」
(まぁ、本当はこの場所に来てから料理も木こりの仕事も教えてもらったんだけど。それでも……)
何かを思い出したカミルは、そっと顔を俯かせる。
「大貴族の家は、居心地が良くて、私にとってかけがえのない家でした。ですので、私を引き取ってくれた人から『没落した』と聞いた時は本当に悲しかったです」
「カミル……」
『どうして、どうして私たちが離れ離れにならないといけないの!?」』
(どうして、離れ離れにならないといけなかったのかしら?)
カミルの思い出したそれは、カミルにとって忘れたくても忘れられない苦い思い出だった。
「ちなみに、没落した原因は何だったんだ? あ、言いたくないなら無理に答えなくてもいい」
「い、いえ……随分前のことですので、没落した原因は忘れてしまいました」
「そ、そうか」
揃って口を閉じた2人の間に重い沈黙が流れる。
すると、何かを思いついたメストが、真剣な表情でカミルを見る。
「なぁ、カミル?」
「何でしょう?」
「もしよかったら、俺がその大貴族について調べようか?」
「えっ?」
メストからの突然の提案に、カミルは一瞬言葉を失う。
「話を聞いた限り、恐らく大貴族の家が没落したのは、宰相閣下の反感を買ったのが原因だと思う」
「そうなのですか?」
「あぁ、あくまで俺の予想だが」
(もうすぐで義理の父にあたる宰相閣下は、自分の意にそぐわない者は嬉々として破滅させる。だから、大貴族の行いを知った宰相閣下が、とことん追い詰めて破滅させたのかもしれない)
神妙な面持ちのメストを見て、一瞬下唇を噛んだカミルは小さく息を吐くと無表情に戻す。
「確かにそうなのかもしれません。ですが、そこまでしなくても良いですよ?」
「そうか? だが、調べておいても損じゃないと思うぞ。こう見えて俺、貴族の息子だからそれなりにコネは持っているから、調べようと思えば調べられる。何だったら、俺の婚約者に頼んで……」
「ダメです!!」
(それだけはダメ! 何が何でも絶対にダメ!!)
『婚約者』という言葉に反応したカミルが、声を荒げながら立ち上がった。
(カミルを引き取るために、孤児院に対して多額の寄付金をした大貴族が瞬く間に没落したのか?)
貴族として妙に信じられない話を聞き、言葉を失っているメストに対し、ホットミルクで一息ついたカミルが無表情で静かに頷く。
「えぇ、私が引き取られた時は『大貴族』と呼ぶに相応しい家で、その家が治めている領地はとても平和で穏やかなところでした。なにせ、お抱え騎士団が常に領地の見回りをしていたのですから。それに、領民に対して多額の税金を取るようなことをしませんでしたので、その家は領民からとても慕われていました」
「へぇ、その領主貴族はとても有能な貴族だったんだな」
「そう、なんですね。私は平民ですからよく分かりませんが……」
(だがやはり、カミルの1つ1つの所作がとても洗練されている。もしかして、大貴族の家の使用人として働いていたから身についたのか?)
「それに、その大貴族は他国からの移民を積極的に受け入れていました」
「そうなのか!? よく、国王……というより、あの他国嫌いな宰相が許可したな!?」
「そう、なのですね。私にはよく分かりませんが……あと、その大貴族が治めていた領地には孤児院もありました」
「えぇっ!? 孤児院が!?」
(その大貴族、よくもまぁそんな大胆なことが出来たな!? いや、出来たからこそ宰相の反感を買ってしまい没落したのか?)
「はい。何でも、国王陛下からの覚えがめでたかったらしく……他国からの移民を受け入れられたのも、孤児院が出来たのも、全て国王陛下が黙認してくださったからみたいなのです」
「だろうな」
(そうじゃなきゃ、貴族至上主義の宰相閣下がいるこの国で、移民を受け入れることも孤児院を建てることも出来ないはずだ)
王都に来てから、メストはこの国の貴族が目先の利益と保身ばかりに力を入れ、平民のことを人とも思わない様に嫌悪を抱いている。
特に、宰相が懇意にしている貴族に対しては、宰相家令嬢の婚約者にも関わらず懇意にしたいとすら思っていない。
眉間の皺を深くするメストに、カミルは話を続ける。
「加えて、その大貴族が暮らしている屋敷には多くの使用人がいましたが、大半が私のような身寄りのない人達ばかりでした」
「そうだったのか!?」
(大貴族ならば、屋敷の使用人を全て貴族出身の者だけにしてもおかしくないはずなのに!)
驚きのあまり椅子から立ち上がったメストを見てカミルは小さく頷く。
「はい。ですので、孤児院から引き取られた私に対し、屋敷にいる皆様がとても親しくしてくださっただけでなく、無知な私に色んなことを丁寧に教えていただいたのです」
「なるほど。それじゃあ、料理が出来て木が切れて、物腰が丁寧で品のある話し方が出来るのも、全ては教えてもらったからなのか?」
「そうですね」
(まぁ、本当はこの場所に来てから料理も木こりの仕事も教えてもらったんだけど。それでも……)
何かを思い出したカミルは、そっと顔を俯かせる。
「大貴族の家は、居心地が良くて、私にとってかけがえのない家でした。ですので、私を引き取ってくれた人から『没落した』と聞いた時は本当に悲しかったです」
「カミル……」
『どうして、どうして私たちが離れ離れにならないといけないの!?」』
(どうして、離れ離れにならないといけなかったのかしら?)
カミルの思い出したそれは、カミルにとって忘れたくても忘れられない苦い思い出だった。
「ちなみに、没落した原因は何だったんだ? あ、言いたくないなら無理に答えなくてもいい」
「い、いえ……随分前のことですので、没落した原因は忘れてしまいました」
「そ、そうか」
揃って口を閉じた2人の間に重い沈黙が流れる。
すると、何かを思いついたメストが、真剣な表情でカミルを見る。
「なぁ、カミル?」
「何でしょう?」
「もしよかったら、俺がその大貴族について調べようか?」
「えっ?」
メストからの突然の提案に、カミルは一瞬言葉を失う。
「話を聞いた限り、恐らく大貴族の家が没落したのは、宰相閣下の反感を買ったのが原因だと思う」
「そうなのですか?」
「あぁ、あくまで俺の予想だが」
(もうすぐで義理の父にあたる宰相閣下は、自分の意にそぐわない者は嬉々として破滅させる。だから、大貴族の行いを知った宰相閣下が、とことん追い詰めて破滅させたのかもしれない)
神妙な面持ちのメストを見て、一瞬下唇を噛んだカミルは小さく息を吐くと無表情に戻す。
「確かにそうなのかもしれません。ですが、そこまでしなくても良いですよ?」
「そうか? だが、調べておいても損じゃないと思うぞ。こう見えて俺、貴族の息子だからそれなりにコネは持っているから、調べようと思えば調べられる。何だったら、俺の婚約者に頼んで……」
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