木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第3章 木こりは距離を縮め、宮廷魔法師は陥れられる

第150話 会議は踊る

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 ダリアがその場にいた宮廷魔法師達を敵に回すことを言った瞬間、会議室の奥から彼女の名前を呼ぶ声が聞こえた。


「ダリア!」


 (あんた、いい加減にしなさいよ!)

 堪忍袋の緒が切れたカトレアは、怒鳴るように親友の名前を呼んで睨みつけると、不機嫌そうに顔を顰めたダリアがカトレアに鋭い視線を向ける。


「何? 宰相家令嬢である私に意見するつもり?」
「あんたって人は……!」


 (今日という今日は絶対に許さない!)

 カトレアの怒りに呼応するように、他の宮廷魔法師達もダリアを睨みつける。


「何よ、あんた達も宰相家令嬢の私に楯突くつもり?」

 
 殺気の籠った視線を不快に思ったダリアは、扇子を閉じると殺気を放ちながらその場にいる宮廷魔法師達全員を威嚇する。
 そうして、会議室が一触即発の空気に包まれた時、団長のわざとらしい咳払いが会議室に響き渡る。


「コホン! 一先ず、この件をあなた様に預けて良いか、あなた様のお父上にお伺いを立ててもよろしいでしょうか?」


 すると、『お父上』という言葉を聞いたダリアは、殺気を放つのを止めるとルベルに向かってニンマリと笑う。
 
 
「それなら、私の方からお父様に直接お伺いを立てるから安心して頂戴♪」
「ですが、わざわざあなた様の手を煩わせることは……」
「あら」


 ルベルの言葉を遮ったダリアは、加虐的な笑みを浮かべるとルベルに鼻先がつく距離に顔を近づける。


「そんなに私の手を煩わせることを心配するなんて……お父様に言えないことでもあるのかしら?」
「「「「「っ!?」」」」」


 (ダリア、それ以上は……!)

 見下すような目でルベルを見つめるダリアに、カトレアを含めた宮廷魔法師達の顔色が一気に青ざめる。
 すると、宰相家令嬢に詰め寄られたルベルは、誰もが見惚れるような笑みを浮かべると小さく首を振る。


「いえ、ただ純粋にお手を煩わせることを申し訳なく思っただけですよ」
「そう、それなら良いわ」


 満足げに笑ったダリアが、ルベルの頬に口付けをすると唖然としているカトレアに声をかける。


「あっ、カトレア! 王宮に今日の会議資料と今日の会議についての報告書持ってきてね~!」
「はぁ!? どうして私が……!」
「それじゃあ、お父様にこの件を私が預かっていいか聞いておくわね♪」
「はい。お手を煩わせてしまし大変申し訳ございませんが、よろしくお願い致します」
「は~い♪」
「ちょ、ダリア! 待って……!」


 カトレアの制止も聞かぬまま、無邪気な笑顔を振りまいたダリアは『一仕事終えた』とばかりに意気揚々と会議を後にする。


 ◇◇◇◇◇

 
「全く、会議に乱入してきたかと思えば、散々引っ掻き回した挙句、仕事を増やしてくれちゃって!」


 (この前の魔物討伐の事後処理に奔走していたせいで、溜まっている仕事が多いっていうのに!)
 
 嵐のような会議を終え、心底疲れたカトレアは、思わず机に突っ伏すとダリアに対しての愚痴を零す。
 すると、頭上から上司の声が振ってきた。


「カトレア」
「ル、ルベル団長!」


 ルベルに呼ばれて慌てて立ち上がったカトレアは思い切り頭を下げる。


「申し訳ございません! 私の管理能力が甘かったのと、ダリアの……インベック公爵令嬢の『執務室でもう少し寛いでから帰るから』という言葉をうのみにしたせいで、会議を滅茶苦茶にしてしまい……」
「いや、良い。お前が悪くないことくらい最初から分かっている。むしろ、疑うようなことを聞いてしまってすまなかった」
「団長……」


 ゆっくりと頭を上げたカトレアに、ルベルは申し訳なさそうな顔で視線を外すと頬を掻く。


「本当は、上司である俺が彼女を対応するべきなのだが、彼女が『お前じゃないとダメだ!』と言い出すから……すまない、宮廷魔法師としての仕事もあるだろうに毎度インベック公爵令嬢の相手をさせてしまい」
「い、良いんです! むしろ、団長の采配にとても感謝しているのです!」


 (団長が私専用に執務室を用意していただいたお陰で、お陰で、他の宮廷魔法師達に迷惑がかからなくなったのだから)

 深々と頭を下げるルベルに、カトレアが慌てたように両手を激しく横に振ると、顔を上げたルベルが心底安堵した顔をする。


「そうか。それなら、お前の上司としてやれることをやって良かった」
「団長……」


 (ルベル団長は、いつだって国や団員のことを思って行動してくださる。そんな団長の気遣いに、私は幾度となく救われている)

 宮廷魔法師団入団と同時に『稀代の天才魔法師』という2つ名を貰い、周囲から距離を置かれようとしたカトレアを救ったのは、他でもないルベルだった。


『お前達! 大層な2つ名を貰っているが、こいつは今日からお前達と同じ宮廷魔法師だ! そのところを忘れるな!』
『『『『『『はい!』』』』』』
『そして、カトレア! お前は今日から新米宮廷魔法師だ! 大層な2つ名を持っているようだが、俺はこいつらと同じ扱いをする! 特別扱いされると思ったら大間違いだからな! 覚悟しろよ!』
『は、はい!』 
 
 
 ルベルの厳しく温かい気遣いに、最初は怖気づいていたカトレアだったが、次第に他の宮廷魔法師達と話せるようになり、他の宮廷魔法師達もカトレアを宮廷魔法師団の一員として接するようになった。
 
 (私に個室を与えられるようになった時も、わざわざルベル団長が皆に説明してくれたのよね)
 
 そんな懐かしいことを思い出したカトレアは、ルベルの言葉に胸を温かくしていると、ルベルが申し訳なさそうな顔をする。


「それでカトレア、すまないが今日の会議のことを書記役の奴と一緒に纏めてくれないか? インベック公爵令嬢がお前をご指名だから」
「分かりました」


 (団長は宮廷魔法団のために体を張ってくれた。ならば、私も団長の部下としてこの無茶ぶりをこなさないと)
 
 深々と頭を下げるカトレアに、僅かに顔を歪ませたルベルは隊長格の宮廷魔法師に呼ばれると会議室を後にした。

 その後、カトレアは書記役の宮廷魔法師と共に会議の報告書を纏め上げた。
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