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第3章 木こりは距離を縮め、宮廷魔法師は陥れられる
第155話 宮廷魔法師の参戦
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カミルと共に地面に伏せたメストが氷の甲羅で覆った瞬間、空から女性の声が聞こえた。
「《インフェルノ》!」
女性が詠唱した火属性の上級魔法の業火は、轟音と共に周囲にいた数多の魔物を一匹残らず魔石に変えた。
(すごい、あんなにいた魔物達が一瞬でいなくなった。それに、空から聞こえた女性の声。もしかして……)
凄まじい威力の炎の威力に、メストが作り出した氷の甲羅はあっという間に解け、メストに庇われるように地面に伏せたカミルは、一瞬にして変わった光景と空から聞こえた女性の声に言葉を失う。
すると、カミルの耳でカミルを気遣うような声が入ってきた。
「大丈夫か。カミル?」
「っ!? だ、大丈夫です」
いきなりメストから耳元で囁かれ、頬を染めたカミルは聞こえるか聞こえないかの小さな声で返事をして地面に突っ伏す。
(緊急事態だったからって、メスト様とこんな近距離なんて心臓が持たないわ!)
魔物討伐でそれどこじゃないと分かっていても、背中で感じるメストの体温と逞しい筋肉がどうしても気になってしまうカミルは、いつもよりうるさい心音がメストに聞こえないか心配で堪らなかった。
すると、空から男性達の声が辺り一帯に響る。
「《ウォーターレイン》」
「《ウィンドトルネード》」
すると、空からバケツをひっくり返したような豪雨が降ったかと思えば、木々をなぎ倒すような暴風が吹き荒れ、辺り一帯を燃やしていた炎が瞬く間に消える。
「どうやら、宮廷魔法師達は来てくれたお陰で、ここら一帯の魔物は一掃されたみたいだ」
「え、えぇ……そのようですね」
(どうやら、メスト様には気づかれなかったみたい……って、今はそうじゃなくて!)
辺りを警戒していたメストは、ゆっくりと体を起こして立ち上がると、下敷きになっていたカミルに手を伸ばして立ち上がるのを手伝った。
「ありがとうございます」
「いや、別にこのくらいどうってことない」
優しく微笑むメストに、少しだけ胸を高鳴らせたカミルは、慌てて視線を逸らして魔物がいなくなった光景を改めて目の当たりにする。
(さすが、魔法のエキスパート。あんなにいた魔物の群れを一瞬で全滅させるなんて)
国防の一翼を担う宮廷魔法師達の実力に感心したカミルだったが、木の焼けた匂いが鼻腔を擽り、思わず顔を歪める。
(この森には、多くの野生動物達が暮らしている。とはいえ、魔物が現れると、動物達は本能に従ってすぐさま逃げ出すから、彼らが魔物に食われることは滅多にない。それでも……)
燃えてなくなった木々達を見て、カミルの脳裏に在りし日の会話が蘇る。
『ねぇ、あなただって火属性の魔法は使えるのでしょ?』
『残念ながら魔法は使えません。ですが、火を操ることは出来ますよ』
『ふ~ん』
(そう言って、私と一緒に森で鍛錬をしていたエドガスは、持っていた短剣に向かって詠唱のようなものを唱え、短剣の切っ先から火を出して見せてくれた)
『凄いわね。でも、どうして魔物討伐の時に火を使わないの? 燃やせばあっという間に終わるでしょ?』
『それはですね、ここに住む動物達のためです』
『動物?』
(『どういうこと?』小首を傾げる私に、朗らかな笑みを浮かべたエドガスが森を見渡す)
『はい。この広大な森には、たくさんの動物達が暮らしています。ですので、彼らの暮らす場所を残すために、魔物討伐の時は火を使わないのです』
『だとしたら、どうやって倒すのよ?』
『フフッ、それは先程、お見せしたではありませんか』
『あれで、魔物を倒すの?』
『はい、そうです』
(不機嫌そうな顔で頬を膨らませていた私を見て、エドガスは楽しそうに笑っていたわね)
夜の帳が降りている森の中では、業火が放たれた後の惨状を確認することは出来ない。
それでも、亡き恩人との会話を思い出したカミルは、彼が守っていた森がこうもあっさりと焼き払われたことに悔しさを滲ませる。
(魔物を屠るためには仕方のないことだと分かっている。それでも……!)
『しばらくの間、動物達がこの森に暮らせないな』と思いつつ、僅か苦い顔をしたカミルは、魔物がいなくなった場所を静かに睨みつける。
すると、遥か遠くから魔法を放つ音が聞えてきた。
「《ライトニング》!」
「《ストーンバースト》!」
「《ウィンドブラスト》!」
「《アイスジャベリン》!」
「《ウォーターウェーブ》!」
魔物達の絶叫とともに数多の魔法が放たれて森を明るく光景に、カミルは無意識のうちに作っていた拳を強く握る。
すると、カミルの隣で険しい顔をしたメストがおとしていた得物を拾う。
「カミル」
「何ですか?」
「今から俺、宮廷魔法師団の応援に行ってくる」
その言葉に、カミルは僅かに眉を顰める。
「あなた様、今休暇中なのですよね?」
「あぁ、そうだな」
「それなのに、宮廷魔法師団の応援に行くのですか?」
「そうだな」
「こう言っては何ですが、あなた様が行かなくても、宮廷魔法師の皆様がここら一帯の魔物を討伐するのでは?」
(だから、行ったところで無駄だと思いますが)
いつもより棘のある言葉で引き止めるカミルに、メストは小さく笑みを浮かべる。
「確かに、休暇中の俺が行ったところで、無駄足に終わるかもしれない。それでも……」
持っていた得物に力を込めたメストは、凛々しい顔で眼前を睨みつける。
「俺は、この国の騎士として己に課した使命を全うしたい」
「っ!?」
メストの言葉を聞いて、カミルは一瞬目を見開くと小さく溜息をついた。
(全く、あなたって人はどこまで真面目な人なのだろう)
ほんの少しだけ口角を上げたカミルは、足元に転がっていたレイピアを手に取る。
「でしたら、私も行きます」
「えっ? でも、さっきの魔物討伐で随分と疲れたんじゃ……」
「でもそれは、あなた様だって同じですよね?」
「それは、そうだが……」
「それに、私もバカではありませんから、足手纏いと分かった瞬間にステインを呼んで逃げますよ」
そう言って振り向いた瞬間、森の奥からステインが一直線に走ってきた。
「ハハッ、そうだったな。カミルには頼もしい相棒がいたんだった」
「えぇ、それに……」
颯爽と現れたステインに跨ったカミルは、メストの言った言葉をそのまま返す。
「私も、自分に課した使命を全うしようと思います」
「《インフェルノ》!」
女性が詠唱した火属性の上級魔法の業火は、轟音と共に周囲にいた数多の魔物を一匹残らず魔石に変えた。
(すごい、あんなにいた魔物達が一瞬でいなくなった。それに、空から聞こえた女性の声。もしかして……)
凄まじい威力の炎の威力に、メストが作り出した氷の甲羅はあっという間に解け、メストに庇われるように地面に伏せたカミルは、一瞬にして変わった光景と空から聞こえた女性の声に言葉を失う。
すると、カミルの耳でカミルを気遣うような声が入ってきた。
「大丈夫か。カミル?」
「っ!? だ、大丈夫です」
いきなりメストから耳元で囁かれ、頬を染めたカミルは聞こえるか聞こえないかの小さな声で返事をして地面に突っ伏す。
(緊急事態だったからって、メスト様とこんな近距離なんて心臓が持たないわ!)
魔物討伐でそれどこじゃないと分かっていても、背中で感じるメストの体温と逞しい筋肉がどうしても気になってしまうカミルは、いつもよりうるさい心音がメストに聞こえないか心配で堪らなかった。
すると、空から男性達の声が辺り一帯に響る。
「《ウォーターレイン》」
「《ウィンドトルネード》」
すると、空からバケツをひっくり返したような豪雨が降ったかと思えば、木々をなぎ倒すような暴風が吹き荒れ、辺り一帯を燃やしていた炎が瞬く間に消える。
「どうやら、宮廷魔法師達は来てくれたお陰で、ここら一帯の魔物は一掃されたみたいだ」
「え、えぇ……そのようですね」
(どうやら、メスト様には気づかれなかったみたい……って、今はそうじゃなくて!)
辺りを警戒していたメストは、ゆっくりと体を起こして立ち上がると、下敷きになっていたカミルに手を伸ばして立ち上がるのを手伝った。
「ありがとうございます」
「いや、別にこのくらいどうってことない」
優しく微笑むメストに、少しだけ胸を高鳴らせたカミルは、慌てて視線を逸らして魔物がいなくなった光景を改めて目の当たりにする。
(さすが、魔法のエキスパート。あんなにいた魔物の群れを一瞬で全滅させるなんて)
国防の一翼を担う宮廷魔法師達の実力に感心したカミルだったが、木の焼けた匂いが鼻腔を擽り、思わず顔を歪める。
(この森には、多くの野生動物達が暮らしている。とはいえ、魔物が現れると、動物達は本能に従ってすぐさま逃げ出すから、彼らが魔物に食われることは滅多にない。それでも……)
燃えてなくなった木々達を見て、カミルの脳裏に在りし日の会話が蘇る。
『ねぇ、あなただって火属性の魔法は使えるのでしょ?』
『残念ながら魔法は使えません。ですが、火を操ることは出来ますよ』
『ふ~ん』
(そう言って、私と一緒に森で鍛錬をしていたエドガスは、持っていた短剣に向かって詠唱のようなものを唱え、短剣の切っ先から火を出して見せてくれた)
『凄いわね。でも、どうして魔物討伐の時に火を使わないの? 燃やせばあっという間に終わるでしょ?』
『それはですね、ここに住む動物達のためです』
『動物?』
(『どういうこと?』小首を傾げる私に、朗らかな笑みを浮かべたエドガスが森を見渡す)
『はい。この広大な森には、たくさんの動物達が暮らしています。ですので、彼らの暮らす場所を残すために、魔物討伐の時は火を使わないのです』
『だとしたら、どうやって倒すのよ?』
『フフッ、それは先程、お見せしたではありませんか』
『あれで、魔物を倒すの?』
『はい、そうです』
(不機嫌そうな顔で頬を膨らませていた私を見て、エドガスは楽しそうに笑っていたわね)
夜の帳が降りている森の中では、業火が放たれた後の惨状を確認することは出来ない。
それでも、亡き恩人との会話を思い出したカミルは、彼が守っていた森がこうもあっさりと焼き払われたことに悔しさを滲ませる。
(魔物を屠るためには仕方のないことだと分かっている。それでも……!)
『しばらくの間、動物達がこの森に暮らせないな』と思いつつ、僅か苦い顔をしたカミルは、魔物がいなくなった場所を静かに睨みつける。
すると、遥か遠くから魔法を放つ音が聞えてきた。
「《ライトニング》!」
「《ストーンバースト》!」
「《ウィンドブラスト》!」
「《アイスジャベリン》!」
「《ウォーターウェーブ》!」
魔物達の絶叫とともに数多の魔法が放たれて森を明るく光景に、カミルは無意識のうちに作っていた拳を強く握る。
すると、カミルの隣で険しい顔をしたメストがおとしていた得物を拾う。
「カミル」
「何ですか?」
「今から俺、宮廷魔法師団の応援に行ってくる」
その言葉に、カミルは僅かに眉を顰める。
「あなた様、今休暇中なのですよね?」
「あぁ、そうだな」
「それなのに、宮廷魔法師団の応援に行くのですか?」
「そうだな」
「こう言っては何ですが、あなた様が行かなくても、宮廷魔法師の皆様がここら一帯の魔物を討伐するのでは?」
(だから、行ったところで無駄だと思いますが)
いつもより棘のある言葉で引き止めるカミルに、メストは小さく笑みを浮かべる。
「確かに、休暇中の俺が行ったところで、無駄足に終わるかもしれない。それでも……」
持っていた得物に力を込めたメストは、凛々しい顔で眼前を睨みつける。
「俺は、この国の騎士として己に課した使命を全うしたい」
「っ!?」
メストの言葉を聞いて、カミルは一瞬目を見開くと小さく溜息をついた。
(全く、あなたって人はどこまで真面目な人なのだろう)
ほんの少しだけ口角を上げたカミルは、足元に転がっていたレイピアを手に取る。
「でしたら、私も行きます」
「えっ? でも、さっきの魔物討伐で随分と疲れたんじゃ……」
「でもそれは、あなた様だって同じですよね?」
「それは、そうだが……」
「それに、私もバカではありませんから、足手纏いと分かった瞬間にステインを呼んで逃げますよ」
そう言って振り向いた瞬間、森の奥からステインが一直線に走ってきた。
「ハハッ、そうだったな。カミルには頼もしい相棒がいたんだった」
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