木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第3章 木こりは距離を縮め、宮廷魔法師は陥れられる

第140話 魔物の襲来

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「どうです、頭痛は収まりましたか?」
「あぁ、カミルが持って来てくれた薬のお陰で収まった。ありがとう」
「いえ、平民の間でも買える頭痛薬が、お貴族様にも効いて良かったです」


 疲労交じりの笑みを見せるメストを見て、内心安堵したカミルは空になった薬袋とガラスのコップを片付ける。

 (あれは一体何だったのかしら?)

 突然頭を押さえて苦しみ出したメストを思い出し、僅かに眉を顰めたカミルは、リビングにある収納棚からハンドタオルを取り出すと、椅子に座ってゆっくりしているメストに渡す。


「どうぞ、これで汗を拭いて下さい。風邪を引かれても困りますから」
「あ、ありがとう」


 遠慮がちに受け取ったメストに、小さく溜息をついたカミルはテーブルにある空のマグカップを2つ手に取る。


「どうやら、相当疲れが溜まっていたようですね。どうします? 明日の鍛錬は止めておきますか?」

 
 すると、ハンドタオルで汗を拭いたメストの目の色が変わる。

 
「いや、それは明日の体調次第で決めていいか? もちろん、無理の時はちゃんと言う」


 (全く、あなたって方は……)

 真剣な目で見つめるメストに、再び小さく溜息をついたカミルは小さく頷く。


「分かりました。明日の鍛錬はあなた様の体調次第ということで」
「ありがとう」
「いえ、このくらいたいしたことではありませんから。それよりも、あなた様は寝てください。マグカップは私の方で片付けておきますから」
「わ、分かった」


 少しだけ呆れ顔なカミルに気遣って、メストは申し訳なさで肩を縮こませる。
 
 (カミルの言う通り、ここ最近、辺境の魔物討伐に駆り出されることが多かった。だから、珍しく疲れが出で、カミルにあんなことを言ってしまったのだろう)


『君は、一体誰なんだ?』


 意識が朦朧している中、重なってしまった2つの顔をメストは思い出す。

 (あの時、どうして銀髪の少女とカミルが重なって見えたのだろう?)

 答えの出ない疑問を抱きつつ、メストは椅子から立ち上がり、二階に繋がる階段の前に立つと、ベレー帽とアイマスクをつけたままキッチンで片付けをしているカミルに声をかける。

 
「それじゃあ、カミル。おやすみ」
「はい、おやすみなさ……」


 片づけを終え、カミルが蛇口を閉めたその時、カミルの胸元から赤い光が放たれた。


 ◇◇◇◇◇

 
「カミル? この光は……っ!?」


 カミルの胸元が赤く輝き出し、驚いたメストがカミルに近づこうとした瞬間、遠くから邪悪な魔力を感じた。
 
 (微かにだが感じる嫌な気配、これはもしかしなくても……!)

 第二騎士団にいた頃から何度も感じ取った魔力に、険しい顔のメスト真っ暗になっている外を睨みつけていると、溜息をついたカミルが胸元からペンダントを取り出すと、それをメストに見せる。


「このペンダントは、この近くに魔物が……現れた時に知らせてくれる魔道具のようなものです」


 (正確には、『幻覚』の効果が付与された結界の中に入ってきた魔物を知らせる魔道具なんだけど)
 
 
「ということは、やはり……」
「はい。どうやら、魔物が出たみたいですね」


 そう返事したカミルが外を睨みつけた途端、窓から馬の鼻先が現れる。


「カミル、あれって……」
「はい。ステインも本能で魔物が現れたことに気づいたのでしょう」
「あぁ、俺も微かではあるが、魔物特有の嫌な魔力を感じる。それも、多数」


 (さすが騎士。ここからでも魔物の気配が分かるなんて)

 険しい表情のまま外を見つめるメストの騎士としての能力の高さに、感心したカミルは玄関先に立てかけてある愛刀のレイピアを手に取る。


「では、私は今から魔物討伐に行ってきます。ですので、あなた様はこのままお休みなって……」
「待ってくれ!!」


 そう言うと、メストは駆け足で階段を上がり部屋に立てかけてあった剣を持ち、小さなマジックバックを腰に巻くと、そのまま階段を駆け降りてカミルのもとに戻ってきた。
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