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第3章 木こりは距離を縮め、宮廷魔法師は陥れられる
第158話 《ファイヤーボール》
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再び背を向けて鬱蒼とした森の中へ入ろうとするカミルに、カトレアは慌てて声をかける。
「ちょっと! 待ちなさいって言っているでしょうが!!」
(魔法をろくに扱えない平民の分際で、宮廷魔法師……それも、『稀代の天才魔法師様』である私に尊大な態度を取るなんて!……って、違う! そうじゃなくて!)
怒りでカミルを引き留める理由を忘れかけたカトレアが、カミルから話を聞こうと再び引き留めようとしたその時、カトレアの耳に聞き覚えのある女性の囁き声が入ってくる。
『そうよ。身分を弁えない平民なんて、この国には不要よ』
「っ!?」
(どうして、彼女の声が聞えて……くっ! 急に意識が遠のいて……!?)
「どうした、カトレア嬢!」
突然、苦しそうに頭を押さえるカトレアに、メストが声をかけ、それを聞いたカミルが思わず立ち止まって振り返る。
すると、苦悶の表情をしていたカトレアが突然、動きを止める。
『だから、やっておしまい』
「…………」
(そうよ、この平民はこの国に要らない人間。だから、燃やしてしまおう)
その瞬間、カトレアが何者かに乗っ取られた。
「カトレア嬢! おい、カトレア嬢! 一体どうしたんだ!」
メストの呼びかけにも応じないカトレアは、ハイライトを失った目でカミルを捉えると、ゆっくりと手を伸ばして赤い魔法陣を展開する。
(この国に要らない人間は排除しないと。燃やして消さないと)
「っ!? カトレア嬢! 待て!」
「《ファイヤーボール》」
メストの制止を無視し、カトレアはカミルに向かって火球を放つ。
「っ!? カミル、逃げろ!!」
「……はっ!!」
メストがカミルの名前を呼んだ瞬間、何者かに乗っ取られていたカトレアが正気を取り戻すと、頭の中に平民に魔法を放った事実が入ってくる。
(私、今平民に向かって魔法を撃ったの? そんな、ただ話を聞こうと引き止めたはずだったのに!! 殺すつもりなんてさらさらなかったのに!!)
己のしでかしたことに恐怖を覚えたカトレアはカミルに向かって叫ぶ。
「お願い!! 避けて――!!」
だが、カトレアが放った巨大な火球はカミルの目と鼻の先に迫っていた。
(わ、私のせいで、あの平民が……!)
自分の放った魔法で平民が命を落とすことに、絶望して顔を歪ませたカトレアは思わず目を閉じようとした。
けれど、迫ってくる火球に一切動じないカミルは、鞘からレイピアを抜いて透明な魔力を纏わせると、目の前まで迫った火球を横一線に切った。
その瞬間、真っ赤に燃えていた火球が一瞬で消えた。
◇◇◇◇◇
「えっ?」
平民を殺さんと放たれた火球が突然消え、カトレアは思わず言葉を失う。
(一体、何が起こったの? 私、あの平民に魔法を放ったのよね? でも、あの平民に魔法が当たる直前、火球がどこかに消えた。それも、平民がレイピアに透明な魔力を纏わせた直後に)
「本当に、何が起こったの?」
目の前で起こったことに、全く理解が追いつかないカトレアは目の前にいる人物を凝視する。
すると、レイピアを鞘に収めたカミルがカトレアの方を見る。
「一体、何ですか? 用が無いのなら今度こそ帰りたいのですが」
「っ!?」
(どうして……どうして、無傷でそんなに平気な顔をしていられるの!? 一瞬で消えたとはいえ、魔法が直撃しようとしていたのよ!?)
信じられないような目を向けたカトレアであったが、無表情で小さく肩を竦めるカミルから冷たい目を向けられ、顔を引き攣らせると静かに頭を下げる。
「えっと、その……ごめんなさい」
状況を全く整理出来ず困惑しつつも、魔法を放ったことを謝罪するカトレア。
そんな彼女を見て、一瞬目を見張ったカミルは小さく溜息をつくと背を向ける。
「それなら、失礼させていただきますね。それと……」
ゆっくりと顔を上げたカトレアに、カミルは背中越しに言葉をかける。
「森で火属性魔法を使うのは、出来れば控えてください」
「ちょっと! 待ちなさいって言っているでしょうが!!」
(魔法をろくに扱えない平民の分際で、宮廷魔法師……それも、『稀代の天才魔法師様』である私に尊大な態度を取るなんて!……って、違う! そうじゃなくて!)
怒りでカミルを引き留める理由を忘れかけたカトレアが、カミルから話を聞こうと再び引き留めようとしたその時、カトレアの耳に聞き覚えのある女性の囁き声が入ってくる。
『そうよ。身分を弁えない平民なんて、この国には不要よ』
「っ!?」
(どうして、彼女の声が聞えて……くっ! 急に意識が遠のいて……!?)
「どうした、カトレア嬢!」
突然、苦しそうに頭を押さえるカトレアに、メストが声をかけ、それを聞いたカミルが思わず立ち止まって振り返る。
すると、苦悶の表情をしていたカトレアが突然、動きを止める。
『だから、やっておしまい』
「…………」
(そうよ、この平民はこの国に要らない人間。だから、燃やしてしまおう)
その瞬間、カトレアが何者かに乗っ取られた。
「カトレア嬢! おい、カトレア嬢! 一体どうしたんだ!」
メストの呼びかけにも応じないカトレアは、ハイライトを失った目でカミルを捉えると、ゆっくりと手を伸ばして赤い魔法陣を展開する。
(この国に要らない人間は排除しないと。燃やして消さないと)
「っ!? カトレア嬢! 待て!」
「《ファイヤーボール》」
メストの制止を無視し、カトレアはカミルに向かって火球を放つ。
「っ!? カミル、逃げろ!!」
「……はっ!!」
メストがカミルの名前を呼んだ瞬間、何者かに乗っ取られていたカトレアが正気を取り戻すと、頭の中に平民に魔法を放った事実が入ってくる。
(私、今平民に向かって魔法を撃ったの? そんな、ただ話を聞こうと引き止めたはずだったのに!! 殺すつもりなんてさらさらなかったのに!!)
己のしでかしたことに恐怖を覚えたカトレアはカミルに向かって叫ぶ。
「お願い!! 避けて――!!」
だが、カトレアが放った巨大な火球はカミルの目と鼻の先に迫っていた。
(わ、私のせいで、あの平民が……!)
自分の放った魔法で平民が命を落とすことに、絶望して顔を歪ませたカトレアは思わず目を閉じようとした。
けれど、迫ってくる火球に一切動じないカミルは、鞘からレイピアを抜いて透明な魔力を纏わせると、目の前まで迫った火球を横一線に切った。
その瞬間、真っ赤に燃えていた火球が一瞬で消えた。
◇◇◇◇◇
「えっ?」
平民を殺さんと放たれた火球が突然消え、カトレアは思わず言葉を失う。
(一体、何が起こったの? 私、あの平民に魔法を放ったのよね? でも、あの平民に魔法が当たる直前、火球がどこかに消えた。それも、平民がレイピアに透明な魔力を纏わせた直後に)
「本当に、何が起こったの?」
目の前で起こったことに、全く理解が追いつかないカトレアは目の前にいる人物を凝視する。
すると、レイピアを鞘に収めたカミルがカトレアの方を見る。
「一体、何ですか? 用が無いのなら今度こそ帰りたいのですが」
「っ!?」
(どうして……どうして、無傷でそんなに平気な顔をしていられるの!? 一瞬で消えたとはいえ、魔法が直撃しようとしていたのよ!?)
信じられないような目を向けたカトレアであったが、無表情で小さく肩を竦めるカミルから冷たい目を向けられ、顔を引き攣らせると静かに頭を下げる。
「えっと、その……ごめんなさい」
状況を全く整理出来ず困惑しつつも、魔法を放ったことを謝罪するカトレア。
そんな彼女を見て、一瞬目を見張ったカミルは小さく溜息をつくと背を向ける。
「それなら、失礼させていただきますね。それと……」
ゆっくりと顔を上げたカトレアに、カミルは背中越しに言葉をかける。
「森で火属性魔法を使うのは、出来れば控えてください」
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