木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第3章 木こりは距離を縮め、宮廷魔法師は陥れられる

閑話 私の小間使い(後編)

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 ※カトレア視点です。



「どうして、いつも仮面をしているの?」


 私の問いに少しだけ部屋に沈黙が流れた。そして、テオがいつものように淡々と答えた。


「昔、孤児院にいた時に大規模な火災が起きまして、その時に顔に大きな火傷を負ってしまったのです」
「えっ!?」


 テオに、そんな過去が……私の小間使いになってしばらく経つけど、全く知らなかったわ。
 いや、私が彼のことを今の今まで知ろうとしなかっただけだった。
 だって、彼はだから。

 テオの思わぬ過去に啞然としつつも、私は彼に質問を続けた。


「そっ、それじゃあ……その仮面をつけているのは、その傷を隠すため?」
「そうですね。あと、魔法師見習いになるにあたって宮廷魔法師様……あっ、カトレア様ではありませんよ。カトレア様とは別の宮廷魔法師様から、この仮面をつけることを義務付けられたのです」
「義務付けられた?」
「はい。何でも『貴族出身である宮廷魔法師に対して、貴様の醜い顔を見せるのは失礼に値する』と」
「っ!? そっ、そうだったのね……」


 そんなにも酷い傷を……私としては、仮面の下の顔を見てみたい。
 そして、彼はきっと私に素顔を見せてくれるだろう。
 何となくだけど、そんな気がする。
 でも、それは私が宮廷魔法師であり、彼が魔法師見習いだから。
 それでは、仮面で隠している彼の気持ちを踏みにじってしまうから止めておこう。
 決して、そんな下らないことを言った宮廷魔法師に賛同したわけではない。

 テオの過去を初めて聞いた私は、いたたまれない気持ちになり、彼が淹れてくれた紅茶を飲んで心を落ち着けた。


「……ごめんなさい、辛いことを思い出させるようなことを聞いてしまって」
「構いません。むしろ、今の今まで聞かれなかったことが不思議でしたから」
「そう、ね」


 静かに視線を落とした私は、茶色の液体に映った申し訳なさそうな顔をしている自分と目を合わせた。
 そんな私に気遣ったのか、テオは黙って頭を下げると部屋の掃除を再開した。

 本当、気遣いが上手い小間使いね。

 粛々と窓ふきをするテオを見て、小さく笑みを浮かべた私はゆっくりと頬杖をついた。


「ねぇ」
「はい」


 こちらを見ないまま雑巾で窓を拭くテオに、頬杖を止めた私は一瞬噤んだ口を開いた。


「もし……もしよかったら、私があなたに魔法を教えてあげる。あなたの魔力量なら多分、中級でも……」
「お構いなく」
「えっ?」


 思わぬ返事を聞いて驚く私に対し、窓ふきの手を止めたテオがゆっくりとこちらを見た。


「『稀代の天才魔法師様』に魔法を教えてもらったと宮廷魔法師団内に知られれば、他の宮廷魔法師様方が黙っていないと思いますから」
「そっ、そうだったわね! 分かった」


 そもそも、宮廷魔法師が魔法見習いに魔法を教えちゃダメだった。

 この国では当たり前のことを窓ふきが終わって片づけを始めたテオに教えてもらい、私は恥ずかしさを誤魔化そうと苦笑した。

 しかし、その翌日。私は、ダリアが放った火属性の中級魔法に対して、テオが風属性ではなく水属性の中級魔法で相殺する瞬間を目の当たりにする。
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