木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第3章 木こりは距離を縮め、宮廷魔法師は陥れられる

第153話 初めての共闘(中編)

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 目の前で魔物を屠ったカミルに、メストは思わず声をかける。


 「カミル、今のって……?」


 (もしかして、詠唱か?)

 カミルが何か言った直後、魔物が展開していた魔法陣が消えたところを目の当たりにしたメストは、啞然とした表情で問い質すとレイピアについた血を振り払ったカミルがメストに冷たい視線を向ける。


「何を気抜いているのですか? 魔物はまだまだいるのですよ。私との約束、破る気ですか?」
「あっ」


 その時、魔物討伐に行く前の約束がメストの脳裏に蘇る。
 
 
『絶対、死なないでくださいね』


 (そうだ、ここは魔物の群れの中。気を抜いている暇はない)

 カミルとの約束を思い出し、思いっきり自分の頬を叩いて気合を入れ直したメストは、近づいてくる魔物の群れに視線を向ける。


「すまん、カミル。気を抜いていた。ありがとう」
「いえ、お礼はリアスタ村に近づいてくる魔物達を一匹残らず屠ってからにしてください」
「あぁ、そうさせてもらう!」

 
 いつもの無表情で眼前の魔物達を見据えるカミルを一瞥し、一瞬笑みを浮かべたメストはすぐさま笑みを潜めるとマジックバックからブレスレットを取り出す。
 それは、魔法陣の中に書かれている魔法式をそのまま刻んだ魔道具で、魔力を込めるだけで不得意な属性魔法でも簡単に放てる優れ物である。


「カミル、今度は俺が魔物の群れに穴を開ける。その直後に魔物の群れの中に入れ」
「分かりました」


 軽く頷いたカミルを横目で見たメストは、ブレスレットを嵌めるとそのまま魔物達に向かって手を翳す。


「よし、行くぞ! 《ウインド》! 《アイスショット》!」


 風属性の初級魔法と氷属性の中級魔法を連続で放った瞬間、近づいてくる魔物の群れに大穴を開けられ、その穴に向かって足元に纏わせていた魔力を弾け飛ばしたカミルが入っていき、襲ってくる魔物達を次々と屠っていく。


 ◇◇◇◇◇


「《アイスブラスト》!」
「グガッ!」


 魔物討伐が再開してしばらく、周囲にいた魔物達を氷瀑して一掃したメストは、眼前まで迫ったが魔物達の攻撃を紙一重で避けると片手剣で仕留める。
 すると、近くで魔物を屠っていたカミルが駆け寄ってきた。


「どうやら、鍛錬の成果が出ているみたいですね」
「あぁ、お陰様で!」


 目の前に現れた熊型魔物の大振りの攻撃を二手に分かれて避けたカミルとメスト。
 そして、メストが素早く魔法陣を展開して魔法を放つ。


「《アイスバインド》!」
「ガッ!」


 氷の鞭で魔物の巨体を首まで氷漬けにした刹那、大きく飛び上がったカミルがレイピアで魔物の頭を突き刺す。
 そして、魔物が魔石に変わると同時に合流した2人は背中合わせで周囲を警戒する。


「さすが騎士様。周囲を警戒しつつも、私の動きに合わせて魔法を放ったり、片手剣で攻撃していたりと、状況に合わせて臨機応変に魔物達を屠っていますね」
「当たり前だ。騎士たる者、その場の状況に合わせて魔物を討伐するのは当然のこと!」


 そう叫んだメストは、爪を立てて襲ってきた魔物を屠ると、次々と襲ってくる魔物の攻撃を紙一重で躱して片手剣で屠っていく。


「そうですね。それが騎士として当たり前の姿なのかもしれませんが……私には、王都にいる騎士様達が、あなた様と同じ動きが出来るとは思えません」
「それに関しては、大変不本意ながら同意する!」


 そんな会話をしながらもカミルとメストは、襲ってくる魔物達を次々と魔石に変えていく。
 だが、メストは魔物の数が減らない状況に危機感を覚える。

 (チッ、このままでは魔物達が全滅する前にこっちが全滅してしまう)


「こうなったら……カミル、一旦後退だ!」
「はい」
「《アイススモーク》!」
「「「「「グガガガガガッ!!!!」」」」」
 

 マジックバックから魔道具を取り出したメストは、すぐさま魔力を流して氷属性の上級魔法を放ち、魔物達を凍える霧の中に閉じ込める。
 その隙に、カミルとメストは魔物の群れから一気に距離を取った。


「ふぅ、とりあえず後退したが……ここから村まではかなり距離があるから大丈夫だよな?」
「はい。問題無いかと」
「そうか」


 (ここで一旦体勢を整えないと、ここから先がきつくなる)
 
 第二騎士団にいた頃、幾度となく長期戦の魔物討伐を経験したメスト。
 だが、そんな彼でも今回の魔物討伐はかなり過酷なものだった。

 そんな彼の酷く疲れた顔を見て、カミルは何かに気づく。


「それよりも、そろそろ魔力が切れてきているのでは?」
「あぁ、そうだな」
「でしたら、こちらを飲んでください」


 そう言って、カミルは腰に巻いていた小さなバッグから取り出した液体入りの細長い瓶をメストに差し出す。


「これは……マナポーションじゃないか! こんな良い物をもらっても!?」
「構いません。後衛として私の動きに合わせて魔法を放ち続けているあなた様が飲むべきだと思いますから」
「だが、俺がこれを飲んでしまうとカミルの魔力が……」

 
 カミルとマナポーションを交互に見たメストは、差し出された物を受け取ろうか躊躇ったが、それを見て心底呆れたカミルから強引に手首を掴まれて、持っていたポーションを手のひらに乗せられた。


「対して使っていませんのでお気になさらず」
「だが……」
「それに、マナポーションは1つしか持って来ているわけではありませんから」
「そ、そうか。それなら、お言葉に甘えて」


 (そもそも、平民のカミルがどうして高級なマナポーションを持っているんだ?)

 実は、カミルがメストに渡したのは、エドガス直伝のオリジナルマナポーションだった。
 もちろん、魔力は回復する。
 
 そんなことなど知る由もないメストは、強引に受け取った細長い瓶の中に入った液体を一気に飲み干す。
 すると、瞬く間に魔力が回復した。


「ありがとう、カミル。お陰で回復した」
「いえ。このくらい、たいしたことではありませんから。それよりも、魔物討伐の続きをしましょう」
「そうだな、そろそろ霧が晴れてくるだろうし」


 消費した魔力を一気に回復させたメストは、氷の霧が晴れたタイミングで群れの中に飛び込んだカミルと共に魔物討伐を再開する。
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