木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第3章 木こりは距離を縮め、宮廷魔法師は陥れられる

第152話 初めての共闘(前編)

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 ――カトレアが魔物討伐の召集に応じていた頃、月明かりが差し込む森の中で、探知魔法が付与された鞍型魔道具をつけて疾走していたステインに跨っていたカミルは異形のものを発見する。


「見つけました」
「あぁ、ここからだと辛うじて形しか見えないが、向こうから感じる嫌な魔力を尋常じゃないくらいに多い」


 遠くから感じる魔物の強い気配に、強化魔法を使ってステインに並走していたメストの顔がより険しくなると、ステインの足が立ち止まった。

 
 「どうした、ステイン?」


 立ち止まったステインに気づいたメストは、強化魔法を解いて足を止めると首を傾げる。
 すると、ステインから颯爽と降りたカミルがステインの鬣を撫でる。


「この子の役目は、私を魔物のいる場所まで連れて行くことです。それに、あなた様の相棒と違って、魔物の中に入って主をサポートする度胸はありません。ですから、ステインとはここでお別れです」
「そういうことか」


 (魔物がいる森の中を怖気づくこともなく走っていたから、てっきりカミルと一緒に戦うのかと思った)

 ステインの勇敢さを少しだけ勘違いしたメストは、納得したように頷くとステインを優しく撫でる。


「お疲れ様、ステイン。ここからは、俺たちの出番だから、安全な場所まで下がっておけよ」


 労をねぎらってくれるメストに、気を良くしたステインが軽く鼻を鳴らすと来た道を戻って行った。


 ◇◇◇◇◇


「ステイン、本当に良い子だな」
「えぇ、頼りになる私の相棒です。さて……」


 ステインの後姿を見送ったカミルとメストは、表情を引き締めると魔物の方に目を向ける。


「おぼろげだった姿が、いつの間にかはっきりに見えますね。とはいえ、あちらはまだ、私たちの存在に気づいていないようですが」
「そうだな。だが、今回の現れた魔物の数は、1年前に現われた魔物の数を遥かに超えていると思うぞ」
「そのようですね」


 すると、カミルがメストに作戦を提案する。


「では作戦として、私が前衛、あなた様は後衛で魔物を屠っていくということで良いですね?」
「えっ!? だったら、騎士として常に前に立っている俺の方が前衛をした方が良いだろうが」


 カミルから後衛役を任されてメストが困惑していると、無表情のカミルが小さく首を横に振る。


「いいえ、私と違って魔法を使えるあなた様を後衛役にした方が良いです」
「た、確かに……」


 (この場で魔法が使えるのは俺だけ。なら、俺が後衛役になるのは必然だな)
 
 
「それに、私が前衛として魔物の数を減らし、あなた様が後衛として戦況を見極めながら魔法を放った方が効率良いでしょう」
「そう……だな。そういうことなら引き受けよう」

 
 そう言って、後衛役を任されたメストは、片手剣を鞘から引き抜いて魔力を練り始めると隣にいるカミルを一瞥する。
 
 (正直、この2人で大勢の魔物を相手にするのは骨が折れる。だが、騎士として村人を守るためにもやるしかない!)


「では、行きますよ」
「あぁ、後ろは任せておけ!」

 
 メストの頼もしい言葉に背中を押され、鞘からレイピアを引き抜いたカミルは、足元に纏わせた魔力を弾け飛ばすと、レイピアの切っ先を真っ直ぐにしたまま魔物の群れの中に突っ込んだ。


 ◇◇◇◇◇


「グガガアッ!」

 
 リアスタ村に前進していた魔物達が2人を認識した途端、群れの中に突っ込んできたカミルが、近くにいた数体の魔物を一瞬で屠る。

 (すごい! これがカミルの実力! 足元に爆散させた魔力の勢いに任せ、魔物の群れの中に突っ込むと同時に怯んだ魔物達を何の躊躇いも無く屠るとは!)


「って、見惚れている場合じゃない!」


 (カミルから後衛を任されたんだ! 騎士として、己に課せられた務めを果たさなくては!)

 カミルの刹那の戦いぶり、一瞬だけ見惚れていたメストは、小さく頭を振ると魔物達の意識がカミルに集中している隙に水色の魔法陣を展開して魔法を放つ。


「《アイスニードル》!」
「「「「「グガガガアッ!!!!」」」」」

 
 水色の魔法陣から放たれた無数の氷の針は、カミルの背後を取ろうとする魔物達をあっという間に倒す。
 すると、メストの存在に気づいた虎型の魔物がメストに飛びかかる。


「ハァッ!!」
「グガッ!」


 飛びかかってきた魔物を片手剣であっさり屠ったメストは、カミルが魔物の群れから距離を取った隙に、今度は空に向かって魔法陣を展開する。


「《アイスレイン》!」
「「「「「グガガガアッ!!!!」」」」」



 魔物の群れの現れた魔法陣から降ってきた氷雨は、その場にいた魔物達の一瞬にして魔石に変える。
 すると、氷雨を逃れた赤い瞳をした狼型の魔物が、メストに向かって大きく口を開くと赤い魔法陣を展開する。

 (チッ、間に合うか!?)

 一瞬苦い顔をしたメストは、魔物の攻撃を防ごうと魔物に向かって手を翳す。
 その時、どこからかともなく詠唱にも似た何かを呟く声がメストの耳に届く。


「《直接干渉》」


 その瞬間、魔物が展開していた魔法陣が

 (今、一体何が起こった?)

 突然のことに啞然したメストの前で、カミルは魔法陣が消えて怯んでいる魔物の頭をレイピアで突き刺す。
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